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「なんてことを言うんだ君は!」
ザック副長が声を上げた。
一瞬静まり変える部屋。
しかし、乾いた小さな笑い声により打ち破られる。
パウェル隊長のそれだ。
「まさか、将官をすっ飛ばして元帥の席まで行けるルートを準備したとは。恐れ入ったよ、クエラ副長。
いや、その考えは副長としてじゃなく王室としての意向か?」
身体の硬直するのを感じる。
思わず、隊長を睨みつけた。
どこまでこの男は知っているのだ。
私はパウェル隊長の補佐を開始し、命じられた役割は3つある。
1つ、回復魔法の素養のある者のスカウト及び全団員へ習得
2つ、団員への軍事指導と、軍事関連情報収集
3つ、隊長の元帥までの昇格計画の策定
これまで戦果が軍部の評価に直結する、つまりは評価せざるを得ない条件を満足する為、
私は意図的に作戦に進言をしてきた。
そして、私の出自についてだが、
確かに王室の側面を担う立場にある。
が、その全容を知る術が隊長にはないと断言できる。
根拠がないとしても、これまで王室の挙動がこの隊に都合が良い方向であるという疑問は持っているはずではある。
「王室の意向については判りかねますが、
この隊の軍での相対的評価や軍部の意向を鑑みれば、
準備を行わない理由が見つかりませんでした。
私の保身の為にもです」
まっすぐに隊長を見据える。
隊長もこちらから視線を外す事なく、
こちらを見据えてくる。
「まあ、いい。ザック副長、君の意見を聞こう」
「私は反対です。」
会話についてこれずにいた副長だが、
まだ現状を正しく理解出来ていないようだ。
立場上、倫理上の規範を超えねばならない事ではある。副長であれば決断すると見込んだが、
厳しいのであれば切り捨てなければなるまい。
「これまでの話はまだ推測の域を出ていません。
然るべき手順を踏み、裏を取らなければ我々こそ裏切り者です。いや、私に言わせれば、この会議で出たやり取りこそ軍への裏切りそのものです。」
「その代償が五千の命でもか。」
抑揚のない声で聞き返す。
「これは代償の大きさで判断すべきことではありません。手順の問題です。」
少し安堵した。
ザック副長はあくまでザック副長のようだ。
教会の倫理など既に乗り越えていたようだ。
私が認める人間は少ない。
根拠のない教会の教えから脱却して物事を捉えられる人間は貴重だ。
この隊の配属で幸福であったと言っても過言ではない。
ただ、それ故に自らの規範を持つ者同士は時に相容れない。
「両者の言い分は分かった。俺の判断を言おう。
君らを信頼しているからこそ判断を聞いた後は自己の判断での行動を許可する。準備しろ」
私はゆっくり帯刀を握る。
この台詞を聞くのは2度目だ。
今回の結末はどうなるかは分からない。
ただ、
私に賽が振られることはザック副長の死を意味する。
それ程、我々3人はお互いを信頼している。




