第十一話 初めてのパーティ
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
その日。
ギルドへ入った瞬間だった。
「いたぞ」
誰かが言った。
次の瞬間。
肩を掴まれる。
「見つけた」
「え?」
振り返る。
知らない男だった。
二十代くらい。
短髪。
剣士らしい体格。
見覚えはない。
「お前だろ」
「何がですか」
「レオ」
「はい」
「よし」
何がよしなのか分からなかった。
***
受付まで連れていかれる。
すると受付嬢が困った顔をした。
「ああ……」
知っているらしい。
「何ですか」
聞くと。
受付嬢が説明してくれた。
「パーティ依頼よ」
「パーティ依頼?」
「新人同士で受ける共同依頼」
なるほど。
初耳だった。
***
すると男が言う。
「本当は四人組だったんだ」
「はい」
「一人怪我した」
「はい」
「だから補充」
「なるほど」
理解した。
「俺ですか」
「お前」
指をさされる。
俺は少し考えた。
パーティ。
誰かと組む。
今までやったことはない。
でも。
街一番になるなら経験は必要だろう。
「分かりました」
受けることにした。
***
待ち合わせ場所。
三人いた。
剣士。
弓使い。
槍使い。
全員年上だった。
俺を見る。
沈黙。
「子供じゃねぇか」
第一声だった。
まあそうだろう。
十歳だし。
「レオです」
とりあえず挨拶する。
しかし。
反応は微妙だった。
「大丈夫か?」
「死なねぇ?」
「役に立つか?」
心配されているらしい。
少し申し訳ない。
***
依頼内容は簡単だった。
森の見回り。
最近増えている牙鼠の群れを探し、数を報告する。
討伐まではしない。
調査だけ。
新人向けらしい。
***
出発後。
俺はいつも通りノートを取り出した。
歩きながら書く。
地形。
植生。
魔物の痕跡。
気付いたこと。
全部。
「何やってんだお前」
弓使いが聞いてきた。
「記録です」
「記録?」
「忘れるので」
弓使いの表情が変わる。
何とも言えない顔だった。
「変な奴だな」
よく言われる。
***
しばらく進む。
牙鼠の足跡を見つけた。
そこで俺はしゃがみ込む。
「どうした」
「数が多いです」
剣士が足跡を見る。
「分かるのか?」
「たぶん」
講習会で聞いた。
足跡の重なり方。
大きさ。
間隔。
全部違う。
「前より増えてます」
そう言うと。
三人は少し驚いた顔をした。
***
さらに進む。
今度は地面を指差す。
「ここ通った方がいいと思います」
「なんでだ?」
「見晴らしが良いので」
「……」
「囲まれません」
講習会で聞いた話だった。
すると剣士は少し考えた後、頷いた。
「そのまま行くより良さそうだな」
進路変更。
結果。
牙鼠の群れを安全に発見できた。
***
依頼終了。
街へ戻る。
途中。
槍使いが聞いてきた。
「お前さ」
「はい」
「なんでそんな知ってるんだ」
「講習会です」
「は?」
「講習会で聞きました」
三人が黙る。
変なことを言っただろうか。
すると。
弓使いが吹き出した。
「お前」
「はい」
「ちゃんと聞いてたのか」
「当然です」
今度は全員笑った。
なぜか分からない。
***
ギルドへ戻る。
報告を終える。
依頼完了。
経験も積めた。
悪くなかった。
そう思っていると。
「レオ」
剣士が声を掛けてきた。
「はい」
「また組むか」
少し驚く。
「いいんですか?」
「むしろこっちが聞いてる」
剣士が笑った。
「お前意外と役立つし」
少し嬉しかった。
たぶん。
冒険者になって初めて。
実力を認められた気がした。
***
翌日。
ノートを開く。
新しいページ。
そこへ書く。
『パーティ』
『自分が見えていても他人は見えていない』
『他人が見えていても自分は見えていない』
『一人より情報が多い』
ペンが止まる。
少し考える。
そして書き足した。
『強くなる方法は戦うだけじゃない』
講習会。
ノート。
観察。
仲間。
全部強さになる。
少しだけ。
本当に少しだけ。
街一番への道が見えてきた気がした。
だから。
もう一行だけ書き足す。
『明日も頑張る』
それが今の俺にできる全部だった。
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