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俺達の知らない物語

「まさかアキナちゃんがこんなところにいるとは思わなかったわ」


畳ばりのアパートの一室、俺とアキナは二人は並んで赤面していた


わりと誤解を生みそうなところを二人に見られたからだ

ついでに言えばアキナは今回の集会には参加しないことになっていたから尚更だ


「何度も電話しても出てくれなかったんだもん。まさかアパートに入ったら二人でいい関係になってたなんて」

「カズナリちゃんも隅におけないわね、もうすでにそんな関係になってたなんて」

「も、もういいからその話はやめてくれ!」


そうだ、あの場でエルディナが出てきたら色々面倒だと思って携帯の電源を消していたのだ、それが災いしこんなことになるとは思ってもいなかったが

アキナはあれから赤面してずっとポカンとしている


「と、とにかく、前回の依頼で何があったか話してください」


「どうもね、《ジュラ自警団》は《黒蛇党》が悪事を起こすのを未然に防ごうとしていたみたいなのよ」


「悪事?」


「そ、あたしたちがギルドの抗争に介入した時、《黒蛇党》に隙を狙われて人攫いを許しちゃった」



「それって、今まで私たちは《自警団》と戦っていたんですよ!?」


「そうらしいわね、もしかしたら知らぬ間に《黒蛇党》の手伝いをしていたことになるわね。」


もっとも、これまでの依頼も同じことをやっていたならと店長は話を付け加えた


最悪だ


謎の魔物がどこからともなく街中で暴れたり、マッドサイエンティストが魔物を使った発明品で騒動を起こしたりしているというのに、事件を解決するどころか混乱に加担する形になってしまうとは


|(今までエルディナのいた『外の世界』のことに気を取られてたけど本来なら《ジュラ自警団》絡みのシナリオを追うべきだったのか?)


いや、そんなことはない、彼女はかけがえのない仲間だ。仲間のために優先することは何も悪いことではないはずだ

結果として記憶を辿るための成果は何もなかったが、彼女が不思議な力を使える存在ということはあの状況でなければわからなかったかもしれない。

俺は、電源を落としたままの携帯に目をやった


「落ち込むことはないわよ、ギルドに行けば以前の依頼の報告書も読めるわ。そうすれば当時の参加者もわかるわ」

「そうか、参加していたギルド員とコンタクトをとれば何が起こっていたかもわかる」

「そこら辺はあたしらに任せてよ。一応ギルドバウトの方でも人脈広げてるからさ。」


上級は運営の息のかかった人間としか付き合わないが、それ以下のプレイヤーはそうとも限らない。

コミュ力の結晶のような彼女に任せればよさそうだ


「ところでさ、アキナちゃんが来てるのは何か別件みたいな感じ?」

「えっ?」


それからアキナは事情を話した。


「成る程ね、私もカズナリちゃんと同意見よ。わざわざ無理して結婚することなんてないわ」

「そういうこと、今時、結婚ばかりが幸せじゃないって」


やはり二人の方が俺よりも相談できているな。



「二人の言う通りだ。無理して親の期待に応えることなんてしなくてもいいんだよ。」

親の期待がなんだ。親の言う通りに生きたところでむなしいだけだ


それからいつでも相談に乗ると店長は話してくれた。やはり持つべきものは友人といったところから


「ところでカズナリちゃんが不摂生をしてるんじゃないかと思って、料理は持ってきたけど、必要なかったかしら?」

「え?それってどうゆう?」


「だからさ、あたしらが出る幕じゃないってことよ。似合ってんよ、二人とも」


アキナの手料理を、たしかにそれはそれで嬉しいが

心なしかアキナの顔が紅潮(こうちょう)したのがわかった


「え、ちょちょっと。からかわないでくださいよぉ〜!」


なんだかんだでみんなとなら上手いことやっていけると思った


「ん?運営からだわ。何かしら」


店長は携帯を覗いた。サービスはじめから始めていた彼女(彼?)は運営のメルマガを登録している。

大抵は新しいがちゃやイベントの告知という他愛のない内容だ

しかし、今回ばかりは少し様子が違った


「どうしたんすか、店長?」


ちょっと覗いたサキちゃんも珍しく驚きを隠せていない。どうやらただごとではないようだ



 

「アキナちゃんも見て、ギルデロイが突然、声明を発表したのよ」


店長が映像のログを見せてくれた。これはギルドバウトオンラインの公式サイトの動画だ


動画再生すると、ギルデロイが会見をしていた。

全体で10分近くはある長い放送だ


「忙しいところ申し訳ない、私はギルド《アークライト》のギルデロイである。」


会見というにも関わらず相変わらず偉そうな態度を取る第三王子にのっけから嫌な印象を感じた


「随分、物々しい感じだが一体どうしたって?」


一旦動画を止めて店長が念をおす


「いい、ここから(・・・・)もっと衝撃的な内容になるから気をしっかり持つのよ」


しっかりってそこまで覚悟を決めないとダメなのかよ

しぶしぶ了承し続きを見る


「先日のグラディス公との会合にて『今後一切、|《黒蛇党》に対して一切の危害を加えない《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》』という協定を結んだことをここに発表する」


「な、なにを言っているんだ」


俺は思わず声を漏らした


「これもひとえに『一般人を戦いに巻き込みたくはない』という互いの見解によるもので、向こうから今後一切一般人を巻き込まないと言う申し出があり、代わりに黒蛇党の敵兵の一人、剣の一本も喪失させないという・・・」


つまりは黒蛇党は一般人ではなくギルド員及びそれ以外のものに手を出すようになるが、それらに対して危害を加えてはいけないと言う話だ


「この件に不満を覚える者もいるだろうが我々の敵は魔族であり、人間ではないと言うことであることを忘れないでくれ。」


「山を焼き払った人間が言うことか!!」

「落ち着いてカズナリさん」


店長が持ってきたタブレット端末を掴んで俺は怒鳴るが

それより強い力でタブレットをひったくられた


「ライブ中継じゃないんだから通じるわけないでしょ」

「た、たしかに。」


まったく我ながら何を考えてるんだろうか。今朝から調子が悪い


「さらに《黒蛇党》は魔物討伐に対して我々に全面的に協力してくれるという。」


ギルデロイはそう宣う。きっとこの男は生まれて一度も疑うことを知らないのだろう


「ついては魔族との交戦及び、回収したデータは逐一《黒蛇党》と共有することをここに表明する」

まぁいい。この男ははじめから当てにはしていない。

ともなれば、協定が結ばれる前に何らかの手を打つ必要がー


「協定は明日結ぶことが決まった。ギルドマスターであるグラディス公がこちらに来てくれることとなった。くれぐれも粗相はないように」


「「はぁあああああああ!?」」


俺たちは同時に叫んだ


あまりにも一方的であまりにも突然なタイミングで協定が俺達の知らぬところで進められていたのであった


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