再会と巫女-其の壱-
「はいはい、いちいち興奮しない。土方さんなんて珍しくもなんともないでしょ」
沖田さんがうちの頭をぽんぽんと叩きながらそう言う。
うちにとっては、珍しいとかそう言う問題じゃないんですよ!!沖田さん!!
「あー…本当に天宮君は何も覚えていないのか」
この中で一番大柄で、少し厳めしい顔つきの男が眉を下げながらそう呟いた。
声からして、おそらく沖田さんと襖越しに話していた人。
ということは、この人が局長の近藤勇さん。
やっぱり、うちは前にここにいる人達と会ったことがあるんだ。でも、なんで覚えてないんだろう?
「近藤さん、それは梗夜が彩葉の記憶消したとか言ってたじゃねえか。仕方ねえだろ」
「それはそうなんだけどね、永倉君」
「新八の言う通りだ。そいつのオレらに関する記憶は消した。まあ、消したっつーのは簡単に言っただけで、実際は頭の隅に閉じ込めたって感じだけどな」
殴られた頭を擦りながら男がむくりと起き上がる。
あ、良かった。生きてた。
「面倒だからさっさと記憶戻すか」
男が懐から何かの印と文字が描かれた紙を取りだし、うちの額に当てがった。
それに少しむず痒さを感じる。
「戻すとか言う前に、なに人の記憶弄ってくれてるんですか」
「仕方ねえだろ。あのときはそうするしかなかったんだからよ」
男を睨みつけながら言えば、苦虫を噛み潰したような顔で答えが返ってくる。
あのとき?
うちが疑問を口に出す隙もなく、ぐっと紙に力が込められたのが分かった。
ぐわん、と視界が歪む。
頭の中に浮かんだのは、どこか見覚えのある建物。
そして目の前にいるここにいる人達。
走馬灯のようにどんどん画像と音声が流れてくる。
それは、しばらくすると突然ぷつりと切れた。
「うええっ酔った…」
口に手を当て、込み上げてくる吐き気に耐える。
「ちょっと、ここで吐かないでよ?」
「吐くわけないじゃん…。うちをなんだと思ってるの…宗次郎」
あー…めっちゃ頭が痛い…。
がんがんと痛む頭を軽く叩きながら、ちらりと隣にいる沖田宗次郎…もとい沖田総司を見やる。
はい、ご満悦のようです。
とてもいい笑顔をしていらっしゃいます。
「やっと思い出したんだ。これでまた君で遊べるね。あと今は元服して名前は総司だから覚えてね」
「う、うん…」
あまり聞きたくない言葉が聞こえて一瞬、思い出さない方が良かったんじゃないかと思ってしまった。
でも、部屋の中を見回せば、この場にいるのは試衛館にいた時にお世話になった人達ばかりで懐かしさを感じる。
そうそう。懐かしい人と言えば…
「梗夜、久しぶり」
「おう」
声をかけると、少し口角をあげて笑った幼馴染み。
神條梗夜
うちより二つ上の意外と優秀な陰陽師。
正真正銘、平成生まれ平成育ちの十七歳…いや、今は十九歳か。
思い出した。
全部思い出したよ。
二年前。十五歳の中学最後の夏休み。
修行のために一人で時を越える予定だった梗夜に飛びつき、無理やり付いて行って、試衛館に少しの間、二人でお世話になったこと。
そのあと帰りたくないと散々、駄々をこねた結果。
冬が来る前に強制的に現代に帰らされたこと。
でも、梗夜は戻って来なかったこと。
"あの時はそうするしかなかった"
さっきの言葉はうちが駄々をこねたせいなのだろう。
意図的に記憶を消されていたとは言え、みんなを忘れてしまっていたことに対して少し罪悪感を感じる。
でも、結局はこうして記憶は戻ったわけだから、
「みなさん、お久しぶりです!」
少しくらい再会を喜んだっていいよね!




