祝!!金融恐慌!!第三部隊貧困の危機!?
「お前ら、至急俺の部屋に来い。今!すぐにだ!」
ミリーの部屋から聞こえるクソバナの声ではなく全部屋に付けられているスピーカーから聞こえるテッドの声で俺は飛び起きることになった。
「朝からなんだぁ?」
頭を搔きながら起き上がると着替えもせず歯磨きだけしてテッドの部屋に向かう。メンバーは既に集合しており、ベルト以外は全員パジャマだった。
「よし、集まったな。それでは第…第~まぁいいや第100回目、「第三部隊緊急会議」っはじめまーす。」
シリアスな顔をしているテッドを初めて見たのでこれから何が起こるのか身構える
「俺たちの資金がそこを尽きてしまった。」
うーむ、たしかに大問題ではあるが「今から世界が爆発します!」なんてのを予想していたため危うくずっこけるところだった。
「あ~そういや前にギルドから金取られたもんな。」
「そっそうなんだよぉ~いやぁ話が解るなぁショウ君は。…ハハハ。」
明らかに裏がある反応。それを見逃すほど人は良くない。俺がそれを指摘しようとする前にベルトが指摘した。
「違うよね?テッド君、本当のことを言いな?」
「うぐ!実はッ!街のソウイウお店で散財してっしまいましたぁあ!」
「バカヤロォオオオオオ!!」
男のロマンに理解がないわけではない。俺だってテッドの言うソウイウお店に行けばそれなりに金を使ってしまうだろう。がしかし全財産、しかも俺たちの軍資金まで全て使ってしまうなんてぇのはぶっ飛んだはなしだ。俺の叫び声が部屋いっぱいに響き渡るとミリーが口を開く。
「むぐぐ、最低ですテッドさん!これじゃあ私の今月買う予定だったアイスも可愛い服も買えないじゃないですか!」
「うぐ…ごめん、ごめんよミリー。男には引けない夜ってのが…」
「言い訳は聞きません!」
頬をぷくーっと膨らませプイッのそっぽを向くと、今度は俺の裾を掴みうるうるした瞳を向けてきた。
「こうなってはアレしかありません!ギルドに行って採集クエストをするのです!」
持っていたクマのぬいぐるみを放り投げ高々と宣言するとコロコロ表情を変えるテッドがヤジを飛ばす。
「採集クエストだぁ~?討伐クエストの方が金になるし一発で終わるじゃねぇか。」
「それじゃあダメです!だって絵面的に私の出番がないでしょう?それに採集クエストだってレアな物を取ってくればギルドのお姉さんだって報酬を弾んでくれるハズです!」
「今回は俺に非があるからな…お前に従うよ…。」
観念したかのように首を振り立ち上がる。
「よぉーしお前ら!ギルドに行くぞぉ!」
「あっごめん、僕は始末書をこなさないといけないから、ショウ君頼んだよ。」
「…そうかよ。」
ギルドに到着してドアを開けると冒険者がザワつき始める。受け付けには案の定俺らの天敵ルナリアが相変わらず氷のような視線を飛ばしてくる。
「はぁ、なんのご用ですかテッドさん。うちのギルドには壊して良い備品はひとつも残ってませんが。」
「ちっ違うってぇ、今日は大人しくしてるからぁ。」
よほど怖いのか二三歩引きながら喋る。マズいな、このままだと門前払いを喰らう可能性が出てくる。なんとか切り返さなくてはと思い一歩前へ出ようとすると、
「お姉さん、聞いてください!テッドさんがエッチなお店で私たちのお金をぜーんぶ使っちゃったんです!だからそんな可哀想な私たちにとびっきり美味しい…じゃなかった、報酬の弾む採集クエストをください!」
「事情はお察ししますが、規制は規制なので報酬の上乗せは出来ません。しかし難易度は高いですが報酬の多いクエストならあります。あなた方のレベルならそつなくこなせると思います。あとミリーさん、心の声が漏れてますよ。」
「はうっ!ごごごめんなさい!見逃してぇ!」
「ふふ、いいでしょう。こちらの薬草採集クエストをお渡しします。」
この人笑うことあるんだ…。笑ったルナリアは普段の数段美しく思わず見とれてしまった。
「やったぁ!ありがとうございます!それじゃ、いってきまーす!」
「ちゃっちゃか終わらせちまおうぜ。」
俺も二人の後を追おうと振り替えると「すみません。」と呼び止められる。
「何ですか?」
「新人のショウさん…でしたね。あの暴走機関車とおてんば魔法使いさんを連れての採集クエスト、頑張ってください。」
「あっありがとうございますぅ。」
肩を持たれてそういわれたので少しどぎまぎしつつギルドから出ていく。
外に出ると二人は採集するための準備を進めていた。
「いいですか皆さん。今回は私がリーダーですからね!ちゃんと指示にしたがってください!」
いつになくお姉さんぶってふんぞり返るミリーは悲しいことにとても幼く見えた。
「なぁ、この採集クエストでは何を採集すればいいんだ?」
「よく聞いてくれました!私たちは今から森の方に向かって『レインボー・ハイド』を取ってくるのです!」
なんだそのハッピーな名前の草は。俺がいかにもテンションが下がっている気配を感じ取ったのかミリーが少し慌てた様子で捕捉する。
「れっ『レインボー・ハイド』は周りの魔力や環境に合わせて姿を変えてしまう特性があるのですが、近くに強力な魔力を当てると普段の色に戻ってそれはそれはキレイな七色の輝きをみせるんですよ!そんじょそこらの魔法使いにはできない超高等ミッションなんです!」
「ふーん、んじゃ、いこうぜ。」
早々に切り上げスッタカ森にいこうとするとミリーが地団駄を踏んで講義した。
「なんですかそのうっすい反応は!もっと「ミリーちゃんすごい!」って褒めてよぉ!」
「ハイハイ、スゴイスゴイ。」
「もぉおおお!!」
さっきから自責の念にかられているのだろう、いつもうるさいテッドは採集道具やミリーの荷物持ちに徹して大人しくしてる。雑魚一人、魔法使い一人、暴走機関車一人の三人パーティーで俺たちは肩を並べて歩き始めた。
ギルドの町並みを抜け、未舗装の街道を進む。目指すは街の北側の門を越えた先にある通称『不帰の深緑』―ずーっと霧が立ち込めており空気には高い密度の魔力が含まれている…ってベルトが言ってた。俺が最初にこの世界へ降り立った場所だったこともあり思い出深いようなそうではないような不思議な感覚に襲われた。これだけは言えるが、お世辞にもピクニックには向かないだろう。
「これから私の魔力探知だけが頼りになります。皆さん、私から離れて迷子さんになっちゃダメですよ?」
「へへ、頼りにしてるぜ、リーダー。」
すっかり調子を取り戻したテッドが景気よく発言しミリーの頭を撫でる。最初こそ目を見開いていたがすぐに「にへへ」と顔をほころばせ満足そうにしている。こんな気の持ちようでいいのか?
「…不安だ。」
独り言でそう呟くとすぐ近くの木の枝が揺れて俺を励ましてくれた。(気のせい)
「むむむ!前方にモンスターの気配あり!」
「マジか!テッド、go!!」
「ワンワンワンワン!」
バカデカイ鞄を持ちながら素早い動作で霧の奥へと進んでいった。「ギャン!」、「ガウ!」っと犬の鳴き声のような声と鈍い打撃音がしばし響き渡る。不意に静かになるとテッドがニカッとした笑顔で帰ってきた。
「俺にかかればこんなもんよ!じゃんじゃんいこうぜ!」
戦闘面に関しては本当に頼りになるヤツだ。わりと穏やかにクエストをこなせそうだと息をつく。
テッドのおかげで道中のモンスターは軽々片付いて俺たちは森の奥深くまで潜っていく。足元はぬかるみ、空気は街の非にならないほど冷えきっている。さっきまで辺りは霧ばかりだったのだが急に霧が立ち退き視界が開け、辺り一面の草むらが広がる。
「…ん?ミリー、道間違えた?こっからずーっと草むらなんだが。」
疑問を問いかけるとミリーがこちらを向き目を輝かせる。
「ふっふっふ。違うんですよショウさん。先程も言いましたが『レインボー・ハイド』は擬態するのです!今に見ていてください。私の探知が正しければあの辺りにあります!」
そういって指を差したところはなんの変哲もない草むらだが魔法使いである彼女には違って見えるのだろう。
「いきますよぉ~。――答えなさい!虹の草!」
どこに隠し持っていたのか、魔道書らしき本を空中で開くとそう唱える。構えた右の手のひらが光を放ち予想地点である草むらに変化が起こる。
「言っとくけど、魔法使うのにあんな詠唱要らねぇからな。」
完全に入り込んでいるミリーを尻目に水を差すようにテッドが俺に囁きかける。
「そういってやるな、今楽しんでるだろ…まぁ正直あの詠唱は要らないだろうなって思ってたけどな。」
俺たちがひそひそ話をしている間もミリーの右手から淡い光の波紋が草むらに注がれる。直後、生き物のように光が当てられた地点だけがうごめいた。
「うぉ!?すげぇ!」
そこには七色に輝く花が集まってキレイな花びらを広げていた。それは霧が晴れたうすぐらい森の奥で、そこだけ虹が落ちてきたような幻想的な景色だった。
「どうですか?すごいでしょう!これが私の力です!」
パチンっと本を閉じてこちらに歩みよってきた。息が上がっておりかなりの興奮状態にあるのが解る。 ここで変に刺激すると厄介ごとに発展しかねないので優しく褒める。
「すげぇじゃねぇか。見直したぜ。」
「えへへ…それではお待ちかね!採集ターーイム!」
「よっしゃあキタァ!」
遊び心いっぱいのテッドは一目散に駆け出した。
油断してはいけない。ミリーがうまくいったら今度はテッドがポカをやらかすかもしれないし、ミリーがポカをやらかすかもしれない。一度深呼吸してことにあたる。
「…あヤベ。」
「オォイ!根っこから全部取らねぇと受け取ってくれねぇだろ!」
「スマン…。」
それみたことか、テッドが力任せに引っ張ったおかげで茎から千切れてしまった。
「ムー、ちょっとテッドさん!私がせっかく見つけたんですから、もっと慎重に採集してください!」
プリプリ怒ってはいるものの全然圧がない。しかしテッドは素直に言いつけ通り毎秒一ミリの速度で手を動かす。モタモタしていると今度は「遅いです!」と注意をくらう。可哀想だったので結果俺が採集することになった。
「すごいですよショウさん!根っこに傷ひとつついていません!」
「おっ俺はモンスターの相手をするって言う大事な仕事があるからな…持ちつ持たれつつだ…。」
とくに言われてもないのに言い訳するテッドに対してミリーは採集した『レインボー・ハイド』を持っていく係りに任命した。
「これで私のアイスも可愛い服も買えますね!オールオーケーです!」
「よぉし!こっからはこのテッド様が華麗にエスコートしてやるよ!」
少しでも汚名返上したいのか、テッドが荷物でパンパンになった鞄を背負いながらこれ見よがしに先頭を歩き始めた。引き締まった背中をみせられこんなに不安なことがあっていいのだろうか…。胸騒ぎする気持ちを無理矢理押さえつけテッドの後を二人して付いていく。暫く進むとテッドが低く構え、持っていたいつ使うのかも分からない斧を構えた。
「むむっ!おいショウ、ミリー、ここの茂みは何か怪しいぞ!」
「私の魔力探知にはなにも反応はありませんが…」
「いいや、俺の勘が言っている「ここは危ない!」ってなぁ!」
「勘かよぉおお!」
止めるべく走りだした時にはもう遅く、斧の柄の部分で思い切り茂みを突っついた。ボフッ!という汚い音を立てて黄色い煙が立ち込める。
「ヴゥォエ!んだこれクッセェ!」
「おいテッド!近づいてくんな!オエッ!クッセ
!」
「うわぁあ!?来ないでくださぁあい!」
そこには未知の花が自生していたようで、テッドの刺激のせいで激臭を放つ粉を吐いた。びっしりそれを受け止めたテッドもまたとんでもない悪臭を放っていた。これは耐えられん!逃げるように走り出した俺たち二人の後ろで霊のようなおどろおどろしい声を上げてテッドが付いてくる。
「おぉうい…待ってくれよぉ…。」
「ヒィイ!ショウさん、早く早く!」
「解ってるって!これでも全力なんだよぉ!テッドめ!要らんことばかりしやがってこのバカやろぉおおおお!!」
悲痛な俺の叫びが森のなかをいつまでも、いつまでもこだました。
限界チェイスを終えてなんとかギルドに帰ってきた俺たちだったが、テッドのあまりの悪臭に気絶する冒険者が現れた。ルナリアは採集した『レインボー・ハイド』を受け取ると困ったようにクエスト達成を宣言した。
「えぇっと、『レインボー・ハイド』。確かに受け取りました。報酬金300000ゴールドです。……では、他の冒険者に被害が出るのでお早めに帰ってください。」
「「「…ハイ。」」」
三人揃って弱々しく返事をすると報酬金を抱えてトボトボと拠点である警察署に帰った。
「お帰り。お疲れ様…ってすごい臭いだね。早くお風呂に入ってきなよ。」
「うぅ~テッドさんが要らないことをしたせいでこうなったんですぅ…わらし頑張ったのにぃいい!」
ミリーの泣き癖はどうにかして欲しいが今回ばかりは同情する。珍しくミリーの背中をさすって慰めてやるとミリーが顔面を俺の制服に擦り付けてくる。
「あんまりですよぉ~!」
「おいバカやめろ!制服に鼻水付けてくんな!慰めてやろうとしたらこれだ!ベルトヘルプ!」
「ごめん、君たちの臭いが移ると大変だから。お風呂に入ってからね。」
大してテッドと接触したわけでもないのに完全に臭いが移ってしまった俺たちは風呂にいこうとするが、テッドが口を開く。
「おいおいベルト、苦楽を共にするのが仲間だろ?なに一人だけフレッシュな状態でいようとしてるんだ?」
「えーっと、テッド君?何を考えてるだい?止めてくれよ…。」
「テメェも一緒の臭いになるんだよぉ!!」
「うっうわぁ!?ショウ君ヘルプ!」
形勢逆転、テッド、今日はお前の日だ。俺は最高にニヤついてこう言い放った。
「お風呂に入ってから…ね!」
「ごめんって!謝るから何とかしてよショウくーん!」
何とか財政難を解決した俺たちだが、これからテッドがまた散財しないように警備を強めようと密かに決意したのであった……。
~続く~
読者様の皆さん、ご一読ありがとうございます!
今回の話ではあまりスポットが当たらなかったミリーちゃんに重点を置いて進めてみたしたが、いかがだったでしょうか?ミリーの得意分野を思う存分生かせるように組み込んでみたので、ミリーらしさ全開のお話にできたのではないかと思います!感想などあれば気軽に教えてください!
ではまた来週~。




