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転生してから考える世界構成学  作者: ユタセコ
36/39

5

やっとここまで来た

副団長が切りかかって来るのを躱し、

交差際で腹部を殴る。


身体強化プラス岩盤の硬度効果が乗っかり、

勢いで隊長まで一緒に吹き飛ばす。


すかさず、岩盤を操作し諸共地面に固定する。

束縛と同時に少しずつ圧力をかけて、

尋問していく。


「俺の部下を処刑出来るといつ勘違いした?」


圧力の苦しみから逃れるように、

様々試しているようだが、

俺の一部と化した岩盤はそんな不利な体勢で解けるものじゃない。


「ここにザックがいないようだが、

何処へ連れて行った?

まだ喋れない程じゃないだろう。」


話しかけながら2人を跨いで奥へ進む。

通路を挟むように拘留柵が並び、

突き当たりの一際大きな部屋の前で立ち止まる。


クエラだ。

意識はなく、衣服は破れ、凛とした面影は影を潜めている。


拷問を受け、疲弊しているのだろう。


俺についてや、隊の魔法技術のついて聞き出そうと試みた筈だ。

同じ國といえど、策略や欲望の渦に巻き込まれればこのようになるのだな。

分かってはいたが、吐き捨てる思いだ。


「答えないか?」


呟きながら魔力を込める。

悲鳴が背後から響きやがて、静かになる。


ああ、

この世界も現実なんだな。


こういった刹那の弱者が踏みにじられる現実が至るところで起きているにだろう。



この世界クソ喰らえだ



目的意識が明確に頭に降りて来る。

クエラを抱きかかえると、

岩盤に通路を作りながら、脱出する。


向かう先はこのまま教会の真下だ。

まずは、その獣人の秘宝を奪ってやる。


この街はその後、跡形もなく破壊してやる。




2人の姿は暗闇に吸い込まれ、

暫く経った後に岩壁が後を塞いだ。


異変に気付いて駆けつけた者達は、

岩壁に吸い込まれて息絶えた2人を見つけ、

息を呑むことしか出来なかった。

ーーーーーーーーーーーーーーー


「なあ、ヤージュ、

隠された秘宝の正体って知っているのか?」

ヤージュと呼ぶことに慣れたルルーセンは問いかける。


2人は幻惑魔術で身を隠しながら、

家々の屋根の上を跳躍しながら進んでいる。

姿は人形だ。


「知ってるよー。簡単に言うと、

エルレム神の右目の欠けらだよ。


ひと出ずる元の根源となりて、暗闇を導く光成す月ってエルレム國では伝承が有るんだけどね。」


「ちょっと待ってくれ、何故人どもの伝承にある物が我らの秘宝なのだ?!」


「何故って君、君達獣人の祖先は人がルーツじゃないか。元々、エルレム國は6支族が居たんだけど、その1つが國を抜け出てマキビトという国を創ったのさ。その際に持ち出したのが、その恵を齎す月を6つに分けた内の1つだよ。豊穣の月の欠けらとでも呼べるかな?」


「では、我らの創国の節に出て来る話というのは、」


「そうでーす。

その時に、抜け出す事を許さなかった残りの5支族に追いかけられたという史実に基づくお話だよ。

5支族は其々職業や役割を分担していたし、豊穣の月は國の維持に根源に関わる大事件だからね。」


ヤージュが立ち止まり、

空の先のエルレムの首都を指差す。


「今でも君達の役目である職能の娯楽や、國民の精神充実を司る習慣は抜け落ちていて、教会というシステムがなければ立ち行かない國のままさ。


首都なんて見た目だけの活気がない墓場になっているんだ。」



エルレム國の歴史が生んだ歪みが、

世界の秩序を揺るがしていることに、

まだ世界は気づけてはいない。

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