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将軍現わる

運営会社(株)ショコラ•オ•ノワゼット広報部

我々の裏面を知るものは炎上対策部などとも呼ばれている


私はトラブルが絶たないこの会社になくてはならない存在とでも言っておこうか


ジェネラル(将軍)と呼ばれている私こそが炎上対策部のリーダーである。


基本的にはメディアの情報操作で否定的な意見を封殺し、「なかったこと」にする簡単な仕事だが


あまりにも目立つ難癖(・・)をつけてきた人間に対しては

を持ち前の論破力を(もっ)て舌戦でネジ伏せることもしていたのだ


「ーーどんな意図で私に突っかかってきたのかは知らないが、これは立派な威力業務妨害だ。このまま続けても構わないが、私は君を『起訴』せねばならない。どうする?」


「・・・わかりました、先程のつぶやきは消させていただきます」


当然、起訴はこけおどしではない。

運営にはお抱えの弁護士がざっと数えて30人はいるため相手側がその気であれば

「被害者」という(てい)で彼を潰すつもりでいたのだが

戦う前に相手側から取り下げを行ってきた


そそくさと逃げるアンチに対し将軍は「つまらん奴め」と毒づき、携帯を取り出した


贔屓にしている告発系Yo!tuberたちのネタにはなるだろう

あいつらは敵に回せば厄介な反面、弱った相手しか狙わない

ならば最大限に利用するまでのことだ


◆◆◆

「お見事でございます」


ヘッドセットを外し、業務に戻ろうとすると

抑揚のない声が出迎えてきた。


先ほど戦った相手は、界隈では有名なアカウントだった

フォロワーも1万もいて、それなりに発信力があったから

君にはみせしめ(・・・・)となったろう


一つ一つアンチのアカウントを潰すよりも、有名なアカウントを起訴したほうが有象無象どもにプレッシャーを与えることができる



「黙ってろ人形ふぜい、プログラミングされたお世辞を言われても何もうれしくはない」


彼は魂を抜かれた肉体に粗末なAIで制御されている生ける(しかばね)〈イエスマン〉

余計な感情を持たない、言われたことだけを忠実に行う小間使い


元々はこの男も幹部候補の人間だったが

彼がゲームマスターを行なったシナリオでやらかし、こんな無様な姿となったのだ



タカナシカズナリ


つい数週間前にGBOを始めたばかりの一端の素人プレイヤーに過ぎない存在だったが

奴が所属していたクランマスターのワザンを倒したのを皮切りに


初心者の指標であったリンドがやられ

シラユリ家とのパイプを作るために婚約者として送り込んだルインを倒し、逆にシラユリ家を後ろ盾につけてしまった


あまつさえ今では運営側に不満を持つ人間が彼の元に集まっているといううわさも聞く


そもそもこの数年間は

訴訟や火消しに恐れ、アンチ行為を行う存在はいなかったのだが

あの男が現れたことで、今では芋づるのように次から次へと現れるようになったのだ



「厄介な存在だよカズナリ、お前さえいなければ」


◆◆◆


「なぜ貴様がここにいると言ってるんだ、カズナリぃ!!」


ギルドバウトオンラインの中の世界、オラカイト王国ギルド街


そこで二つの勢力が衝突していた

特殊なチートツールやレアアイテムの取引グループの元締めであったカイトの軍勢と

そしてカズナリ率いる反乱軍だ


運営派であり、この部隊のリーダーであるカイトは困惑していた。


先陣を切り指揮を執っていたはずのカズナリが

鉄壁の布陣と、虎の子であるレイドボスで守りをいつの間にか突破して

後衛の安全な場所で傍観していたカイトの目の前に現れ奇襲を仕掛けてきたのだから


カズナリが自身と対象を球状の閉鎖空間に閉じ込める

【シェルター】のスキルにより、護衛から孤立してしまったのだ



「くそっ、なぜスキルが発動しないんだ!チートかぁ!?」


チート使いにチート疑惑かけられるなんてな。


「俺のスキルの使い方が悪かったようでお上(運営)に怒りを買っちまってな

【シェルター】内では新たにスキルは発動できなくなったんだ」


作戦開始前のアップデート時に、俺のスキルは軒並み弱体化された

今展開しているシェルタースキルも併用が使えなくなったのもその改悪の一つだ


ナーフ(改悪)されたんならそれも利用するまでだ!

いくら火力がないとは言っても純粋な殴り合いなら負けないぜ!」



俺は感謝していた。

このアップデートすら感謝するほどに

何か一つでも欠けていたらこの結果には辿り着けなかったろうから


◆◆◆

時は出撃前のブリーフィングに遡る


「ぼ、僕がカズナリさんの影武者をやるですって!?」



新たな協力者であるルカは、俺の提案に戸惑っていた


「お前が復讐の為なら死んでもいいって言うから提案したんだが、辞めておくか?」


今回の作戦ーー


俺の影武者率いるクランの総戦力一万を

カイト率いるクランの拠点に強襲


奴が全体スキルを使用するタイミングで

あらかじめ別の場所で待機していた俺がカイトを襲撃する


言わば騙し討ちだ



「覚悟を見せろなんて言うからてっきり、カイトに自爆特攻しろって言われるのかと思ったから・・・」と、申し訳なさそうにモニター越しにルカが弁明する


急に影武者をやれって言われりゃ無理もないか

何故ルカが影武者に適任なのか説明することにした


「GBOのアカウントはプレイヤーの生態データに紐付けられてるから別のアカウントを作ることは不可能

かと言ってアバター(見た目)を変える時には運営に認可される必要もある」



「だから、この組織で唯一アカウントがない僕がカズナリさんそっくりのアバターでアカウントを作って先導をするんですね?」


なかなか理解力があって助かるな。


この作戦は、つい先日アキナになりすました運営の意趣返しの意味もある。この作戦はなんとしてもうまく行かせたい




「この作戦のためにもアキナ。合図を送ったら」


俺が全てを言う前に「レビテイトですね、任せてください!」と得意げに返した。

この短い間に彼女は積極的で強くなったと思う



「それと、代わりの指揮を店長にやっていただきたいのですがよろしいですか?」


そのお願いに対して店長は「任せて」とウインクした



ステータス欄を見られれば一発でバレるだろうが、幸い今回の戦いでは混戦になるのは確定。

とはいえ一々相手のステータスも見ていれないし、気づいた頃にはカイトは俺の策にかかっている算段だが


ルカが戦いにビビってバレてしまうかが心配だったが。

それは杞憂だったようだ


いきなりこんな戦場の最前線に放り込まれ、身じろぎもせず堂々と立ち、カイトを欺いたのだ


ルカ、お前はすごい奴だ。


安全圏でただ一人上から見下すカイトよりずっと立派だ!


それだけでお前は誇っていいんだぞ



◆◆◆


「戦況は反乱軍の圧倒的優勢、カイトがやられるのは時間の問題か」


メディアとの打ち合わせが終わり、私はカイトの戦いをモニター越しで見ていた。


寄せ集めの軍勢だと思っていたが、思っていた以上に粘っている


しかし、私がいる以上

反乱分子がデカいツラをしていられるのも長くはない



ピピピ



「なんだ、私のファンからか?」


『いつも楽しませていただいてます。荒らしに負けないで!』

『ゲームの進行の邪魔ばかりしてるカズナリをやっつけて!正義は勝つ』


ありがたいことに私向けのメッセージが日常的に送られている

私が情報操作と、言論統制によって捻じ曲げた事実により

正義は我々の元にある


なぜ、カイトの為にレイドボスを送り込んだか?

それは、彼に強力な手駒を送り込んだからではない


戦いとは戦術や戦力がモノを言うものではないことを教えてやらなければな


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