マキビト国のルルーセン・キビト
エルレム國 創世記序章 天祖開門
この世には初め何も無かった。
ただただ、混沌があるばかりであった。
ここに一つの光が生まれた。
名をエルレムという。
エルレムは、1人であった。
それに耐えきれず、混沌を右と左の手で引き裂いた。
右手の混沌は光を帯び天と成る
左手の混沌は闇を帯び海と成る
エルレムは腕を押し広げ、
天と海の間に世界を作り、そこに横たわった。やがて、身体に木が生えてそれが陸となる。
右目から人が生まれ集落が出来た。
左目から獣が生まれ集落が出来た。
鼻から川が生まれ、口は湖となった。
耳は洞窟となり住処となった。
首は橋となり、胸は火山となり天を支えた。
腰は海底となり、尻は渦となり海を支えた。
エルレムは世界を見守る。
エルレは天を駈け、風を起こす。
エルムは海を引き、波を起こす。
耳を傾け、心を灯せ
エルレムは世界を見守る。
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静かな闇夜に叫び声が轟く。
火が照らし出すのは逃げ惑うものの陰だ。
少数ではない、村が焼かれているのだ。
雑木林が日に照らされて、日中のように明るい。
恐怖、無念、苦渋、様々な感情が村を蒸し返す。
この世界では、珍しい光景では無い。
だからといって、慣れるものでも無い。
こんな状況はもう何百年続いていうのだろうか。
最早、正確な年月を語り継げない程、長くなった。
対立する運命は変えられないのだろうか。
この疑問を幾度自身に問いかけたかすら、数え切れない。
そして、その希望を壊しに、今宵も私は行くのだ。
雑木林から飛び出すと、
視界を熱気が覆い、反射的に目を細める。
村の広場に出たのだ。
無理やり最短で駆けつけたため、道なき道をきた。
辺りを見渡す。
噴水の前に人々が集められ、取り囲むように奴らが立っている。
怒りが心を支配するが、そのまま身を任す。
何故こんな酷い事ができるのか
一足で敵襲に肉薄し、切り捨てる。
返す手で背後に回り込む者も蹴散らし、
場を制圧する。
その場の敵を切り捨てるに、5分とかからなかった。
もはや共存の道は残っていないのだろうか。
静かになりゆく村から目を背け、
月を見上げる。
薄雲に覆われた掛けの無い満月は、
まだ遠く闇夜を覆っている。
程なくして、部下が駆けつけてきた。
「将軍!まもなく制圧出来そうです。敵の数は10人程でした。2人生かして捕縛していますが、どうしましょうか?」
「殺せ、生かしておくな。被害の状況は?」
「連れ去られる前でしたので、村人は軽い負傷で済んでいます。ただ、村の損害は大きく、暫くは住める状況にはないです。」
最悪の状況は、防ぐことができたようだ。
だが安堵したところで、また明日あるかも分からない。こんな状況では気休めにもならない。
また、故郷を傷つけられた憎悪が生まれたのだから。
私はこれからの行動を部下に指示し、剣を収めた。
それから村人を介抱して周り、話を聞いて周る。
ひと段落し、天を仰ぎ見れば紫に雲が染まり始めていた。
当たり前に天に日が昇る。
同じように安寧もいつかは訪れるのだろうか
いかんいかん。
また考えことに耽ってしまう。
日に照らされていく自身の姿を見おろす。
奴らとほとんど何も変わらない。
違うのは頭に耳があり、尻尾があることくらいだ。
いわゆる獣人と呼ばれるものだ。
奴らは私たちをそう呼ぶ。
奴らは自分たちを我々と比較してこう呼ぶ。
貴人と。
住める無い場で、笑ってしまう。
貴い、尊いか。
くだらぬ。
我々を卑下する事で自分たちの権利を覚えているのだろう。
まぁ身体能力は比べるべくもなく、
私たちが優れているというのに。
しかし、知識、知性というのだろうか。
奴らにはどう立ち向かおうが、普通の村人では敵わない。未知なる道具を用いてこちらを制圧してくる。身を守るには鍛えた戦士が必要なのだ。
戦術にも奴らは優れている。今回も直前にダミーの情報が流れたために、駆けつけるのが遅れてしまった。
私は同胞を守るため戦士に志願した。
命を懸けて守ると誓った。
女の私がここまで来れたのは、奇跡と呼ばれたこともあった。しかし、奇跡も続ければ続く程、実力とだったと分からせる事が出来る。今や同胞を守る戦士団を統率する将軍となった。
地位が欲しい訳ではないが、あれば意見が通りやすい。戦士団を統率するシステムと、各村との連絡網の確立は私が作ったものだ。
まぁ、発案は私ではないが、
その発案者についてだが、
あいつは本当に頭が良い。
貴人ではないかと疑ってしまう。
遠征帰りを口実に、持ち主が無くなってしまった書物などを土産を持って帰ってやれば、喜ぶだろうか。
亡くなった同胞も、
持ち物が将軍の役に立てば少しは浮かばれるだろうか。
少し気が楽になり、踵を返す。
まだまだ、私立ち止まれない。
そう、この対立に終止符を打つまでは。




