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EX6 sideラスカ

 これは過去に実際起きたことだ。

 ラスカの隣に立っているシシュは両足をしっかり地につけているが、崩れ落ちてしまってもおかしくないほど過去の映像は悲惨なものだった。

 こんなの、話せと言われたって話せるはずがない。

 もしもシシュがラスカに「最初に虐げてきたのは獣人のほうで、自分はわけもわからず封印されることになった」と言ったとしても、それを自分は素直にすべて信じることができただろうか。


 ラスカはシシュが災厄の魔女ではないかもしれないと疑いながら、その通りの答えをシシュから提示されても信じきるということはしなかったと断言できる。ではなぜ封印されていたのか、と。その問いに納得できる答えが返ってこなければ、表面上はシシュを信じると言いながらいつでも首を狙えるようにはしていただろうし、腕輪だって外すこともしなかった。

 シシュが沈黙を選び、真実を隠したうえで呪いを掛けた災厄の魔女として振る舞ったのは自衛として間違っていなかった。


 映像は続き、シシュの育ての親である獣人は呪いを浴びて死に向かいながらも娘への謝罪と愛情を口にする。

 そして命が終わる音を聞いて、自分の腕がどれだけ傷つこうと痛みに顔をしかめることさえなかったシシュが、静かに涙を流した。

 泣いていることに困惑している少女は、まだ感情を理解していない赤子のようで、その無垢さには寂しさを感じた。


「——ナタリア。悪く思わないでくださいね。あなたの魔法、めっちゃくちゃにしちゃいますから」


 言い切ったその姿に、悲しみに消えてしまいそうな少女の姿はもうない。

 こちらが手を差し伸べる必要もなく一人で立ち上がってしまえる強さに、ラスカはめまいがするほど惹かれた。

 しかしいまはその感情に酔っているときではない。


「さあ、脅威となる獣人はここにいるぞ」


 黒い霧はラスカに襲い掛かる。剣でいなしながら避け、ただひたすら時間を稼ぐことに集中した。

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