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外伝八綺衆


ここはオラカイト王国市民街

以前ギルド《アークライト》に行われた大規模なゴブリン討伐作戦にて

ギルドマスターにして第三王子のギルデロイの命令によりゴブリンが巣食うルリナ山は焼き払われ

多大な犠牲と引き換えにゴブリンたちを根絶やしにすることに成功した



しかし麓にあった町や村が無事で済むわけもなく、住民たちは苦しい生活を強いられることとなった

そんな折《ジュラ自警団》の告発により全てを知らされた住民たちは王国とギルドに制裁を加えるべく貴族街を目指したーーーのだが




普段なら賑わっている日曜の市場は静まり返り、パレットをひっくり返したかのように赤々と染まった地で、そこに立っているのは派遣された八人のギルド員だけであった


「あーあ、ギルド員ならもっとヒーローみたいなことできると思ったのに、誰からも感謝されないどころか恨まれてんじゃん!最悪だよ」

全身黒一色の服に身を包んだ有翼の剣士、序列六位のカイトが村人だった(・・・)ものを足蹴にして愚痴をこぼす。戦う敵が魔物でもなかったし、自分の活躍の目撃者たちもすぐに忘却の呪文で忘れたせるのだ。

「仕方ないさ、我々は手の届く命しか救えぬ。ただ、できることなら貧民街のあたりで止めさせて欲しかったがな」

赤い犬のお面を被った犬顔の半獣人の侍アカベコは言う。壊滅とまではいかないだろうがそれでも被害は尋常ではない。依頼開始時には貧民街から抜けた後なので守りようはなかったのだがどうも納得はいかないのだ


「わかってないわね、いい?カイト、アカベコ。彼等は仮にもこの国に楯突こうとした愚か者、やられるのだって自業自得よ。むしろ罰が足りないくらいだわ」

ピンク髪で小物の装飾(アクセサリー)で着飾るオシャレな僧侶は序列八位のジェニーは暴徒の亡骸に冷ややかな目線を送る


お通夜のように静まり返った光景でただ一人場違いなものがいた。序列四位のフードの男だ


「貴方達、素質ありますよ!そうです。悲劇とは憤りや悲しみを読み解くもの。それが段々と悦びに変わるのです!」

先ほどまで一切言葉を発することもなかった序列四位が熱を込めて話している。だが、その場にいない者のように流されてしまった


恋煩い(・・・)のジェニーは何もしてないだろ?こんなところでクダを巻いてる暇があったら逃した一般人の記憶処理でもしてきたまえ」

「〈世話焼きリンド〉がそんなこと言ってたら後輩らどんな顔するかわかんないよ?『出会い』がメインコンテンツよ?ゲームのシナリオ(作り話)にマジになっちゃダメダメ」

先の四人を嘲笑う二人、彼らは七位のリンドと三位のルイン

彼らはシナリオではなく交流(・・)を楽しむ人間。取り巻きたちに依頼を任せてるため依頼文すら目も通したこともないし、なんなら文字が読めるようになった(・・・)バグすら最後まで気づかなかった人間達である


空気が澱む。

仮想空間とはいえ、目の前にある惨状は現実と変わり用のないものだ

不謹慎なことを話す二人と四人の中で今まさに衝突が起ころうとしたーーその時


「お前たち、何を戯れているか!まだ依頼中だぞ!」


男の怒声により、一同は飛び上がる。声の先には二人の人影があった

怒号をあげるのは八綺衆の二位、彼の名はマンサム。ジェネラルと呼ばれる男だ


「ストレンチオ様の手前で諍い(いさかい)を起こすとは何事か!」


隣にいる大男を前に六人は慄き、彼の前に平伏した


「ストレンチオ様、申し訳ありません。ヤガミ様にはどうか内密に」


プライドの高いカイトやチャラチャラとした態度をとっていたいたルインでさえ、彼の前では深々と頭を下げている。

その中で特筆すべきはアカベコだった。そのフォームは土下座の見本とも言えるような完璧な形だ

彼らの誠意を前に満足したように一位が口を開いた


「今さっき、ヤブサ様から通達があった。ワザンが新参者のプレイヤーにやられたそうだ」

「!?」

しばらくの沈黙

「ふっ、」

平伏していたうちの誰から笑い声が漏れた


「ふははははは、コネだけでイキリ倒してたヤナギバが?」

「調子乗りすぎてザコにやられるとかマジかよw」

「所詮、中身の伴わない空っぽの器よ、当然な結果だ。」


死体にスパイクで蹴り倒すレベルの死体蹴り

静まり返っていた場に嘲笑は響き渡る。誰一人として彼を案じる声はない

序列一位が口を開くと先ほどまで爆笑していた連中は口を閉じた

「それを倒した男はカズナリ、最近我らに楯突いてるプレイヤーだ」


ジェネラルがウィンドウを取り出しカズナリのキャラデータを見せるとメンバーの中でざわめきが起きた


「私の好みじゃないんだけど、ナイトの職業ってあるしリンドの嘘記事に騙された新規じゃないの?」


ギルドバウトの攻略情報は公式は一切公表しない不親切な設計のためリンドを始めとしたトッププレイヤーから中堅が執筆していることがほとんどだ。特に信用されている記事はリンドのものだが、彼の作った記事は不遇職を推奨するものとなっており、それが新たな格差を生み出しているのだ


「おいおい、嘘ってのはやめろよ。実際俺をアテにしてくる意味じゃ貢献してるんだし。でも、俺の取り巻きにはこんなヤツはいないな」

「ヤナギバwwwwwこんな無名の雑魚にやられたのかよw」


「話によればチートを使った取り巻きを数人倒した後、ワザンもやられたらしい。我々のようにヤガミ様の寵愛を受けているものは思えないが外部との繋がりがないとも言い切れない。総員気をつけるように。」


締めの言葉を受けて一同は解散した


「アホくさ、相手が弱いと油断してチートを解除しただけだろ」


依頼から帰還したリンドはぶつくさと文句を垂れていた。一位も二位も柄にもなく警戒していたが恐るるに足りるような相手ではないとは思っていたからだ


ヤガミの寵愛を受けた者は基本的に皆仲は悪いが上からのおこぼれやコンテンツの維持のためにある種の団結力を持っている。そのため民度は低くても集団での離反はおろか裏切りは一度もない。そういう意味では信頼はできる集まりなのだ

仮に裏切り者がいて後ろから支援されていたとしても、小狡いプレイヤーがおこぼれ目当てで情報をくれるし、非公式でログや運営しか知らない情報は共有されてるのですぐに尻尾は掴める


「どんな身の程知らずか知らんがすぐにお縄になるよ」


そして彼はギルドで依頼を受ける。

表向きは不遇職を対象としたシナリオを

これが彼の最後の依頼になるとも知らずに

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