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著ラボアジエ・ボーア 國暦485年出版
人と獣における相違点の研究 前書きより抜粋
獣人とは一体何者であろうか。
我々貴人は獣に優勢ではあるが、
昨今、半端と見なされてきた獣人との争いにおいて劣勢に置かれる状況を鑑み、獣の特性を明らかにする事で獣人の特性に迫る事を目的とす。
特筆して考慮すべき点として、
我らの特権である魔法技術が獣人においては使用可能という事である。神話にも記述されている通り獣には知性の根源がなく、只々その身体能力においてのみ長所を持つ。しかしながら獣人に於いてはこの法則が成り立たず、対戦経験者の杞憂で有ろうが、我々のそれを凌ぐという者が少数いる。
この研究がこの謎を爪開き、祖國に貢献するとことを願う。
ラボアジエ氏 没 28歳 國暦485年
教会異端審判にて処刑
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「ご期待に添えるよう頑張るよ、っと」
パウェルは飛び退き、態勢を整える。
こちらを見据えたままクエラ、ザックに小声で次の作戦を伝えている。
こちらも確認すべきことがある。
「ルー君、特攻君の気配は察知出来なかった?
それと碧眼ちゃんは君と同じ系統みたいだけど、
どう?」
低い唸りで答えが返ってくる。
「すまないが、奴の気配は察知出来なかった。
指示が無ければ倒れていたかもしれない。
奴は一瞬でその場から掻き消えたかのように思える程忽然と気配が消えた。」
余程悔しいのだろう。
鼻筋にシワが幾重にも刻まれる。
視界の悪い森林で狩りをする狼にとって、
これ程開けた場所で目標を失うのは本能的に誇りが傷つくのだろう。
「・・・碧眼は問題ではない。
当初の予定通り私は援護に徹しよう。」
ルルーセンも飛び退き距離を取り、元の姿になる。
魔術は獣の姿では行使出来ないためだ。
その顔は既に冷静を取り戻している。
「さてと。」
首を鳴らし、ぺろりと舌を出す。
その視線はある者を次の獲物として定める。
そこに自身が狩る側である絶対の自信がうかがえる。
ワシは狩りの直前でも後ろを振り返らない。
空の王者の品格である。
くるくると大鎌を回し、
複数の魔術に行使する魔素を励起待機させる。
ルルーセンも同様だ。
その範囲はコロロ川を全て飲み込む程になる。
「行くぞっ!」
それを知ってか知らずか、パウェルとクエラが号令と共に突っ込んできた。
クエラが片手を突き出しで魔術を発動させる。
辺りに霧が立ち込め視界が閉ざされていく。
無論、その中にルカも躊躇なく突っ込む。
パウェルとの接触するが、今度は小細工なく引き抜いた剣を突いてくる。
ひらりと躱し、返す手で大鎌を振り上げる。
こちらも躱され、2人とも霧の中に身体が隠れる。
ルカは羽搏き高さの利を得ようとするが、
一瞬の遅れで追従し、切り掛かってくる。
「空中で競り勝つつもり?」
火炎魔術を至近距離で穿つ。
パウェルは火球を切り裂き、残る手で魔術で応戦する。
その術式は直接ルカに響いてくる。
「これは、幻惑魔術かな?」
ふらりと落ちるように地面へ向かう。
手応えを感じたパウェルも地面へ。
ニヤりと笑うパウェルの顔は一瞬で驚愕に変わる。
降り立った地面が割れ、自由が奪われたのだ。
霧が同時に晴れ、周囲が露わになる。
周りは氷柱が無数に立ち上がり、
二人の周囲の地面はルカが立っている円1メートル程を残し、全て泥濘みの状態へ変わっている。
その中でパウェルが腰まで浸かっている状態だ。
これはルルーセンの干渉魔術である。
そして霧を払っとのもまたルルーセンだ。
そのルルーセンは一際高い氷柱の上におり、
その視線の先にクエラとザックがいるが、
氷牢に閉じ込められている。
クエラが抵抗魔術により瓦解を試みるが、
ルルーセンの修復の方が早い。
「くそっ!!」
クエラが叫ぶが、どうにも出来ないようだ。
ただ、氷牢で押し潰す事が出来ないという事は
やはりザックの防御壁は相当高度なのだろう。
ルカはその場でしゃがみ、パウェルを見下ろす。
膝に上で頰杖までしている。
「どうする?降参する?」
「参考に、降参したら許してくれるのか?」
ゆっくりと立ち上がるパウェル。
自身で泥濘みを直している。
パウェルを見上げながら、にっこりと笑うルカ。
「もちろん!!ただその前に、っと」
立ち上がりながら膝を払う。
「小細工なしでかかってきなよ。」
その一転して低い声に思わずパウェルの顔が引きつる。
彼には選択肢など無いのだから。
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