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鬼神龍魔呂のスローライフ生活  作者: 月神世一


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12/25

EP 12

「要塞の村」

「——襲撃が、来る」

リベラが、村の、寄合の場で、宣言した。

集まった、村人たち。月兎族の村長キャルル。人魚のリーザ。天使のキュララ。エルフのルナ。財務のニャングル。そして、龍魔呂。

「アバドン商会の、合法的な、乗っ取りは、うちが、潰した」リベラの声は、硬かった。「じゃが——奴らは、諦めとらん。今度は、力ずくで、来る。村を、襲って、希少種族を、攫う、つもりじゃ」

村人たちが、ざわめいた。

「そ、そんな……」キャルルが、長い兎の耳を、震わせた。「私たちを、攫いに……?」

「安心しんさい」リベラが、村人たちを、見回した。「うちらには——あの人が、おる」

全員の、視線が、龍魔呂に、集まった。

かつて、村人たちが、恐れ、遠ざけた、その男に。

だが今、その視線に——棘は、なかった。

「龍魔呂さん」キャルルが、おずおずと、言った。「あの……お願い、できますか。村を、守るのを……手伝って、ください」

龍魔呂は、村人たちの顔を、見回した。

かつて、自分を「化け物」と恐れた、村人たち。だが今、彼らは——自分を、頼っている。守ってくれと、頭を、下げている。

(……俺を、信じて、くれるのか)

胸が、熱くなった。

「……ああ」龍魔呂は、頷いた。「村は、俺が、守る。掟の、第二条だ。"その地を、守る"。——一人も、攫わせやしねえ」

龍魔呂の、準備は、村人たちの、想像を、超えていた。

まず、彼は、エンジェル・スマートフォンを、取り出した。

『所持ポイント:1250 P』

掟を結び、人を救い、村を満たし——コツコツと、貯めてきた、ポイント。今こそ、それを、使う時だった。

念じると、画面に、新しい、カテゴリが、解放された。

『おめでとうございます』

『累計ポイント1000P到達——新カテゴリ「建築・防衛資材」が、解放されました』

「……これだ」

龍魔呂は、次々と、地球の、防衛資材を、購入していった。

有刺鉄線。土嚢。鉄条網。投光器。そして——大量の、ロープと、滑車。

村人たちは、見たことのない、地球の、道具に、目を、丸くした。

「な、なんだ、この、トゲトゲの、針金は!?」

「これを、村の、周りに、張り巡らせる」龍魔呂は、てきぱきと、指示を、出した。「敵の、侵入経路を、絞る。むやみに、突っ込めば、この鉄線で、足止めされる。そこを——叩く」

龍魔呂の、戦術眼は、的確だった。

五年間の、闘技場。流浪の、日々。数え切れない、修羅場。その、すべてが——今、村を、守るための、知恵に、なっていた。

彼は、村の、地形を、読み、敵の、侵入路を、予測し、そこに、罠を、配置していった。土嚢で、防壁を、築き、鉄線で、進路を、絞り、投光器で、夜の、死角を、消す。

ポポロ村は、見る間に——要塞に、変わっていった。

ピコン。

『共同体を守るための、防衛準備を行いました』

『+400 P』

村人たちも、立ち上がった。

「私たちも、戦います!」

キャルルが、月兎族に伝わる、古武術の、構えを、取った。意外にも、村長は——かなりの、武闘派だった。

「うちも、やったるでー!」ニャングルが、算盤を、片手に、叫んだ。「経理の力、見せたるわ! ……いや、戦闘は、無理やけど、後方支援なら、任せとき!」

そして——意外な、戦力も、現れた。

「あのー……これ、使えませんか?」

エルフのルナが、おずおずと、差し出したのは——村の、魔農作物だった。

「これ、"ネタキャベツ"。投げると、ダジャレを、叫びながら、爆発するんです。あと、これは"たまんネギ"。食べると、три時間、我慢できなくなる、特殊な、ネギで……敵に、食べさせれば……」

「……それは」龍魔呂が、絶句した。「兵器、なのか?」

「ポポロ村の、特産品です!」ルナが、無邪気に、笑った。

龍魔呂は、頭を、抱えた。

(……この、世界は)

(やはり、わからん)

だが——使えるものは、何でも、使う。それが、修羅場の、鉄則だった。龍魔呂は、ネタキャベツと、たまんネギを、防衛物資の、リストに——渋々、加えた。

遠くで、ネギオが「ついに、我々、農作物が、戦力として、認められる時が——」と、感極まって、演説していた。

そして、リベラは。

龍魔呂の、要塞化とは、別の、"罠"を、仕込んでいた。

「これが、うちの、戦い方じゃ」

彼女は、一枚の、書類を、龍魔呂に、見せた。

「アバドン商会の、"奴隷売買許可証"。前に、言うたじゃろ。これに、不備が、ある、と」リベラの目が、光った。「こいつらは、この許可証で、"合法的に"、奴隷商売を、しとる、つもりじゃ。じゃが——この許可証は、発行元の、印が、偽造じゃ。つまり、無効。こいつらの、商売は、ぜんぶ——違法じゃ」

「それが、どう、罠になる」

「ええか、龍魔呂さん」リベラは、にやり、と笑った。「奴らが、村を、襲って、希少種族を、攫った、その瞬間。うちは、この、許可証の、無効を、大陸中の、当局に、突きつける。すると、どうなる?」

リベラの、声が、低く、なった。

「奴らは——"違法な、人攫い"として、大陸中から、追われる、お尋ね者に、なる。後ろ盾の、貴族も、政治家も、ぜんぶ、巻き添えじゃ。誰も、奴らを、庇えなくなる。……奴らが、村を、襲った、その瞬間が——奴らの、終わりの、始まりに、なるんよ」

龍魔呂は、その、リベラの、戦略に——舌を、巻いた。

(……こいつは)

(敵が、襲ってくるのを、待ってる)

(襲わせて、その瞬間に、法で、息の根を、止める、つもりだ)

武力で、迎え撃つ、龍魔呂。

法で、罠に、嵌める、リベラ。

二人の、力が——一つに、噛み合った時。

ポポロ村は、難攻不落の、要塞に、なる。

「……お前と、組むと」龍魔呂が、ぽつりと、言った。「悪党は、生きた心地が、しねえだろうな」

「ふふ」リベラが、笑った。「光栄じゃ」

決戦の、前夜。

龍魔呂は、いつものように、大鍋を、据え、村人たちに、炊き出しを、振る舞った。

最後の、腹ごしらえ。明日、村の、命運を、懸けて、戦う、仲間たちへの。

「みんな……食え」龍魔呂は、言った。「腹を、満たして、よく、寝ろ。明日は——勝つ」

村人たちは、温かいシチューを、すすりながら、龍魔呂を、見た。

「龍魔呂さん」キャルルが、言った。「私……最初は、あなたが、怖かったです。でも、今は……あなたが、いてくれて、本当に、よかった」

「俺もだ」「あたしも!」「龍魔呂さんは、村の、仲間だ!」

村人たちの、口々の、言葉が。

龍魔呂の、胸に、染みた。

かつて——どこにも、居場所が、なかった。Death4。死を呼ぶ、化け物。誰にも、必要とされず、誰からも、恐れられた、男。

だが、今——この、小さな村に。

龍魔呂は、確かに、「仲間」として、受け入れられていた。

ピコン。

『村の人々から、心からの信頼を得ました』

『あなたは、もう、よそ者では、ありません』

『+500 P』

龍魔呂は、その、メッセージを、見て——目を、伏せた。

熱いものが、込み上げてきそうに、なって。

それを、堪えるように、ただ、シチューの、鍋を、かき混ぜた。

その夜。

事務所の、屋根の上で。

龍魔呂は、一人、夜空を、見上げていた。

明日、戦いが、来る。村を、守る、戦い。掟を持ってから——いや、この世界に来てから、初めての、本物の、防衛戦。

(……守る)

龍魔呂は、拳を、握った。

(今度こそ、守る。一人も、失わねえ。一人も、攫わせねえ)

別の世界では、守れなかった。母を。ユウを。すべてを。

だが、この世界では——もう、二度と。

その、決意を、噛み締める、龍魔呂を。

空の、ずっと上から。

雷帝神ユイが、見つめていた。

『……たつまろ』

ユイは、微笑んだ。

『立派に、なったね。村のみんなに、信じてもらえて。守りたいものが、できて』

『大丈夫。明日は、きっと、勝てる』

『だって、君は——もう、一人じゃ、ないから』

ユイの、瞳に、明日への、わずかな、不安と。

それを、上回る、確かな、信頼が、宿っていた。

二つの月が。

決戦を、前にした、ポポロ村を。

静かに、静かに、照らしていた。

——そして、夜明けとともに。

地平線の、彼方に。

砂塵を、上げて、迫り来る——アバドン商会の、襲撃部隊の、姿が。

現れた。

その、先頭には。

鎖に、繋がれた——巨大な、魔獣の、影が、あった。

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