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【小話】ショウ君だって強いもん!

 視界に映るのは第三部隊警察署の保健室の真っ白い天井だ。俺はそこのベッドに寝かされパンパンに腫れ上がった顔にミリーが手をかざして回復魔法を掛けている。そんな俺を見てニヤニヤ笑っているのはテッドだ。

 皆まで言うな、ボコボコにされたんだよ。見事にな。ギルドの酔っぱらいどもに喧嘩を売ったら目の前が真っ暗になった。ただそれだけのことさ。

「この街は何かおかしい!」

「何がだよ?」

「テッドやベルトたちに負けるのはわかる。バケモンみたいな強さを直接見たからな?んでもパンピーにボコられるのはおかしいんだ!見ただろ?俺の実技試験での大立ち回りを!」

 そうとも、俺は実技試験でデスキートンなる大化け物に1人で立ち向かい勝利したんだ。

「ちくしょう!アイツら揃いも揃ってズルしてやがるッ!ルナリアさんに言い付けてやるからな!」

「あー…それなんだけど…」

 部屋の隅っこで優雅に足を組んでいたベルトが気まずそうに口を開いた。

「実は試験でショウくんが戦った個体なんだけど、試験用に作られた元の何100分の1にまで弱体化された子なんだ。テッドくんがとにかくメンバーが欲しいからって試験全体の難易度をグッと落としたことが原因だね。それにともなって筆記試験だってスライムでも解けるような内容になってるよ」

「は…はぁあああ!?じゃあなんだよ、俺はその超弱体化された個体に殺されかけたってのか!?」

「そういうことになるな。ちなみに面接が終わった後かっこつけたようにしゃれたこと言ったけど、そもそも受けた時点で合格したようなもんだ。ほとんど無駄足だったな、ガハハ!」

「なんだよ、それぇ…」

 全身の力が抜けた。血のにじむような努力の実態は超アマチャン試験だったという事実に打ちひしがれ、いつしか俺の目が1人でに水を生み出す魔法を使いだした。

「シ、ショウさん!悔しいかもしれませんが頑張ったのは素晴らしいことです!泣かないで前を向きましょう!」

「うぅ、グス…悔しくなんかないやい…!魔法の練習だ!」

 魔法で生成された水を拭い、ベッドから飛び起きた俺を、テッドたちは「あーあ、拗ねちゃった」という暖かい目で見送った。

 絶望的な状況だが、俺の脳細胞はここぞというところでフル回転する。

 弱体化されていたとは言え、1人で討伐したということは戦闘のセンスは間違いなくあるハズ。やっぱり街の連中がズルしてるという結論にいたった。

 まず最初に向かったのは、ギルドの受付。そこには今日も麗しいルナリアさんが佇(たたず)んでいた。

「ルナリアさぁあああん!聞いてくださいよぉお!うわぁあああん!!」

「ど、どうしたんですか?顔が腫れ上がっていますが…」

 俺はカウンターにすがりつき、大粒の涙を流して訴え出た。

「ギルドの酔っぱらいどもが、俺に卑劣な集団リンチを働いたんです!ヤツら、俺の与えたダメージをそのまま返すっていう新手のズルを使ってます!ギルドの風紀委員として、ヤツらに厳重注意、いや、冒険者のライセンスをぶっ壊してください!」

「え、ええと?私の耳にはショウさんが勝手に喧嘩を売って勝手にボコボコにされたと届いていますが…」

 困惑するルナリアさんをよそに、俺はパッと涙を拭い、フッと不敵な笑みを浮かべて髪をかき上げた。

「…まぁヤツらの手口は全て見切りましたけどネ。ルナリアさん、見ていてください。次は俺が、その小細工ごと叩き潰してやりますから!」

「はぁ、なんでもいいですが備品を壊さないでくださいね」

 こうして謎の自信を取り戻した俺は、その足で酒場へと突撃。

「おい、この前のズル野郎!第二ラウンドだぁ!」

 と叫び――。

 数分後。

 再び第三部隊警察署の保健室。真っ白い天井。

「ショウくん、おかえり。今度は自己新記録の早さだったね」

 足を組んだベルトが、もはや哀れみすら含んだ笑顔で出迎えてくれた。ミリーがため息を吐きながら、再び俺の顔に回復魔法の手をかざす。その横ではテッドが腹を抱えて爆笑していた。


「笑うんじゃねぇ!クソ、アイツらまた別のズルを使いやがった!」

「ぎぃやははは!言い訳はよせよぉショウ。テメェが弱かった、だろ?」

「うるさーーいっ!!今に見てろ…ッ!このショウ様が全員まとめてぶっ潰してやる!!」

 パンパンに腫れ上がった顔で、なおもギラギラと目を輝かせる俺を見て、ベルトはそっとテッドに耳打ちした。

「テッドくん、彼、ある意味では大物かもしれないね」

「おう。おめでたい頭の強さだけなら、間違いなくうちのトップエースだわ」



 ~完~

ご一読ありがとうございます!

今回はショウ君が自分の実力について真実を突きつけられる回となりました。これまでのショウ君の描写を見ていれば違和感を感じた方もいるかもしれませんね。その答え合わせとまでは言いませんが、そのようなものと考えていただければ幸いです。今後も回収しきれない要素を【小話】のような形で回収していければと思います。どうぞよろしくお願いします!

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