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「ああ、、
仕事行かなきゃ、」
呟いた俺に返す言葉はない
“当たり前か、1人だもんな”
グッと身体を伸ばし、仰向けになる。
腹を掻きながら、昨日の仕事内容を復習する。
確か、今日までに完成期日のカルテは2件有って、
朝10時までに一件を後工程に引き継げば何とかなる予定だったな。
2時間作業すれば、多少ミスは残るだろうがなんとか形になるか、、
もはや、業務開始が締切状態なのは疑問に思わない。
只そんなことより背中を徐々に這い上がってくる悪寒を抑えて呟く
心なしかベッドも硬い
“あれ、
今何時だ?
出社時間過ぎてるっっ?!”
がばっ、と起きて目を見開く、
が、
その動作は途中で無効化される。
顔を何かに思いっきりぶつけたのだ。
「ぬおっ!」
「痛っあい!」
俺ともう1人。
何者かが額を両手で押さえて、後退りする。
顔を覗き込んでいたのか?
顔を覆った指の隙間からそちらを確認する。
その肩から覗く白い翼に
一瞬にして記憶が呼びだされた。
“夢じゃなかったっ?!”
あの嘘のような出来事は、現実だったのか。
だとすれば、ここはどこだ?!
慌てて周りを見渡せば、
全く見たこともない場所にいる
一言で言い表すならばまるでアテナイの学堂だ。
美術館で見たサファエロ・サンティが描いた絵画を思い出す。
真っ白な西洋の石畳ような段差があり、
そこに寝そべっている。
視線の先には
幅10メートル程の巨大な壁が立っていて、
その根元に半円形のステージがある
少しずつ段差がついて、コンサートホールのようにベンチとして座れそうだ
ここはその最上段にあたる場所になる。
ふと見上げれば漆黒の空に星たちが鮮明に輝き、
広場を照らしている。
今まで見たどんな星空より美しく
その色鮮やかさに息を呑む。
星々の瞬きが鼓動として降り注ぎ、
生命を感じさせる。
「ここは、、、」
「やぁ、起きたね。ちゃんと存在してる?」
そうだった。
慌てて振り向いて見れば
少し拗ねたような顔をした天使が佇んでいた。
未だ額には片手を当て
もう一方の手で大袈裟に身振りをしながら訴えてくる。
「それにしても驚いたよ!いきなり意識をなくすなんてさ。折角良い神さま候補を拾ったのに!
消えちゃうかと思ったよ!」
えっ?
何だろう、この感覚は。
急にコミカルな世界に引きずり込まれたような感覚。
全く自分の話という身に覚えがない。
まだ夢の中なのかなという思いが込み上がる。
こちらが反応に困っているのには構わず、
天使は話を続ける。
「全く、君という存在は酷い奴だよ!
必然的にこっちに来る手続きしてみれば、
泡吹いてるんだもん。
もっとちゃんとしっかりシャキッとぎゅっとしてください!」
ち、近い…
「..........はい。」
じとーーーーーっと
顔を近づけて睨め付けられた。
顔と顔の距離が10センチだ
yesしか言えない
yes以外の言葉が出てこない
何故だ。
そして
何だ、この問答無用な子。
続けて良くわかんない台詞をマシンガンのように放ちながら、舞台役者のようにくるくる回り始めた天使を尻目に胸の動悸を必死に抑える。
何でもいいが
俺としては一つだけハッキリさせたい。
「分かった!
いや、よく分からん事が。
分かったから一つ聞かせてくれ!」
急に遮って叫んだからか
天使はきょとんとした。
そりゃもう、純粋な目で。
いやいや、
そんな純粋な目できょとんとすんなよ。
きょとんとしたいのはこっちだよ。
「俺は、死んだんじゃないのか?!!」
俺の言葉を受け止めた天使は空を一瞬仰いだあと、
とびっきりの笑顔で頷いた。
「もちろん!」
そうか、
やっぱり。
すっと気持ちが腹に落ちた。
床に視線が落ち、何とも言えない。
これは落胆なんだろうか。
いやいや、
自分の人生に未練があったのか?
「君はここから世界を創るんだよ」
不意にかけられた声にはっとした。
一筋の光の中で聞いた、体の芯を打つような声だ。
見上げた天使の表情から子供っぽさが抜け落ち、
微笑しながら手を差し伸べてくる。
淡く空間が華やぎ、
思わずその手に目が惹かれていく。
その手が顔に触れられると
瞳が奪われたまま身動いが出来ない。
別の手が差し伸べられ、
その指が額に近づき、人差し指が触れた。
「ばっ」
「ば?」
「バッキューン!」
いてててててっ!!
ええええええええええええええっ
天使は人差し指をピストンのようにして、
額に触れた瞬間、電流のように全身が痺れた。
顔はイタズラ好きな子供のそれだ。
「ハイ、これでアナタ、ケイヤク。
いっぱい働くがイイヨ。」
ケタケタ笑いながら、言い放つ。
なんか嵌められたんじゃないか、俺?!!
まるで飲み込め内容に、
痺れで再び目眩で周りが煌いた中、
鮮明に脳裏に焼きついたとびっきりの天使の笑顔
俺はまた仰倒れた。
仰向けになって視界に広がる世界
今見てる美しい星空よりも
何故か天使の笑顔の方が忘れないんだろうな、と。
憎めないその表情
自然とこみ上げた思いに、あまりに突拍子も無いなメッセージはそっちのけだった。
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「という事で、君には世界を創ってもらいます。」
ピンっと人差し指を立て、
逆の手は腰に当てた姿で
ぐいっと顔を近付けてくる彼女、もとい天使
あれから、
意識を取り戻した俺は促されるままに学堂の長い廊下を奥へ奥へと歩いている。
まだ廊下が途切れる様子はない。
どこかに案内するようだがどこだろう。
もしこれが転生モノだというのなら、
旅立ちの間みたいなファンタジーなお約束の展開が待っていると楽しみなんだが。
「だからね。君は神さま候補生ってことなの。
僕が選んだから、間違いないよ。絶対!」
「世界というのはね、
簡単にいえば、知的生命体の営みのある空間ね。
ただ、同じ空間でも複数の世界が重なっているケースが殆どかな」
「ここはそんな新米ほやほやの候補生を集めて、
神とはなんぞや、真意とはなんぞや、
世界の行く末は!
を深め合う由緒正しき場所なのだ!」
留まることを知らない選挙カーみたいに
天使は熱弁を振るっているが、
こちらとの温度差でありすぎて
いまいち内容が伝わってこない。
そんな話を俺なりに要約するとこういう事だった。
いわゆる、俺が生きてきた世界には神さまがいて、其奴がある目的を持って世界を創ったという。
その目的は今までにない世界を創るという大前提はあるものの、それプラス其奴の主観、趣向が入っているという。
ただ、そういう世界が複数あるわけだが、
大体は途中の目標に届かず自己崩壊したり、神が自らの手で終わらせる〝終末〟という事になる事が少なくないらしい。
そこで、継続的に世界を補充するために、各世界で精神的に練度が高い存在がスカウトされ、神様候補生として招集されるとのことだ。
お仕事とは神様のお仕事だった。
こんな転職スカウトありだろうか?
「なんで俺が選ばれたんだ?」
「君の世界は、局所的に神さまの素質がある人たちが多いんだよね。なんと10万人に1人もいる高確率だよ!君はその中の1人ね。苦行でも積んでるのかな?ただ、そういう存在は、死んでから消滅までの時間が短かすぎて中々スカウト出来ないんだよ?死を受け入れ早さ半端ない!物分かりが早すぎて抵抗しないんだよね。」
うーーん
言ってることは悲しいが分かる。
もう死を受け入れてる俺がいる。
「でも、俺の他にも候補性はいたんだろ?
俺である意味はあったのか?」
「面白いことを聞くね?
僕が見つけたのが君で、君が僕を選ばなければ候補生にはならないよ」
奥が深そうなお言葉だけれども、
よく分からない言い回しだな
意味はあったと思っていいんだよな?
「じゃあ俺は、君にスカウトされたってことか」
「そういうこと!君の自己を拾いあげたのは奇跡なんだよ。消滅まで5秒もかからない存在が僕に興味を持つことでプラス3秒耐えてギリギリセーフだったね!」
偉そうに胸を張り、えっへんと言葉を切った。
見た目は20歳位に見えるが、当てにはならないだろう。
その時キラリっと髪の中で光ったものを見つけた。
よく見ればショートカットの髪には複雑な刻印の入ったヘアバンドをしている。
「僕の名前はヤージュ。君の対の存在となり、君と神を作るものだよ。2対体は単体よりも安定しているから、今度消えそうになっても助けてあげるね!」
まあ、よく分からないが、
握手を求めて来た
「〇〇〇〇だ、宜しく」
差し伸べられた手に応えようとして
自己紹介したが、俺の名前が出てこない。
反射的に喉を抑える。
言葉を奪われてしまったような感覚だ
「あー、君はもう以前の君じゃないんだよ。自我は前の世界に置いてきたから。今は君は、前の君の自我を世界の外から認識する自己形成体だったものだよ。
簡単に言えば君の半分は僕で、僕の半分は君ってこと」
「なるほど、分からん!」
遂に声に出して言った
2対体ってなに?とか質問する前に新たな情報が出てくるし、
もはや混乱が混乱を呼ぶ展開に、叫び出しそうになる!俺は悪くない!
しかし、本当に不思議なことになっているな、
言葉を失うとは。
ここは本当に生きていた世界とは違うルールで出来ているのだろうか。
頭を抱えた俺の前に、いつのまにか扉が現れていた。
話に夢中になって気付くのが遅れてしまった。
「ふふふ、大丈夫!」
「何がだ」
呆然と3mはある扉を見上げている俺はそんなに不安そうだったか
「話を戻すと、世界構成学を学ぶ旅に出てもらうっ言ったけど、その前に基本編の座学があるから!」
同時に勢い良く開け放たれた扉の先には
懐かしき高校時代を彷彿とさせる黒板教室
椅子と机も並び、今すぐに授業が始められ状態だ。
「3日間みっちりやるからね!遅刻・居眠
・早退現金だよ!」
「厳禁なっ!」
ツッコミを反射で入れたが、なんじゃこりゃ。
意外過ぎる展開にまた、混乱しそうだ。
一体ここから先どうなるのだろう




