第二部 一章 不穏
「コンニチワ、」
ブォン!
「ぐえっ!」
「コンニチワ、オキャクサンナニニシマスカ」
王国内の市民街にて上半身に筋肉が寄っている4本腕のマッチョが暴れている
その時点で十分異質だがサソリのような尻尾、そして顔はヒヨコであった
4つある手にはそれぞれ鈍器や斧、剣が握られてる
おそらく彼(?)は「どれで殺して欲しい?」と言っているのか繰り返し同じ言葉を喋っているのだろう
同じ言葉を連呼しながら攻撃をしてくるのだ
しかも人が行き来するメインストリートということも災いし、このままでは大量の犠牲者が出る上
今まで魔物の存在を隠し通してきた王国としては魔物が一般人に知らしめる危険も孕んでいた
「くそっ、一般人の避難と記憶処理もしなければならないのに、こいつとも戦わなきゃいけないのかよ!」
「ちょっと!?衛兵は何してんの!?」
同業者やサキからの怒号が聞こえる
しかし、一般人に対する殺戮が行われているのも関わらず未だに衛兵たちが現れる見込みはない
冒険者六人のみで魔物から大量の目撃者から記憶を消しつつ魔物を倒すなんて無理な話なのだ
「わっ!」
「坊や!」
逃げ遅れた親子連れが今まさに魔物に襲われている
転んだ子供を抱えて攻撃を躱すなど器用な芸当ができるわけもなく、若い命が二つ消えようとしていた
「オキャクサンナニニシマスカ!」
「くそっ、間に合え!」
避難誘導を中断し、俺は襲われてている親子連れの前に躍り出た
ごわん!
ガン!
鈍い音が広場に鳴り響く
ギリギリだった。
魔物の一撃を盾でなんとか防ぐことに成功したのだ
俺の後ろで親子連れがひょこひょこと逃げていくのを感じた
「コンニチハ!!」
獲物を仕留め損ない頭に来たのか残りの三本の腕がこちらに向かって一斉に降りかかってくる
「この魔物は俺が引き受けるー」
ぐわん!!
二打目、盾が壊れかねない衝撃が体を突き抜けるー
奴の一撃一撃は重く、奴の振るった方に向かって盾は弾かれ俺の体勢が崩れていく
それでも魔物は容赦なく残りの二打をかましていく
「カズナリ!!」
「危ない、早く逃げてー!」
同行者たちの声が聞こえる。だが、仲間から距離ははなれており射撃ができる者もいない
なんとかこの場を自分の力のみで切り抜けるしかなかった
「ギリギリまで引きつけて・・・」
三撃め【パリィ】で攻撃を受け流す。対象を失い大振りしたが、幸い周りには俺以外の人間がいなかったので被害はない
しかし、魔物は空振りによって崩れた体勢を回転を加えることで無理矢理四打目につなげる
その隙、【スイッチヒッター】で盾を武器を切り替える
そして【反射】のスキルを発動させ、本来受けるはずだったダメージをそのまま魔物に与えることに成功した
「ナニッ!?」
昏倒する魔物。吹き飛びはしなかったが、これは大きな成果だ
「カズナリがやったぞ!一気に畳みかけろ!」
・・・
咄嗟に行ったスタンドプレーが功を奏し、思わぬ形でヒヨコ顔の魔物の討伐は成功した
一般人の退避を終え、記憶処理もできるだけのことはやった。
「すごい、カズナリさん!四連撃躱すなんて普通できたもんじゃないし!」
「これで大丈夫なんだよな?」
「もう息はしてない。カズナリ、お前、MVPものだぜ」
「よせ、これは本来の手筈じゃなかった。たまたまうまくいっただけさ」
サキちゃんや同行していた仲間から称賛されたが俺のやってることなんて褒められたことではない。
MVPだって、おそらくたたみかけたアタッカーのものだろう
問題はそこではない
「でもさ、一体全体どうして魔物がここにいるワケ?衛兵はなにしてたのさ」
「低クラスで喋る魔物なんて初めて見たぞ」
いくら無能な王族が治める王国とはいえ世界一の国土を誇る強大な国だ。タケノコみたいに地面から突然湧いてきたなんてことはない
それに仲間が言う通り喋るモンスターなんてのは初めてだ
例外はカロン、アレは特級クラスの魔物だから喋ることができたのだ
(俺たちは《黒蛇党》とも戦わなければいけないのに)
やることべきことは多い、それに対してできることはわずかだ
こんな低級の魔物を討伐するだけで満足してはいけない。
もっと強くならなければーーー




