ギム•リンギットの悪だくみ(前編)
人攫いから暗殺まで影で王国のほとんどの犯罪に加担している《黒蛇党》
そして非公式ながらに自治行為を行なっている謎多きギルド《ジュラ自警団》
最近ではそれら二つのギルドが動きを見せていた。
毎回後手後手で動く愚鈍な味方ギルドに見切りをつけ、俺たちのクラン〈ドンガメ亭〉は
ギルドの活動とは別に彼らの暗躍を暴くためにも独自にクラン員を依頼に送りつけていた。
今日はクラン員の報告会。もしかしたら《黒蛇党》と《ジュラ自警団》の動向がわかるかもしれないのだ
「しかし、空いた時間どうするかなぁ」
引き受けていたプログラムの依頼が予想よりも早く終わってしまった。
アキナはいろいろと忙しいようで今日の集会には来れないと言っていたし
学生のサキちゃんとカフェを経営してる店長はまだ自分たちの本業を全うしている最中だ
「12時か、まだ集合まで時間があるな」
集合は午後の五時半、場所は俺の家。もとより殺風景な部屋ではあるし
ゴミ出しと掃除は済んでいるので余裕を準備をするとしても1シナリオくらいなら回ることができるだろう
俺はヘッドセットをつけ、リラックスのできる体勢でゲームに入る準備をした
・・・
「皆さまをお呼びしましたのは他でもございません。これから起こる悲劇を止めに行って欲しいのです」
ギルドの作戦司令部にはいつもの受付嬢の姿はなく、その代わりに年端もいかない小さな女児が出迎えてくれた
「ちょっと待ってくれ、イレイナじゃないの・・・くぁ!?」
と、言い切る前に「馬鹿、言葉を慎めと」同行者に口を押さえられてしまった
彼女は〈夢見の巫女〉と言う世界でも少数しかいない能力を持った人物だ。
彼女の持つ予言の力によって何度も王国は窮地を免れたと言う
あいもかわらずこのゲーム特有の説明不足のおかげでイレイナがどうなったのかは不明だが、そんなこと知ったことかと言わんばかりに話を進めていった
「暗躍するギルドの影あり。今まさに国の平和を脅かす悪事が始まろうとしています」
|(ということは重要依頼か?)
今回の依頼書は『ギルドの暗躍の阻止』としか書かれておらず詳細は作戦会議室で話すとだけ書かれていた
もしかしたら《黒蛇党》、もしくは《ジュラ自警団》かもしれない。
まさかむこうから来るとは、願ってもいないことだ。
必ずや、連中から話を聞き出し、一連の事件との関与を聞き出してやる
「くそっ、ダマされた!!」
「誰も騙してねーよ、落ち着け」
落胆、とてつもないほどの落胆
ここの運営の性格を忘れていた
連中は大真面目になっている相手を嘲笑い散々いじり倒すことを至上の喜びとしている連中だ
今回問題を起こしているギルドは《生命の樹》と名乗っている、、俺が追っかけていたどちらのギルドでもないようだ
今回俺たちがやる『依頼』は、貴族街の一角で行われている豊胸用胸当ての回収である。
ただの下着と思うなかれ、なんとこの下着は付けるとバストサイズが大きくなる下着なのだ
しかしその下着には致命的な欠陥を持っていた
「いいか、あの下着には低級魔物であるスライムがベースになっている。肉体に適応すると本来の胸のように馴染んで・・・」
「結果的に胸は大きくなるけど、人格までスライムに乗っ取られるって言うんだろ!これこそ衛兵に任せればいいだろ!!」
予言の巫女に言われたことをおさらいされるもやっぱり納得はいかず、出撃手前でゴミ箱を蹴っ飛ばすが同業者達に取り押さえられた
正直、肩透かしがあってここまで荒れているのもあった、しかし怒っている理由はそれだけではない
「考えてみろ、これはチャンスでもあるんだぞ。合法的に女性の下着をタダで拝める、この国の平和も守れる。願ったり叶ったりじゃないか」
「その場合、俺達が平和を脅かすことになるんだよ!!」
これだよ。結局彼らが躍起になって戦ってる理由も下心でしかない。
改めて《アークライト》の活動をおさらいしてみよう。俺たちのギルドは極秘裏に他ギルドや魔物たちの侵攻を守る組織だ
このまま女性陣百人が下着を着用している場所に介入し、下着を剥ぎ取っていたらどうだろう。
俺達はただの変質者として、女性から顰蹙を買うことになってしまう。今回のライターもそれがねらいなのだろう
おまけに依頼はなんだかコメディー調に進んでいる。最悪な結果、百人は罪もなき女性たちがスライムに人格を乗っ取られるかもしれないってのに
俺以外に怒っていたいた人間もいたがそれは貧乳派である
「しかしな、コメディーなシナリオなんだからもっと肩の力抜けって」
「ふざけてたら一般人が酷い目に遭うんだよ!人格乗っ取られるなんて人が死ぬのと同じだろうが」
俺の必死の訴えが功を奏したのか、同行者はハッと我に帰った
「確かに、人死にに慣れすぎてなんか気にも留めてなかった」
「俺も衛兵に捕まるなんてゴメンだしな」
プレイヤーたちがコメディーの空気に取り込まれて人々の命を軽視し、あまつさえブラを剥ぎ取る変態集団として衛兵に追っかけられるかもしれなかった
俺たちがコメディーの主役として、笑われる側に立つことになると
「しかしどうするんだ、俺達が変質者扱いされないようにするにはスライムのことを証明しなきゃならない」
魔物もギルドも認知されていない王国内では俺たちのいうことなどまともに聞いてくることはないだろう。
尤も、信頼されるほどの知名度があればの話だが全く役になっていない秘匿組織としての要素が完全に裏目に出ている
人格を乗っ取られることを証明するには実例が必要だ。ともなれば誰かが犠牲になるしかない
誰をどうやってー
「そうか、みんな聞いてくれ!」
思いついた、最悪の結果を回避する妙案を
「俺にいい考えがある」
かくして依頼は開始した




