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カズナリぃ!


「【ミスリルレイン】の厄介なところはカイトのクラススキルで一斉射に仕掛けられることだ。被害が出る前に奴の懐に入って攻撃できれば一番なのだが・・・」

「コマンダーのスキルは所詮、一度に同タイミングの攻撃をしているにすぎない。行動後隙ができるからそこを叩けばいいだろ」

「バカ!あの攻撃が終わった頃には全員オダブツなんだよ!」



時は再びカイトとの決戦前に遡る

圧倒的戦力差の対策をクリアしたカズナリたちは新たな壁にぶち当たっていた


まず一つめに

直近の団員を飛行可能な有翼人で統一している〈天空騎士団〉に対し、クラスも種族もまばらな反乱軍では

それらの航空戦力に対して有力な対処法がなかったこと


そしてもう一つ、周囲に存在する全てに対して無作為に剣の雨を降らせるスキル【ミスリルレイン】の存在であった。


カズナリがこのゲームを始めてすぐのこと、ギルド総出でゴブリン退治をしに山に向かった時に

ゴブリンとの交戦中、カイトたちのチームが突如介入し、このスキルによって窮地に陥ったことがあったのだ


この威力はカズナリ自身が一番知っている。

奴との接触はこの一度きりだが、基本後ろから傍観(ぼうかん)し、おいしいとこだけかっさらって行くような輩であることは住所を特定するまでの間で十分理解している


おそらくこの戦いでも自分たちは基本戦わず、ダメ押しにミスリルレインを降らせて終わらせる戦法になるだろう



なにがしらの戦力をぶつけた上で横から

「私、【レビテイト(無重力化)】の魔法を使えます。スキルポイントを割り振れば最大三十人ほどなら浮かすことはできますが・・・」

「しかし、三十人浮かすと言ってもな。貴重なカンスト組をカイト側に回すわけには」


カイト直属の精鋭部隊でも百人単位で存在する。

数少ないカンスト組を引き抜いて運良く止められたとしても、戦力が大幅に下がってしまう


アキナの提案を聞いたカズナリは質問をした


「なぁ、レビテイトの効果で有翼人よりも上まで飛ばせることはできるか?」

「高さによりますけど、高くなるにつれて飛行維持時間と飛ばせる人数は減りますよ?」


アキナの答えを聞き、「そうか」と答えると

ウィンドウをもう一つ空に浮かべて、外部の回線に繋いだ。


ブゥン


「どうしたんですか?カズナリさん。」


繋いだのは現実世界にいるルカの携帯

新しくできた仲間である彼こそカズナリの考えた作戦に、欠かせない存在であった


「ルカ、早速だがお前にやってほしい仕事がある」


突然の質問に戸惑うルカだったが、すぐさまカズナリにはい、と返した


「お前、『姉さんの復讐のためには自分の命も惜しくない』って言ってたよな」


カズナリの一言に先程の喧騒が嘘のように静まり返る


「お前の覚悟を確かめさせてもらうぞ、ルカ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「カイトさん、上ー」

「なに!?」


超大型の魔物と尖兵たちとの対応に追われるカズナリ軍に対し、今まさにミスリルの雨を降らせようとするカイトたちの背後から

流星をまごう一つの影が雲を引き裂いた


「なに!?」


冷静に考えればたかが一人の戦力なのだが、思わぬ襲撃に攻撃を解除してしまった


「カズナリめ、伏兵を・・・!!」




バクン!!


「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

「うぁぁ、カイトさぁああああん!!」


謎の人物がカイトを巻き込んで黒い魔力の塊に閉じ込められた瞬間

戦場に歓声と慟哭(どうこく)が同時に上がった



「カイトを抑えたぞぉ!」

「やったぜカズナリさん、これでミスリルレインを封じたんだ!!!」


早くも勝利ムードを漂わす反乱軍に、カズナリが一喝する


「油断するな、個別からもミスリルレインはくるからな。それに、次はあの化け物だ」


地に落ちた魔力の球には目もくれず、カズナリたちは

チームの気を引き締めさせる。

一瞬できた隙で崩れた陣形を立て直すと、目の前のレイドボスを見上げた




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方でカイト軍はリーダーを失ったことで指揮系統は一気に崩壊した


というのも

強制的に3メートル内のモノを封じ込める効果と内外に漏れ出る衝撃を封じ込める【シェルター】

そこに高威力ではあるが広範囲のモノを無差別に巻き込むデメリットを持つ自爆スキル


黒蛇党の幹部クラスや上級魔族などにトドメを刺す時に重宝されているコンボ



そのコンボが自分のリーダーに決まったのだと思えば冷静にもいられないだろう


「あいつらはじめから特攻目的で正面からぶつかってくるつもりはなかったんだ」

「・・・!」

「クソっ、黙ってないで早く助けるんだよ」


彼らが危惧すべきは、カイトを巻き込んでシェルターに閉じこもった謎のプレイヤーがこの後どうするかだ



カイトの部下たちが主人を救うべくシェルターに向かい、足蹴にしている魔物に対して攻撃を仕掛けた


「やめろ、レイドボスを攻撃するな!」

「じゃあカイトさんを見殺しにするのかよ」


ボール遊びをするように獅子の魔物はシェルターを足蹴にし、カイトの兵隊たちが止めに入ろうとしては蹴散らされていった


「よぉくもカイトさんをー!!」


カズナリ目掛けて剣撃と有翼人の軍勢が押し寄せる


ボゴォ!


カズナリに向かい剣を振るうも巨大なカウンターの一撃で阻まれて、地面に転がっていく


「ぐ、おおおおおお!!」

「ちょっと、私らを忘れてもらっちゃ困るわよ」


大柄なリザードマン、店長を筆頭に反乱軍のエース達が迎撃するのだ


「カズナリさんには近寄らせません!」


さらにアキナら後方支援部隊による銃撃と魔法で応戦


いくら戦力差があったとはいえ、高度を下げた有翼人を各個撃破するのはあまりにも容易かった


カイトを救助しようとする者、反乱軍に果敢に挑もうとする者、綻びはだんだんと目に見えるほど大きくなっていく


ーーーーーーーーーーー

「ぐっ、クソッ・・・」


魔力の球の中に閉じ込められたカイトは、外側から蹴り付けられる衝撃で目を覚ました。

あの時、ミスリルレインのスキルをしかけたまではよかった。

だが、突如後ろから飛んできたナニカに気を取られ、それもろともシェルターのスキルに閉じ込められたのだ


「味な真似をしやがって・・・だが、詰めが甘かったみたいだな反乱軍」


自爆特攻を仕掛けたのだろうが、自分はまだ死んでいない。どうやら失敗したと考えてもいいだろう


「真正面から戦っても勝てないと分かって頭を使ったようだが、どうやらツキがこちらに向いていたようだな!」


この球体から脱出し、反撃といこうではないか

魔力の壁に向かいスキルを発動する



しかし


「なに!?発動しない」


手をかざしても何も起こらないことに気を取られ、カイトはバランスを崩し盛大に転んだ


ステータスを確認するが状態異常は受けていないし、スキルの使用回数も切れていない


そんな彼に「いくらやっても無駄だぜ」という声が後ろから聞こえた


後ろを見ると誰かがいることは確認できた。

同じ状況下にいるにもかかわらず、こちらは転ぶ気配を見せない


「やはり読み通りアップデートの内容は確認してなかったようだな」




「な、お前。なぜお前がここにいる」

「・・・」


カイトの目の前にいる謎の存在は黙したまま何も語らない


それでもカイトは

本来ここにはいないその名を呼ぶ



「もう一度言う!なぜお前がここにいるって言っているんだ!!」





 カズナリぃ!!



八綺衆カイトと反乱軍のリーダーがついに相まみえたのだ


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