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祝!!面接突破!!襲い掛かる魔の嘘発見器!?

「うっ、う~ん…あれ?」

 気が付けば俺は保健室?的な場所でベットに寝かされていた。おそらくあの戦いの後気を失ってしまっていたらしい。

「うわぁあん!よがっだぁあ!起ぎだああ!!」

 意識が戻った瞬間ミリーが俺にものすごい勢いで抱きついてきた。細身なクセに力が強く危うくもう一度気絶するところだった。涙と鼻水でグシャグシャになった顔をシーツに擦り付ける。ミリーの肩を持ち引っ剥がすと鼻水で見事な橋が架かった。

「グスッ、とりあえずお二人を呼んできますね。」

 ミリーは顔をぬぐいながら立ち上がると「起きましたよーー!」と大声をあげる。

 奥にある部屋の扉が開き見たことありすぎる二人が入ってきた。

「やーやー、無事目覚めてえがったえがった!」

 他人事のようにテッドはニヤニヤしながらそう言ってきた。俺の今までの努力を笑い飛ばされたような気がして何か言い返そうとしたが、ベルトが続いて喋りだす。

「知らないかもしれないけど、ショウ君が気を失っている間にミリーはずっと君に回復魔法を掛けくれていたんだよ。」

 そう言われれば身体の調子が良いなぁと肩を回し、俺はミリーに感謝する。

「そうだったのか。ありがとうミリー、助かった。」

 するとさっきまで泣いて床に水溜まりを作っていたミリーの顔が太陽のように輝き、

「えっへん!そうでしょうそうでしょう!そう、私は優秀な魔法使いですから!」

 どうやら彼女の感情はジェットコースターで出来ているみたいだ。得意気にそう語るミリーの姿を見て少し安らぐが、空気を読まないテッドがとんでもないことを言い出した。

「ほな、面接行こけ。」

「…は?」

 ムンズと俺の襟をつかみ無理矢理引きずって進んでいく。

「ちょちょちょちょっと待ってくれよ!回復魔法を掛けてくれたとはいえまだ治りきってねぇんだけど!休み欲しいんですけどぉ!」

 あり得ねぇだろ普通!気絶するくらいの傷を負ったその日の内に面接まで済ますなんて!いつにない必死さでそう抗議すると何を言ってんのぅ?という顔で俺に指を指す。

「なーに、何にも問題ない。面接は別に戦ったりしねぇよ。ほら、口動いてるだろ。わがまま言わねぇでさっさと行くぞオラ!」

 この世界に労働基準法なんてものは適用されないらしい。リードをひくように俺の襟を引っ張ると聞く耳を持たない様子で歩くスピードを落とすことは無かった。

 しばらくズルズルとテッドが俺を引きずる音だけが鳴り響き、通りすぎる他の受験生や職員には「可哀想に、死んじゃったのね。」と哀れむような声色でポロリと涙を流した。

(生きてるんですけど…)

 人としてなにか大切なものが音を立てて崩れるのを感じながら妙に重厚な雰囲気を醸し出すドアの前でテッドが止まり襟を離す。

「あだっ!」

「そしたら俺たち三人は面接の準備すっから、そっちも準備できたら入ってきてちょ。」

 後ろ手で扉を閉めながらこちらの反応を待たずに背を向ける。

「そんなに緊張しなくてもいいよ。」

「さっきの回復魔法のなかに『気合い』も入れといたからバッチリですよ!」

 俺の後ろを付いてきていた二人も思い思いの言葉を俺に掛けると部屋のなかに入っていった。

(準備って言ってもなぁ。特に直すとこもなさそうだぞ?)

 もう自分のなかでは準備万端だったので、一度扉の前で深呼吸をしてからノックをして入室する。

「失礼しまーす。」

 部屋のなかを見渡すと面接官用の椅子と机、受験生用の椅子がちんまりと置かれている。

 予想に反して室内は拍子抜けするほどシンプルだった。別に部屋の装飾に期待していたわけではないが反射的にそんなことを考えてしまう。

「ほいたら面接を始めてくぜい。今回担当するのは俺たち三人だけだと思うなよ?」

 いかにも質問して感を出す物言いをするので質問してやる。

「他に誰か居るのか?」

 テッドが「待ってました」とばかりに、どこからか取り出した鞄を机へ叩きつけた。ドスン、と重い音が響く。

「聞いて驚け!いかなる嘘も許さない、魔法の嘘発見器さんだ!」

 仰々しく現れたのは、あろうことかピンク色に発光する、ふざけた顔面付きのオモチャだった。

 なんだこの人を小馬鹿にするような顔面をしたヤツは。ついつい毒舌になってしまうが腐っても面接試験。愛想良く愛想良くを念頭に世渡り上手な俺はそんな負の感情を表面に出す気配を微塵も感じさせない。

「これはこれはとても独創的なデザインだな。」

 ー油断したー

 人、いや物を見た目で判断してはいけないとこの面接試験が終わったあと俺はその情報を遺伝子レベルで組み込んだ。

 心にもない褒め言葉を口にするとピンク色のそれはバネ仕掛けになってる首を思う存分伸ばし、ヘリウムガスを吸った悪魔のような不快な高音を奏で喋りだす。

「ピピピッ!嘘!嘘!ホントはワッチの事人を小馬鹿にするような顔面をしたヤツだって思ってるポ☆」

 背筋に氷水を流されたような感覚を覚える。

「ふぅーん、この嘘発見器君はこう言ってるけど?」

 笑いを堪えているのか、腕を組みつつ後ろを向くテッドの隣でいかにも楽しそうな表情でベルトが問い詰めてくる。

 マズい、そういうタイプか…なんとか弁明しなくてはッ!

「いやいや、それは少々語弊がありまして、確かに人を小馬鹿にするような顔だなぁーとは思ったけどこれは受験生をリラックスさせるための巧妙なデザインなんだなぁと感服したんだ!」

「ピピピッ!これも嘘!全然そんなこと思ってないポ☆」

 おっ終わりゅうー!変な汗がダラダラと首を伝う。脳みそをフル回転させ切り替えそうとする前にベルトが面接チックな質問をしてきた。

「フッフフフ、じゃあ本格的に始めようか。何故この仕事をしようと思ったのかな?」

「え?いやほとんど強制的にそうなっただけなんだけど…。」

「ピピピッ!嘘!嘘!ホントは最初こそ無理矢理やらされた感はあったけどよくよく考えれば警察官になれば自らの権力を振りかざして女の子とチョメチョメできそうだからって思ってるポ☆」

 いかなる隙も許さず的確に痛いところを突いてくるそのオモチャに僅かな殺意を覚え始めた頃、耐えかねたテッドが大声で笑いだす。

「ブッハー!おいおい聞いたかよぉ?とんでもねぇぜコイツー!アヒャヒャヒャヒャーー!!」

「ダメですよテッドさん……ッ!プクク、ショウ君頑張ってるんだから……ふ、ふふっ。……っんぐ!」

 口を手で押さえ、必死に笑いの波を飲み込もうとするが、指の隙間から「ふふっ」と鈴の鳴るような笑い声がこぼれ落ちてしまう。

 肩を震わせ耳まで真っ赤に染め上げる。彼女は必死に笑いを堪えてフォローしようとするが…笑ってる時点で同罪だ。 怒りが頂点に達してもうやけくそになる。

「ちっチクショー!もういい、こんなクソみてぇな試験まっぴらだ!俺は辞退する!おめぇらとも今回限りでお別れだ!!どーーもありがとうございました!!」

 最高に皮肉を込め膝をバァン!と叩き、弾かれたように身を起こす。あのハゲピンクにすこしでも復讐するため最後に、

「じゃあなクソハゲピンク!二度とその面見せんじゃねぇポ☆!」

 捨て台詞のように吐き捨てるとこれまでで最大の笑みを見せテッドが笑い転げる。

「イーーヒヒヒヒ!まさに負け犬の遠吠えってやつだ!あ!そうそう、帰り際皆に『僕はチョメチョメがしたかったんですぅ~』って伝えてから帰れよぉ?」

「○ねええええええええええ!!!!!?」

 中指が何本あっても足りないがいまできる最大限手足含め四本の中指をジャンプしながら立て、勢い任せに扉を閉めた。バタン、という爆発したんじゃないかというくらいの衝撃音が響き渡るが気にもしない。半べそをかきながら猛ダッシュした。

 もう知らん!あんなヤツら、二度と顔も見たくない!

「おーい、どこへ行くんだい?」

「ぎゃああ!?」

 曲がり角を抜けた瞬間目の前にベルトが立っていた。さっきまで間違いなく部屋のなかにいたのに何で!?急ブレーキをかけようとしたが慣性の法則には逆らえずもんどりを打って転びそうになった俺をこれまたあり得ない速度で回り込んできたテッドがガシッと受け止めた。

「おっと。合格者さん、どこ行くんだよ?」

「あれ?今…部屋に…え?合格!?」

 俺は目を見開いた。

 テッドは相変わらずニヤニヤしているが、その目はどこか満足げだ。ベルトも優しく微笑みながら、俺の肩をポンと叩いた。

「合格だよ、ショウ君。君の『正直さ』は十分に伝わったからね」

「正直!? 嘘発見器に全否定された直後に言うセリフかよ!」

「いやいや、そこが良いんだよぉ」

 テッドが俺の首に腕を回し、ぐいっと引き寄せる。

「あの『嘘発見器』はな、実は心理的負荷をかけるための魔法道具なんだ。内心思ってる欲望や悪態をあえて大袈裟に暴露して、受験生の『化けの皮』を剥ぐのが目的でな」

 ベルトが補足するように頷く。

「ほとんどの受験生は、あれに図星を突かれると、黙り込んだり、必死に言い訳をしたり、あるいは泣き出したりする。でも、君は違った。最後には自分を曝け出して、あんなに威勢よく僕たち(とピンクのヤツ)に啖呵を切った。……あそこまで清々しく怒り出す人、久々に見たよ。」

 褒められたのかそうじゃないのかギリギリのラインを突いてくるせいで反応できずに居ると後ろから「おめでとうございまーす!」とミリーが走ってきた。

「ま、そういうことだ。お前みたいな欲求に忠実で、かつ土壇場で開き直れる図太い奴は、警察官……特に俺たちの部下にはピッタリだ。おめでとう、ショウ巡査!」

 最悪だ。全然嬉しくねぇ。もっとまともな職場で働きたかった。天を仰ぎそう絶望していると、テッドが最低最悪な事を言ってきた。

「そうそう、さっきの面接の内容なんだけどな?録音してたから合格記念に町でこの録音したヤツを全面的に公開すっからな!」

「はぁあああああ!!?」

 俺の(ある意味)輝かしい警察官人生は、最悪の爆笑と最低の嘘発見器と共に幕を開けたのだった。




あっ、ども、後書きです。まず、ここまで読んでくださりありがとうございます!前回はシリアスが多めだったのでその反動で今回はギャグ全快で書いてしまいました。受験生の皆さん、はたまた就職する皆さん、安心してください。実際の面接はもっとマトモです。

皆さんは、もしあの嘘発見器ハゲピンクを突きつけられたら、どんな本音が漏れてしまいそうですか?(笑)感想や、ショウ君への同情のコメントなど、お待ちしております!

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