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「あーあ、まだまだ君はだめだめの君でぐずぐずの君のままだと思ったんだけど」
ヤージュはくるりと差を向けて伸びをしながら、語り掛ける。
「やるじゃん!」
ニカッと歯を光らせ、かつての星空の下での笑顔がフラッシュバックする。
ああ、この笑顔だ。
俺の出発点であり、導くもの。
「それより、10年以上経ってるじゃねえか。何してたんだよ?」
「いや〜、近場で転生するものだからさ。まさか川挟んで敵対同士になると思わないでしょ〜。
初めは色々派手にやって君が気付いてくれると思ったんだけど、一向に見つからないからさ。君、もう消滅してるかもってね?」
かつてヤージュがド派手に活躍した暁の邂逅と呼ばれる戦いは、人間側では最近の一番の恐怖の語り草だ。
寧ろ、戦場が俺の転生先になっていたら、それこそ早々にリタイアしていたかもしれない。
あの時はまだ、だめだめな俺だったからな。
「しかし、これからどうする。俺とお前は立場は敵同士。お前にも俺にも仲間がいるだろう。」
そうなのだ。
出会ったは良いが、世界の終末に向け俺は俺なりに計画してきた。
まずは獣人の殲滅し、情勢を人間世界中心とした時に政治のど真ん中にいればそれなりの終末の形が見えると考えていた。
「ふふふ、お優しいですな。でも、僕の仲間は君以外はお飾りみたいなものですので、ご心配なく。
でもね?君が考えているよりも世界は奥が深いよ。もっと根本まで掘り下げる方法を取らないとね。表面を削りとってならした程度じゃ終末は来ないよ。」
「どういう事だ?」
くすくす笑うヤージュに、尋ねる。
「ただの殺戮や排除をしたってダメって事さ。真実を刈り取っても、真理は壊せないって事。」
ヤージュはおれの懐に入ると、目を細めて耳元で囁いた。
「授業で習いましたよね?」
どきーーーーっってするのが、
自身でもよく分かった。
やばい授業で聞いてないし、顔近いし、息かかったし、
慌てて後ずさりして言い訳をする。
が、自分でも何を言っているか分からないような言葉を並び立てる。
幾分時が経ったのもあるだろうが、
周囲により刻明に出来た氷解の丘の上から声がかかる。
「どういう事だ、ルカ?!!
説明しろ!」
怒号に乗せた困惑を投げかけるのは、狼の獣人だ。
奴にとったら、仲間が姿を変え、敵と談笑を始めた見てとれるのだから当たり前だ。
さてどうしたものか。
俺が身構えるのを尻目に場に似合わない声が木霊する。
「あっ!
ルー君こっちこっち」
まさかの笑顔で手を振り、手招きする。
異常事態だ。
ルー君も絶句してるじゃないか。
ちなみに俺も絶句してるぞ。
こういう場合は逃げるに限るが、
手柄を挙げるべきかと思うが、さっきまでのヤージュとのやり取りでどうやら単純な話でもないようだ。
ヤージュがこちらの味方な以上、
逃げる必要はないが、何か気不味い。
奴にとって人間は天敵じゃないか。
「ふざけるな!
お前は何者だ?!人間だったのか!
われわれヲダマシテイタノカ!!!」
みるみるうちに背が盛り上がり、
人型から銀狼に変化していく。
獣の瞳から理性が急速に失われていく。
「わーお、怒っちゃったよ」
おい、お前はもう喋るな
銀狼は激しく咆哮し、空気が軋むようだ。
裏切りへの怒りか、それとも積年の憎しみか。
「お座り!」
銀狼の躯体が痙攣する。
言葉によるものでなく、ヤージュが鳩尾に拳をねじり込んでいた。
冷や汗が湧き出る。
一瞬とはよく言うが、この俺が目で捕捉出来ぬ速さだ。
ヤージュの底が見えたと思ったが、まだ測りしれないようだ。
これが本領かなのか。まだ先があるのか。
「主ー!この子連れていくけど良いよね?
良い子だからー」
氷解の丘の上で軽々と巨狼を持ち上げる姿は、逆光で良く見えないが顔色ひとつ変えていないのは想像に容易かった。
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