第三話 初依頼
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
冒険者登録をした翌日。
俺は再びギルドへ来ていた。
Eランク依頼の掲示板を見る。
紙がたくさん貼られている。
薬草採取。
荷物運搬。
野菜収穫。
害獣駆除。
「どれが強くなれるんだろう」
しばらく考える。
そして受付へ向かった。
***
「初依頼ならこれがおすすめよ」
受付嬢が差し出した依頼書。
『薬草採取』
街の外にある草原で薬草を採ってくる仕事だった。
「魔物は?」
「ほとんど出ないわ」
「戦えないんですか」
「まずは生きて帰る練習」
なるほど。
確かにその通りだ。
街一番になるなら生き残らなければいけない。
「受けます」
受付嬢は少しほっとした顔をした。
どうやらもっと危険な依頼を選ぶと思われていたらしい。
***
街を出る。
初めての依頼。
剣はまだ安物。
腰にぶら下げているだけだった。
「身体強化……」
昨日教わったばかりの技術。
試してみる。
魔力を身体へ流す。
すると。
「おお」
少し体が軽くなった。
走る。
速い。
いつもより速い。
「すごいな」
これなら強くなれるかもしれない。
嬉しくなる。
そのまま走る。
走る。
走る。
さらに走る。
***
十分後。
「あれ?」
足が止まった。
いや。
止まったんじゃない。
動かない。
「……」
地面へ倒れた。
息が苦しい。
体が重い。
起き上がれない。
何でだろう。
しばらく考える。
そして気付いた。
「魔力切れか」
昨日。
受付嬢が言っていた。
俺は魔力量が少ないと。
「なるほど」
少し理解した。
身体強化は便利だ。
でも。
使い続けられない。
今のままじゃ駄目だ。
***
結局。
しばらく休憩してから薬草採取を再開した。
依頼自体は簡単だった。
薬草を見つける。
摘む。
袋へ入れる。
終わり。
ただ。
帰り道もずっと考えていた。
「何で魔力切れしたんだろう」
当たり前だ。
使い続けたから。
なら。
使い続けなければいいのか?
「でも強化したいよな」
街道を歩きながら考える。
走る時だけ。
剣を振る時だけ。
避ける時だけ。
そういう使い方はできないだろうか。
「うーん」
分からない。
まだ分からない。
でも。
試してみる価値はある。
***
ギルドへ戻る。
依頼達成。
銅貨を受け取る。
人生初の報酬だった。
思ったより少ない。
でも。
少し嬉しかった。
「お疲れ様」
受付嬢が言う。
「ありがとうございます」
「どうだった?」
俺は少し考える。
薬草採取の感想。
依頼の感想。
いろいろあった。
でも一番大きかったのは。
「身体強化について考えてました」
「え?」
「もっと上手い使い方がある気がするので」
受付嬢が不思議そうな顔をする。
たぶん普通は薬草のことを考えるのだろう。
でも。
俺は違った。
「明日も依頼受けます」
街一番になるには。
まだまだ足りない。
やることがたくさんある。
自然と笑みが浮かんだ。
***
その夜。
布団の上。
天井を見ながら考える。
身体強化。
魔力。
剣。
そして。
リリアナ様。
「街一番か」
昨日より少しだけ分かった。
街一番は遠い。
本当に遠い。
でも。
不思議と無理だとは思わなかった。
だって。
やることは見えている。
なら後は一つずつやるだけだ。
目を閉じる。
明日はもっと上手く身体強化を使おう。
そう考えながら眠りについた。
お読み頂き、ありがとうございます。




