表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋は最強の剣!!~すべては君に愛を伝えるために~  作者: 涙目


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/14

第八話 初めての評価

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 牙鼠討伐から数日。

 俺は相変わらずギルドへ通っていた。


 朝に依頼を受ける。

 依頼を終える。

 帰って剣を振る。

 身体強化を試す。

 ノートを書く。


 寝る。

 起きる。

 またやる。


 その繰り返しだった。


***


 ギルドへ入る。


 すると。


「おっ、坊主」


 知らない冒険者に声を掛けられた。


「はい?」


「また依頼か」


「そうです」


「元気だな」


 笑われた。

 別に馬鹿にされている感じではない。


 少し不思議だった。

 前は視線すら向けられなかった気がする。


***


 受付へ向かう。

 依頼票を手に取る。


 その時。


「また来たのか」


 後ろから声がした。

 ギルド長だった。


「はい」


「毎日いるな」


「街一番になるので」


 ギルド長は鼻で笑った。

 最近よく笑う。

 最初より話しやすくなった気がした。


「そうか」


 そして依頼票を見る。


「今日はそいつか」


「何か問題ありますか?」


「問題はねぇ」


 ギルド長は腕を組む。


「ただな」


「はい」


「お前、いつになったら諦めるんだ?」


 俺は少し考えた。

 何をだろう。


「街一番ですか?」


「そうだ」


「諦めません」


 即答だった。


 するとギルド長は肩を震わせた。

 笑っているらしい。


「だろうな」


***


 依頼は森の巡回だった。


 街道近くの安全確認。

 新人向けの仕事。


 魔物は少ない。

 危険も少ない。


 でも。

 退屈ではなかった。


 むしろ逆だった。


「うーん」


 歩きながら考える。


 身体強化について。

 最近ずっと気になっている。


 脚だけ強化。

 腕だけ強化。


 必要な時だけ使う。

 そこまでは上手くいっていた。


 でも。


「まだ無駄がある気がする」


 感覚だった。


 説明できない。

 でも何かが足りない。


***


 森の中。

 木の枝を見つける。


 拾う。

 振る。


「……」


 身体強化。

 腕。


 発動。

 止める。


 発動。

 止める。


 発動。

 止める。


 何度も繰り返す。


「難しいな」


 一瞬だけ流そうとしても。


 少し遅れる。

 少し早すぎる。


 思った場所へ魔力が行かない。

 理想通りにならない。


 だから。

 何度も試す。


 何度も。

 何度も。


***


 その帰りだった。


 茂みが揺れる。

 音。


「……」


 立ち止まる。

 講習会を思い出す。


『音を聞け』


『違和感を見逃すな』


 剣へ手を伸ばす。


 すると。

 飛び出してきた。


 野犬だった。

 しかも二匹。


「っ!」


 一匹ではない。

 予想外だった。


 飛び掛かってくる。


***


 身体強化。

 脚。


 一瞬。

 後ろへ下がる。


 回避。

 成功。


 すぐに二匹目。

 右側から来る。


 腕。

 一瞬だけ強化。

 剣を振る。


 浅い。

 足りない。


 野犬が吠える。

 再び飛び掛かる。


「くっ」


 まだ遅い。


 もっと速く。

 もっと正確に。


 そう思った瞬間だった。


 身体強化を流した。


 いつもより短く。

 もっと短く。


 本当に一瞬だけ。


「――っ!」


 剣が走る。

 野犬が吹き飛ぶ。


 自分でも驚いた。


「今のは……」


 強かった。

 明らかに。

 いつもより。


***


 戦闘はすぐ終わった。

 二匹討伐。

 怪我なし。


 初めてだった。


 実戦で。

 感覚ではなく。


 確かな成長を感じたのは。


「できるかもしれない」


 思わず呟く。


 街一番。


 まだ遠い。

 とても遠い。


 でも。

 昨日よりは近い。


 そんな気がした。


***


 ギルドへ戻る。

 報告を終える。


 すると。

 ギルド長が呼び止めた。


「坊主」


「はい」


「怪我しねぇな」


 妙な感想だった。


「はい」


「普通は新人ってのは一回くらい大怪我する」


「そうなんですか」


「ああ」


 ギルド長は俺を見る。

 少しだけ真面目な顔だった。


「ちゃんと話聞いてるからだろうな」


 少し意外だった。

 褒められた気がした。


 たぶん。

 初めてだった。


 冒険者になってから。

 ちゃんと評価されたのは。


「ありがとうございます」


 頭を下げる。

 するとギルド長は顔を逸らした。


「別に褒めてねぇ」


 そう言うけど。

 少しだけ嬉しそうだった。


***


 その夜。

 ノートを開く。


 今日の戦闘を書く。


『二匹同時』


『回避成功』


『身体強化をもっと短くしたら威力上昇』


『理由不明』


 最後の一文で止まる。

 理由が分からない。


 でも。

 分からないなら調べればいい。

 試せばいい。


 また失敗して。

 また考えればいい。


 それだけだ。


 俺はノートを閉じた。


 窓の外を見る。


 遠く。

 王都の方向。


 当然見えるはずはない。


 それでも。

 銀色の髪を思い出した。


「待っててください」


 小さく呟く。


 街一番になる。

 絶対に。


 そう決めた。

お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ