戦い終わって
アキナを保護することに成功した俺達は
イベントホールを抜けた後警察にこれまで起こったことを話した
この事件がただの結婚詐欺師による誘拐事件ではないこと
一連の事件の裏側にゲーム運営会社(株)ショコラ•オ•ノワゼットが関わっていたこと
連中がイエスマンをけしかけ危うく殺されそうになったことなど
あまりにも現実離れした内容であったためおかしな奴だと疑われるんじゃないかと思っていたが
証拠もあってか、真面目に話を聞いてくれた
「今日はみんなお疲れ様。特にカズナリちゃんは災難だったわね」
日常に戻れた実感が欲しかったのだろう。気がつけば俺達はカフェの中にいた
労いの言葉と共に店長は棚からカップを出そうとした時、店長はよろめき、カップを落としてしまった。
「店長、ここはあたしがやるから」
普段、こういうミスはしない彼女であったが
つい先程複数人相手に大立ち回りをして三人ほど蹴散らしたばかりだ、疲れているのは無理もない
いや、店長だけではない、俺もサキちゃんもエルディナもここにいる誰もが疲弊していた
「とりあえずみんな一旦休んだ方がいい。とりあえず席に着こう」
冷蔵庫にあったジュースで互いの労を労うことにした
「エルディナ、お前もよく頑張ったな」
「いえ、私は言われたことをやっただけです」
エルディナにも労いの言葉をかける
元々他の機械を遠隔操作したり、メールボットみたいな仕事はできた彼女だが
今回ハッキングや逆探知まで出来ることまでは知らなかった
今回の件で彼女の正体が余計わからなくなったが、彼女がいなければルイを捕まえることはできなかったのも確かだ
「この時間帯はニュースばかりでやんなっちゃうわね」
店内のテレビではシラユリ令嬢が無事保護されたことが取り沙汰されていた。
正直、一瞬でもはやく事件のことから頭を離したかった俺としては別の話題が欲しかったがどのチャンネルを見ても同じニュースをやっていた
「どのチャンネルでもこの話題で持ち切り。私達が悪いことしたわけでもないのに嫌な気分になるわね」
チャンネルを回しつつ店長がぼやく
アキナが行方不明になっただけでも世間の話題の種になっていたのだから当然といえば当然か
それよりも俺はアキナのこれからが心配だった
保護されたとはいえそれで済むことではない。
マスコミたちも黙ってはいないだろうしこれからもっと大きな騒ぎになっていくだろうから
そのためにもアキナにできることはないだろうか
そんなことばかり頭に浮かんでは消えていった
「運営に対する批判も高まって課金用通貨の不買運動も始まったし、そこにトッププレイヤーの逮捕まからここの運営が潰れるのも時間の問題だよ」
沈みかえっているその場を盛り上げようとサキちゃんが携帯片手に興奮気味に言う
ルイの悪事でポヨロコを炎上させるにはさほどの時間もかからなかった
元々から女癖が悪いに人間で束縛が酷いと有名で、ゲーム内で付き合った女性に近付いてはヒモになり、相手の思考能力を奪い散々搾取したうえでポイと捨てるやり口が世間の怒りに火をつけたのだ
運営側の火消しもあり、ここまでこぎつけるまで大変だったが、サキちゃんの繋がりでGBO内だけでなく他運営のMMOプレイヤーからもプレイヤーや兼業のゲームマスターの悪事が語られるようになり今ではまとめサイトまで作られるようになっている
これだけ話題になっているのにも関わらず世間から興味を引きそうな仮面の男の話題や偽アキナの群れに対しなんの話題もないのは気になっていたが
「なぁ、サキちゃん」
「どしたのカズナリさん?」
友人に情報交換のためにメールをするサキちゃんに俺は問いかけた
「俺と出会う前まではこのゲームに対して敬遠していたんだろ?いくらエルディナのためとは言え悪い噂の絶えないゲームをよく始めたなって思ってさ」
GBO以外のVRMMOは一通りプレイしており明らかにこのゲームを避けてたきらいがある。
こう言っては悪いが彼女には何のメリットもないことだ、それなのにこんな馬鹿げた争いに巻き込ませたことに罪悪感もあった
そんな俺の問いにサキちゃんは手を止め答えた
「実はね、あたしの友達、元々GBOのユーザーだったんだ。」
「えっ?」
いつも笑顔の彼女がこんなにもの悲しい顔をしたのははじめてだった
「その時あたしはMMOとか興味なかったんだけど、それでもその子がゲームの話をしてる時はとても楽しそうだった」
始めるきっかけはそれぞれだとは思うが、最初からMMOに興味がある訳ではなかったのは意外だった
「でもある日運営のオフ会に参加してからなんか塞ぎがちになっちゃって、今では不登校
何があったか知りたかったし、仕返しもしたかった。でも、本当は怖くて他のMMOに参加してそこから噂話を聞いて
だから実際に自分の目で確認してみたいって思ってたんだ」
「サキちゃん・・・」
そうか、彼女はエルディナの情報を集める中で友達の不登校の理由を探していたのだ。
全てを知った時、それが自分のためになるとは限らない、もしかしたら知らなかった方がよかったとさえ思うことだってあるかもしれない
それでも彼女は覚悟を決めて向き合おうとしているんだ。
それでもあまり情報は集まってこない、あまりにも情報統制がしっかりしている
改めて考えるとなんていうかGBOは閉鎖的なゲームだ
ゲーム内も壁に囲まれている拠点で活動するのが殆どであったが、ゲームの外でもまるで外部に情報が漏れ出ないようにしているような気がする
「ゴメンなサキちゃん、変な話してー」
「ほら二人とも。そんな暗い顔しないで、GBOにいくわよ」
「え?」
思いふける俺に対し店長はコーヒーのおかわりを差し出してきた
サキちゃんも俺の方を見て嬉しそうに携帯を見せてきた
「みんながカズナリちゃんの謹慎解除祝いがしたいって」
以前敵対ギルドのマスターに啖呵を切った際、ギルド街の刑務所に収監されてから俺を英雄視するプレイヤーが増え始めた
それから外部を通し交流を続けた甲斐もありその輪はドンドン広まり続けた、
それをサキちゃんの代行で新しいコミュニティを作っていたのだ
「ちょっと待て、まだ釈放された話はしてないぞ?」
「ゴメン、あたしがしちゃった。」
それにしたってそんなにすぐ広がるものか。
前回の上申書といいあまり自覚なかったが意外と支持されているのか?
「せっかくだからみんなの前で手を振ってあげなよ」
まさかつい先日まで友人も少なくて数人規模のクランができただけで大騒ぎしていた人間の元に一万人弱の支持者が来るとは誰が思うだろうか
当時は無謀だと思っていた運営への反抗行為、協力者も付いたおかげでそれも現実的になってきた
「よし、行くか。手を振りにでも」
俺は早速、みんなの元な挨拶に行くことにしたのだ




