祝!!地獄の公開処刑とルームツアー!?
死にたい。
合格証書授与式なんて名ばかりの公開処刑が第三部隊の管轄内であるロードリーという街のど真ん中で行われた。「録音音声を街で流す」という守らなくてもよい約束(?)を丁寧に守ったテッドはスピーカー付きの特製ステージを作り、そこで音声を流しながら表彰される。
かなり朝早くに式が始まり、誰も来ないんじゃないかという淡い期待は爆音で流される音声によりぞろぞろと住民が集まってくる光景を見て撃墜させられる。集まった住民は例の『チョメチョメ発言』を聞き爆笑している。「いいぞいいぞー!」理解のできる男性陣は大いに盛り上がり、女性陣からは「最低ね…」と大いに軽蔑されるハメになってしまった。これから明るい異世界ライフが始まると思ってたのに、最悪だ…。ギリギリと歯を食い縛りながらステージに上がると本日の主役と書かれたタスキをベルトが俺に掛けると耳元で囁く。
「テッド君は少しはしゃぎすぎる節がある。僕から後で注意しとくから、なんとか頑張ってくれ。」
今までの経験を鑑みて第三部隊唯一の良心ベルトはそう励ますと背中を押してくれた。
「えーっと、新任巡査ショウ君!この度第三部隊警察官試験に合格されたことをここに証します。あーこれ表彰状と制服ね~。」
テッドはなんともぶっきらぼうに表彰状と制服を渡すとマイクを握り無茶振りをしてくる。
「さて、ここでショウ君からお気持ち表明をしてもらいまーす!」
これはチャンスだ!ここでビシッと決めれば地の底まで落ちてしまった女性人気を回復させることができるだろう。失敗は許されないが確固たる自信を持った声で堂々と声を発した。
「正直なところ、最初は嫌々でした。しかし、皆さんの期待に応え必ずや…『女の子とチョメチョメ』したいと思っています!」
必ずや役に立って見せますと言おうとしたのに完璧なタイミングでテッドが音声を流してきた。再び爆笑の渦が巻き起こるとともに俺は怒りの渦を巻き起こした。
「ムキィイイー!!」
猿のように台をバンバン叩く。
「プクク、テッドさんサイコー!」
小声でそう呟くミリーを睨み付けるとビクッと身体を反らせて白々しく言い直す。
「あ~その辺にした方が良いと思います…」
まぁなんとなく理解してはいたがそれにより怒りを抑えられるなんてことは無かった。
「はぁ、まぁ皆、これからショウ君をよろしく頼むよ。」
呆れたような溜め息をついてベルトが締める。
助かった。女性人気は相変わらず終わったままだが逆に考えれば少なくともこれ以上下がらない訳だし、やりようはいくらでもある。
「んだよもう締めちまうのか?んじゃお前らまたな~!」
心底つまらなそうではあるが素直に頷くと住民を『お前ら』呼ばわりしてステージを下りる。
俺もベルトにアイコンタクトでお礼を伝えながらステージを後にしてなんとか合格証書授与式を終えた。
総評、クソ!
早くも実家のような安心感を感じるようになってしまった署に戻りオリエンテーションとして署内を案内されることになった。三階まであり各階に風呂トイレ別々に一つずつあるので鉢合わせすることはそうそうないだろう。人数が人数なので全員署で衣食住全て済ませることが可能で、俺は元々物置だった場所を部屋として使わせてもらえることになり、テッドの事だからてっきり「ダンボールの上で寝ろ!」等暴論を危惧したが最低限常識はあるみたいで大きめのベッドとクローゼット、後はお好みでカスタマイズできそうなスペースがちらほら見受けられた。
「ショウ君の部屋は後でじっくり楽しんでもらうとして、僕たちの部屋も紹介しようか。」
「じゃあハイハイ!私の部屋からがいいです!」
我先に手を上げるミリーの意見通りまず彼女の部屋紹介から始まる。入り口のドア前まで到着するとドアには「ミリーの部屋♡」と妙にキラキラする文字で書かれた掛け軸がドアノブに引っ掛けられていた。
「お待たせしました!こちらが私の部屋でーす!」
勢いよくドアを開けると中には何故かムキムキになった植物がイキイキと部屋の三割程を占領しておりその幹では何故か動くぬいぐるみが植物をブッ叩いてトレーニングをしていた。
「どうですか?可愛いですよね!魔法の練習をしてたらこんなになっちゃったんです!」
「あのなぁ、コレのお陰で割と騒音被害を受けてるんだが…」
さしものテッドもこの人の奇行に引きぎみな反応を見せる。署の相性でいえばテッドはベルトに勝ちベルトはミリーに勝って、ミリーはテッドに勝つように思える。じゃんけんのような構図を頭のなかで浮かべてるとカーテンを掛けられた棚が目にはいる。
「なぁ、これなんだ?」
「わぁああー!?それはダメですーー!!」
反応が面白かったのと少しのやり返しが半分半分で棚を開けると俺の新たなトラウマになるような物があった。棚には瓶がところ狭しと並べられ、瓶には「テッドさんの血液(採集済み)」、「テッドさんの骨(接合済み)」、「テッドさんの…」そこら辺まで見えた辺りであまりの恐怖にフラッとめまいを感じて後ろに倒れる。
「うぉほぉい!んだよこれ!こんなの俺知らねぇぞ!」
テッドが本気で焦った様子で問いただす。
「だってぇー!これで回復魔法の練習してみんなの役に立ちたかったんですもーん!」
目に涙を浮かべながら言い訳をするがテッドは未だサイコパスを見るような畏怖の念を込めた視線を送っている。魔法業界の常識はこうなのかもしれないがなにも知らない俺からすればマッドサイエンティスト以外の何者でもない。
「う、う~んミリーの部屋はこれくらいにして、次は僕の部屋に行こうか…。」
ひきつった笑顔を作りそう促すと、さっきまで言い合いを続けていた二人もお互いの顔を見合せるとスゴスゴ部屋のそとへ出ていく。
(もしかしてこの三人のなかでアイツが一番ヤバイんじゃないか?)
今一度評価を書き換える必要がありそうな予感を感じながらベルトの部屋へと足を進める。ベルトは副所長を務めているというのもあり黒っぽい木を素材に使っている割としっかりした造りのドアだ。いち早く空気を和ませるためいそいそとドアを開けルームツアーを始める。
「えーとこれが僕の部屋だよ、特に目立つものはないけどそれはそれで落ち着けると思うな。」
大量の紙が積み上げられたデスクの回りには本がぎっしり詰まった棚が四つ立ち並ぶ。
うんうん、こういうのでいいんだよこういうで。
「ベルトには事務仕事だったりを任せてるからな。ほんと誰かさんと違って役に立つなぁウンウン。」
「ああ!今私の事バカにしましたよね!」
「あーあー何にも聞こえねぇーー。」
お前らは小学生かよ…ベルトもこの二人のお世話を一人でずっと続けていたのだろう。
これから気をつかった方が良いのかもしれないな…
「まぁまぁ二人とも、喧嘩しない。ほら最後はテッド君の番だよ。」
今にも取っ組み合いを始めそうな二人を仲裁して次へと促す。このへんの扱いが慣れているんだなぁ。なんだが少し悲しくなり、ポロリと涙を流す。
「おおそうだった。よっしゃあ!俺に付いてこーい!」
「ちょっと待ってくださいよテッドさーん。」
なんだかんだで仲が良いみたいだな。ところで所長ともあれば豪勢な部屋になっている予想だがどんなもんだろうか。
「うぉお…イカちぃ…」
両開きの黒光りする重厚なドアがそこにあり、魔王でもいるのではないかというプレッシャーを放っている。
「へへっ、こいつが俺の…部屋だあーー!!」
バン!と大きな音をたてドアを押し開けるとやはり予想は的中し額縁に囲われたよく解らん賞状のようなものと一目で解るくらいフッカフカのソファーが所長室たる威厳を醸し出している。部屋の隅っこにはでかい部屋のサイズにものを言わせこれまたでかいテレビにゲーム機と思われるコントローラー付きの機械が接続されていた。
「おいテッド、仕事中サボってコイツで遊んでんじゃねぇんだろうな?」
「そんなわけねぇだろ!これも情報収集の一環だ!街の流行りを知らねぇと治安なんかとても守れっこないだろ?」
「そうかよ…」
所長室だから最高級の設備が整えられており、仕事場所として完璧だろうが、利用するヤツが利用するヤツなので「最高の仕事場所」ではなく「最高の遊び場」がそこにはあった。
「外に出て行く仕事以外は全部僕が担当してるからね、仕事がない時は休んでもらってるんだ。」
やけに綺麗なデスクの上にはベルトの部屋にあったような山積みの資料がなく、代わりに食べかけのお菓子が散乱しており、仕事をしている様子は微塵も感じられない。まぁたとえテッドが事務仕事なんてしたあかつきには世界が混沌に飲まれてしまうことだろう。
「テッドさんったらズルいですよ。私の部屋にもこんなフカフカなソファーがほしいです。」
「…悪いけどうちにそんな金はない。」
「しょんな~…」
肩を落としただでさえソファーに沈み込んだ身体をさらに沈める。
「ショウ君も皆みたいに好きに部屋をカスタマイズしてみるといい。さぁ今日はもう遅いから、皆部屋に戻って明日に備えよう。」
ベルトは先生のように手を叩き全員に指示を飛ばすとサッサと戻っていく。
「んじゃ、俺も戻って寝るとするよ。また明日。」
「おう!またな~。」
「おやすみなさ~い。」
自分のベッドの上で横になるとこれまでの疲労が波のように押し寄せそのまま俺を夢の世界へと誘う。これからさらに波乱万丈な毎日が始まるとも知らずに…
~続く~
まず、ここまで読んでくれた皆さんに最大限の感謝を、ありがとうございます!二人の世話に奔走するベルト君や遊び人のテッド君、ガチのサイコパス疑惑が浮上したミリーちゃん。第三部隊、かなり闇深い雰囲気を感じています。これからショウ君はこの三人とうまくやっていけるのでしょうか!
次回に期待です!




