↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
支持率0%の男が、日本を作り直すまで  作者: 霜月 七日
第2章 日本を変える男

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/100

第34話 総理を辞めさせる一票

与党内で噴き出した総理大臣への不満。

政権を守るための取引が、永田町の裏側で始まる。

そんな中、黒崎玲司のもとに、思いがけない人物が現れた。

その人物が持ってきたのは、政権の命運を左右する提案だった。

2035年12月15日、午前8時20分。

東京都千代田区、国政自由党本部。

「総理には、退陣していただくべきです」

会議室に、鋭い声が響いた。

発言したのは、国政自由党の幹事長代理、東条正臣(とうじょうまさおみ)。

五十八歳。

当選八回。

党内最大派閥の実力者だった。

「内閣支持率は二十八パーセント。物価高への対応も遅れている。このままでは、次の選挙を戦えません」

向かいに座る党幹部が反論した。

「しかし、七月の総選挙では勝利しています。今、総理を交代させれば、政権の混乱を招きます」

東条は、机を軽く叩いた。

「混乱しているのは、今だ」

会議室が静かになった。

東条は続けた。

「国民は、政府の説明に納得していない。社会保障負担の問題も、税制改正も、すべて後手に回っている」

別の幹部が尋ねた。

「では、誰が次の総理を務めるのですか?」

東条は、少し笑った。

「……候補はいます」

その言葉に、室内の空気が変わった。

誰もが理解していた。

これは、単なる政策への不満ではない。

党の主導権を巡る戦いが、始まっていた。

* * *

同日、午前10時43分。

衆議院議員会館。

「……東条正臣?」

黒崎玲司(くろさきれいじ)は、小野寺航(おのでらわたる)を見た。

「はい。与党内で、相馬総理の退陣を求める動きを主導している人物です」

高瀬直樹(たかせなおき)が、ニュース画面を見た。

「この人、次の総理を狙ってるのか?」

小野寺は答えた。

「本人は明言していません。ただ、党内で影響力が大きいのは確かです」

黒崎は、資料を読んだ。

東条正臣。

財政規律を重視し、増税にも比較的前向き。

党内では、相馬総理と政策面で対立していた。

「……私たちとは、考え方が違いますね」

小野寺は、うなずいた。

「はい」

その時。

藤原真琴(ふじわらまこと)が、部屋に入ってきた。

「黒崎さん。面会の申し込みが来ています」

黒崎は、顔を上げた。

「どなたからですか?」

真琴は、少し間を置いた。

「……東条正臣議員です」

高瀬が、思わず声を上げた。

「えっ?」

黒崎は、黙った。

真琴は続けた。

「今日の夕方、非公開でお会いしたいとのことです」

黒崎は、少し考えた。

「……分かりました」

小野寺が、顔を上げた。

「会うんですか?」

黒崎は、うなずいた。

「はい。ただし、会談した事実は後で公表します」

高瀬が尋ねた。

「……何を話すつもりなんだ?」

黒崎は、静かに答えた。

「まずは、向こうの話を聞きます」

* * *

2035年12月15日、午後6時12分。

東京都千代田区、議員会館の応接室。

「黒崎先生。お会いできて光栄です」

東条正臣は、笑顔で手を差し出した。

黒崎は、握手を交わした。

「こちらこそ、ありがとうございます」

東条は、ソファに座った。

「最近のご活躍、拝見しています」

「ありがとうございます」

「七人の会派で、政府の税制改正に影響を与えた。大したものです」

黒崎は、静かに答えた。

「まだ、政策が実現したわけではありません」

東条は、少し笑った。

「慎重ですね」

そして、表情を変えた。

「……本題に入りましょう」

黒崎は、姿勢を正した。

東条は、まっすぐに言った。

「相馬総理には、退陣していただくべきだと考えています」

黒崎は、黙った。

東条は続けた。

「現在の政権では、国民の信頼を取り戻せません」

黒崎は、静かに尋ねた。

「……それを、私にお話しされる理由は何でしょうか?」

東条は、少し笑った。

「黒崎先生。あなたの会派は七人ですが、世論への影響力が大きい」

黒崎は、黙って聞いていた。

「もし、あなたが相馬政権への不信任を支持すれば、政権への圧力は一気に高まります」

黒崎は、顔を上げた。

「……内閣不信任決議案ですか?」

「ええ」

東条は、うなずいた。

「野党が提出すれば、我々も対応を考えます」

黒崎は、少し考えた。

「……与党の議員が、不信任案に賛成するということですか?」

東条は、静かに答えた。

「可能性はあります」

黒崎は、黙った。

内閣不信任決議。

衆議院で可決されれば、内閣は十日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければならない。

政権の命運を左右する、重大な決議だった。

東条は、身を乗り出した。

「黒崎先生。あなたも、今の政府には不満があるでしょう」

黒崎は、うなずいた。

「改善すべき点は、多いと思っています」

「ならば、協力しませんか?」

黒崎は、少し考えた。

「……一つ、質問してもよろしいでしょうか」

東条は、うなずいた。

「どうぞ」

黒崎は、まっすぐに尋ねた。

「相馬総理が退陣したら、国民の生活はどう変わるんですか?」

東条の表情が、わずかに変わった。

「……どういう意味ですか?」

黒崎は続けた。

「次の政権では、社会保障負担をどうするのか。所得税の減税案をどう扱うのか」

そして、静かに言った。

「そこを教えてください」

東条は、少し考えた。

「政策については、新しい体制で検討します」

黒崎は、うなずいた。

「……つまり、まだ決まっていないんですね」

東条は、黙った。

黒崎は続けた。

「それでは、現時点で協力を約束することはできません」

東条の笑顔が消えた。

「黒崎先生。政治には、決断が必要な時があります」

黒崎は、うなずいた。

「はい」

東条は、低い声で言った。

「機会を逃せば、何も変えられませんよ」

黒崎は、静かに答えた。

「……総理を替えることだけが、政治を変えることではないと思っています」

東条は、しばらく黒崎を見つめた。

そして、立ち上がった。

「……分かりました」

黒崎も、立ち上がった。

東条は、最後に言った。

「黒崎先生。あなたは、まだ政治の怖さを知らない」

黒崎は、黙った。

東条は続けた。

「正しいことを言うだけでは、国は動きません」

黒崎は、静かに答えた。

「……それでも、政策の中身を確認してから判断したいです」

東条は、少し笑った。

「……覚えておきましょう」

* * *

2035年12月16日、午後1時08分。

衆議院議員会館。

「……不信任案への協力を求められたんですか?」

水野彩香が、驚いた。

黒崎は、うなずいた。

「はい」

七人の会派による緊急会議。

黒崎は、東条との会談内容を説明した。

片岡誠司(かたおかせいじ)が、険しい表情になった。

「東条さんらしいやり方ですね」

黒崎は、顔を上げた。

「……ご存じなんですか?」

片岡は、うなずいた。

「与党にいた頃、何度か政策協議をしました。非常に力のある方です」

宮原奈緒(みやはらなお)が言った。

「でも、総理を辞めさせた後の政策が決まっていないなら、協力は難しいです」

森田悠介(もりたゆうすけ)も、うなずいた。

「政権交代や総理交代そのものが目的になってはいけません」

佐伯健太郎(さえきけんたろう)が、静かに言った。

「ただし、現政権への不信任をどう判断するかは、別の問題です」

黒崎は、うなずいた。

「はい」

佐伯は続けた。

「政策の実行能力や、国会への説明責任も含めて判断する必要があります」

橘拓真(たちばなたくま)が、腕を組んだ。

「……難しいですね」

黒崎は、少し笑った。

「本当に」

その時。

小野寺が、部屋に入ってきた。

「黒崎さん。新しい動きです」

黒崎は、顔を上げた。

「何でしょう?」

「野党第一党が、内閣不信任決議案の提出を検討していると発表しました」

会議室が静かになった。

片岡が、顔を上げた。

「……動きましたか」

小野寺は、うなずいた。

「はい。与党内の反相馬勢力とも、水面下で接触しているようです」

黒崎は、資料を見つめた。

総理を辞めさせるために、与党と野党が協力する。

その動きが、現実になり始めていた。

* * *

2035年12月18日、午前11時36分。

東京都千代田区、国会議事堂。

「黒崎先生」

廊下で声をかけられた。

振り返ると、久世隆臣(くぜたかおみ)財務副大臣が立っていた。

「久世副大臣」

黒崎は、頭を下げた。

久世は、静かに言った。

「東条先生と、お会いになったそうですね」

黒崎は、うなずいた。

「はい」

久世は、少し笑った。

「……相変わらず、話が早い」

黒崎は、苦笑した。

久世は続けた。

「黒崎先生。今、政権が不安定になれば、税制改正も予算編成も遅れる可能性があります」

黒崎は、うなずいた。

「承知しています」

「それでも、不信任案に賛成されますか?」

黒崎は、少し考えた。

「……まだ、決めていません」

久世は、静かにうなずいた。

「そうですか」

そして、続けた。

「総理は、あなた方との政策協議を続けたいと考えています」

黒崎は、顔を上げた。

「……ありがとうございます」

久世は、まっすぐに言った。

「ただし、政権が倒れれば、その約束もどうなるか分かりません」

黒崎は、黙った。

久世は、少し声を落とした。

「黒崎先生。政治には、守るべき順番があります」

黒崎は、静かに答えた。

「……はい」

そして、続けた。

「でも、国民の生活より、政権を守ることが先になってはいけないと思っています」

久世は、しばらく黒崎を見つめた。

そして、少し笑った。

「……本当に、厄介な方ですね」

黒崎も、少し笑った。

「よく言われます」

* * *

2035年12月19日、午後5時24分。

衆議院議員会館。

「……黒崎さん。ついに決まりました」

真琴が、ニュース画面を見せた。

『野党第一党、内閣不信任決議案を提出へ』

『与党内の造反議員数が焦点』

『相馬首相、解散も辞さない構え』

高瀬が、顔を上げた。

「……本当に不信任案が出るのか」

小野寺は、うなずいた。

「はい。来週、採決される見通しです」

黒崎は、画面を見つめた。

七人の会派。

衆議院全体から見れば、ごく小さな勢力だ。

しかし、今回の採決では、その七票も注目されていた。

真琴が尋ねた。

「……どうしますか?」

黒崎は、少し考えた。

「七人で、もう一度話しましょう」

小野寺が、うなずいた。

「分かりました」

黒崎は、静かに続けた。

「政権を倒すためではなく、今の政府に信任を与えられるかどうかで判断したいです」

その時。

美月から、メッセージが届いた。

『ニュース見ました。大変なことになっていますね』

黒崎は、画面を見た。

『うん。初めて、本当に重い一票を投じることになりそうだよ』

数秒後。

返信が届いた。

『黒崎さんが納得できる判断をしてください』

黒崎は、少し笑った。

『ありがとう』

そして、スマートフォンを置いた。

* * *

2035年12月22日、午前9時。

衆議院議員会館。

七人の議員が、会議室に集まった。

黒崎は、全員を見た。

「……今日、不信任案への対応を決めたいと思います」

水野が、うなずいた。

宮原も、資料を開いた。

片岡は、静かに腕を組んだ。

佐伯と森田、橘も、黒崎を見た。

黒崎は、少し考えた。

そして、はっきりと言った。

「まず、私の考えをお話しします」

会議室が静かになった。

「私は、相馬総理の政策には改善すべき点が多いと思っています」

黒崎は続けた。

「ただし、政府が税制改正の協議に応じ、追加支援の比較検討も進めていることは評価しています」

宮原が、うなずいた。

黒崎は、資料を閉じた。

「……だから、私は今回の不信任案には賛成しないつもりです」

会議室が、静まり返った。

片岡が、顔を上げた。

「……反対する、ということですか?」

黒崎は、うなずいた。

「はい」

そして、続けた。

「ただし、皆さんに同じ判断を求めるつもりはありません」

水野が、少し考えた。

「……分かりました」

黒崎は、静かに言った。

「七人それぞれが、自分の責任で判断しましょう」

その時。

小野寺が、会議室に駆け込んできた。

「黒崎さん!」

黒崎は、顔を上げた。

「どうしました?」

小野寺は、息を整えた。

「……与党の東条議員が、正式に党執行部への反旗を翻しました」

片岡が、立ち上がった。

「……何ですって?」

小野寺は、続けた。

「東条議員に近い与党議員が、内閣不信任案への賛成を検討していると表明しています」

会議室が、ざわついた。

黒崎は、静かに息を吐いた。

「……いよいよですね」

小野寺は、うなずいた。

「はい」

そして、最後に言った。

「……場合によっては、不信任案が可決される可能性があります」

黒崎は、窓の外を見た。

国会議事堂。

その中で、政権の命運を左右する採決が迫っていた。

七人の小さな会派。

一人ひとりの一票。

そして、揺らぎ始めた総理大臣の座。

黒崎は、静かに言った。

「……私たちも、覚悟を決めましょう」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今回は、与党内の権力争いが表面化し、黒崎たちも内閣不信任決議への対応を迫られました。

政権を倒すことと、国民の生活を良くすることは同じなのか。

次回は、内閣不信任決議案の採決を迎え、国会が大きく揺れ動きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。