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二十章因縁

「みなさんには《黒蛇党》が主催している闘技大会に向かっていただきます」


ここはおなじみ《アークライト》の作戦会議室

いつも通り作戦を説明するイレイナだが、いつも食って掛かっているせいか明らかに俺のことを無視している


今回の依頼は巨大な闘技場の中に百人単位で制限時間いっぱいまで戦いあい

最期まで立っていた人間が勝者になるというもの。

巨大な闘技場の外に出るか、相手を殺す以外は何でもありのルール

相手を巨大最期まで立っていた人間が勝者となるそうだ


「この大会で勝ち残った人たちは賞金のほかに《黒蛇党》の戦闘員としてスカウトされるようです。これ以上向こうの戦力を増やさないためにも皆様には大会にエントリーし、自分たちの以外の参加者を全滅してもらいます」


ぶっちゃけ回りくどい作戦だ

《黒蛇党》の依頼と聞いて参加したが、実質はそこら辺のチンピラと戦う依頼

九十人そこらを倒して得られる結果は『自分たちの正体を明かして企画者をがっかりさせること』

正規の手段でルールに則ってやっている手前、どんなに大暴れしようと大会を盛り上げるだけ

秘匿組織とは思えない大胆さと地味さを組み合わせた雑な依頼だ


「また、賞金の100万G(ゴールド)は依頼終了にアイテムとして付与されます。自由に使って構いません」


賞金と言う言葉を聞き、参加者の一部は歓喜している


(そんな大金あってもギルド街じゃ使えないだろ・・・)


ギルド街では専用の貨幣が流通している。逆に言えばそれ以外ではおもちゃのお金と大差ないのだ


「大会の邪魔を正規の手順踏むなんてなんかおかしくない?」

「こんな理由でもね、なければやってられないのよ」


俺の気持ちを知ってか知らないかイレイナに聞こえないようサキが俺達に小声で話しかけ、店長が残念そうな顔で話しているのを俺は見逃さなかった

他所から来たサキがこういうのなら俺の考えは間違っていないということだろう


「それではみなさん、ご武運をお祈りします」

俺には目線を合わせずに受付嬢が見送っていった

―――――――――――――――――――――――――――――――


大会会場の控え室にワープした俺達は見覚えのある顔を見かけた。


「よぉ、ワザン。今日は取り巻きはいないのか?」


前回あれほどしつこく絡んできたわりに作戦会議室では大人しくしていた

ドンガメ亭、いや薄氷騎士団のクランマスターみすぼらしくそこにはかつてのような威厳みたいなものはなかった

彼は途轍もなく動揺していた。


「私がいなくなってからどうなったかと思ったら相変わらずね、ワザンちゃん。」

「メリダ、一度は引退した負け犬風情がどうしてお前がこんな男の元にいる」


その理由は店長ことメリダさんだ。自分よりも立場が上で、引退した人間がいたのは予想外だったようだ


「あなたの落ちぶれた姿を笑いに来ただけよ。私がいなくなってから好き勝手していたそうじゃない」

「逃げ出した負け犬風情が。てめぇもまとめてぶっ潰してやるから首洗って待ってろよ」


ワザンは悪態をつきながら作戦会議室に向かっていった


―――――――――――――――――――――――――――――――


「初期位置はみんなと離れた状態か。」

さすがにバトルロワイアル方式、みんなで固まって行動はさすがにできないようになっているか。

前衛職ではないアキナやまだダメージ判定の仕様に慣れていない初心者のサキちゃんも気になるが、あの特訓を共にした二人ならたぶん大丈夫だろう。


いざ依頼が始まると、ならず者たちはさながらゾンビ映画のように一斉に俺達めがけてなだれ込んできた

バトルロワイアル方式と聞き、潰しあいさせれば攻略できると高を括っていたがどうも事は簡単には進まないようだ


あっと言う間に敵に囲まれてしまったが、以前とは違い、心の中は余裕があった

店長の指南と特訓のおかげで、敵の挙動が読めるようになっていたからだ

落ち着いて冷静に【視界強化】であたりを見渡す。

ワザンを探すために装備してきたがこんな感じで役に立つとは思ってもいなかったが

一人ひとり来る襲い掛かってくる敵を落ち着いて対処できるのは好都合だ


後ろから切りかかった剣が振り切るよりも先に俺の盾がならず者の顔面に【カウンター】で返り討ちにさせ

敵の攻撃を【パリィ】で受け流すことで敵は別の敵同士で同士討ちを誘発させ

【フェイント】で怯んだ敵を【シールドバッシュ】で吹き飛ばし、後ろにいる敵を将棋倒しにさせることで敵の包囲網を抜け出すことに成功した


敵の上を踏ん上っているので時折、下から声が聞こえるが気にしない


|(ワザンはどこだ?)

奴が正々堂々戦いを行うとは到底思わない。

この混戦の中自分だけ生き残れるように仕向けているだろう

【視界強化】のスキルを使い、俺はあたりを見渡す


ビュンッ!


俺が思考を張り巡らせてる間も敵は攻撃を仕掛けてくる


ドガッ!!

【カウンター】により斬りかかるより先に俺の剣がゴロツキに当たった。

模擬剣だったので斬れはしなかったが、この感触はあばら骨が何本か折れていた感じはする


「どけ、お前らは用はない!」


俺の一言でゴロツキどもはたじろいだ

その中でとりわけ動揺したものがいた。ワザンだ


「逃すか!」


背を向けて逃げるワザンを俺は追いかける


ザッ

俺の行手を阻むようにならず者たちが割って入ってきた

数としてざっと十数人。勝てない相手ではないが下手に消耗したくはない。

短期決戦で決めるか?思考をよぎらせていたその瞬間


メリダさんが俺とゴロツキどもの間に割って入った


「カズナリちゃんに道を譲りなさいよ!!」


巨大な長斧を振り回すと


ズゴゴゴゴゴゴッ!!


その一薙ぎでゴロツキどもが一方向にまとめて吹き飛んでいった


「す、すごい」



「ブランクがある」と言いながらも一撃でゴロツキどもを薙ぎ払ってしまった。

俺もあとで全体攻撃習得しよう


「ここは私たちに任せて、あなたはワザンを倒すのよ」とサムズアップし、見送る店長を背に俺は向かう


「くそっ、まだ来やがるか」 


ワザンが指示すると交戦をやめたゴロツキどもが今度は二方向からわらわらと寄ってくる


「【重力付加】!!」

「【マジックシールド】!!」


「アキナ。サキちゃん!」

「ここは私たちで食い止めます!はやくワザンを」

「おいしい役なんだからちゃんと倒してね」


二人とも・・・うれしいことを言ってくれるじゃないか。

ここはみんなの頑張りに答えなくなちゃな


「くそっ、こっちに来るんじゃねえ!」

「行かせない!」

今度は逃げようとするワザンの前にエルが通せんぼする。

やみくもに剣を振るうが小さな体でさらにちょこちょこ動くので一向に当たらない


とうとうワザンは逃げることをやめ、俺の方を向いた


「もう観念しろ。いくらNPCを操作しようが結果は同じだ」

「どうしてぇ、どうしてだぁ!なんでいつもお前の方に人が集まるんだよぉ!」


奴は剣を取り出し、俺に切っ先を向けた。

その剣は見た感じ模擬刀ではない。本物の剣だ


「クソゴミカスの新参者が!黙って俺にやられてりゃいいんだよ!」


ここは盾でうけとめつつ【スイッチヒッター】で反撃する。

これでワザンを返り討ちにしようとした。しかしー


ガキン!バキィ


「なっ!!」


〈警告 盾にダメージ蓄積100% 盾が使用不可になりました〉


振るいかかった一撃で俺の盾が砕けたのだ。

砕けた盾越しに見せた苦し紛れなワザンのしたり顔

おそらく、奴が何らかのイカサマをしたのだろう


「おらぁ!もう一発!!」

「させるか!!」


ガッ、ゴォオ!!


〈警告 ■にダメージ蓄積100% ■■が使用不可になりました〉


今度は剣が砕ける。破片も残らず消えてしまった

ギルドバウトオンラインで今まで武器が壊れるなんてことはなかったのだ

例外として盾は損傷率が100%になるとそのシナリオ内で使用不可能になるペナルティがある

今のメッセージ欄もバグっていたのを見ると無理矢理盾の破壊判定を剣に移したように思える。


しかも、あのダメージ蓄積量は尋常じゃない


「カズナリぃ!この状況どうする?どうするよ?泣くか?謝るか?命乞いかぁ?好きなをしたっていいんだぜ」


水を得た魚とはこういったものか

ようやく奴は今まで通りのイキリ(・・・)を見せたのだ


「いいや、まだ詰み(・・)じゃないぜワザン」

「あぁ?不可能だろうが、盾も剣もない今、お前にはもう攻撃する術はない。」


人間とは道具を使う生き物だ。その器用な手先で道具を持ち狩りをし戦争をした

しかし生き物の手とは元来もっと原始的なことができるはずだ


「俺はまだ、お前をぶっ飛ばせる!!」



バキィ!!!!


パンチ一発

俺の繰り出した一撃がワザンを吹き飛ばしたのだ

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