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思惑と入隊 -其の壱-




「…なんであいつをまたここに連れて来た」


彩葉達が部屋を出て行くと同時に、土方さんがそう切り出した。


あー…まあ、そうだよな。


「元々連れて来ることは伝えてたし、契約も交わしただろ。お前らが鬼から彩葉を守る代わりに、彩葉の記憶と知識でこの組を安泰に導くってよ。あとさっきも言ったが、彩葉をこの時代に連れてきたのは未来じゃあ、刀を振り回せねえからだ」


「それは結構だがな、先の世に帰ったときはどうする気だ。てめえらは先の世の人間だ。いつまでもここにいるわけにはいかねえだろ」


「………」


鋭く的確な所を突かれ、二の句が継げない。


「まだ他にも理由があるんだろ。さっき事情があるとも言ってたしな」


土方さんの刀のように鋭い双眸がオレの目を探るように睨みつける。


「はー…副長様には隠し事はできねえな」


深く息を吐き出し、ガシガシと頭を強く掻いた。


「分かった。話す。その代わり、他の奴らには言うなよ。彩葉には特にな」


「…いいだろう」


土方さんが頷いたのを確認して、口を開いた。


彩葉をこの時代に連れてきたのは未来で刀を振り回せないこともあるが、もう一つ理由がある。


それは、彩葉を(おとり)に使うためだ。


彩葉を囮に京に鬼を集め、オレの最高戦力によって一網打尽にする。


オレの予想ではそうすることでこの時代の鬼の大半は消え失せ、彩葉は現代で平和に過ごせるようになる。


ついでにこの時代で護身術も身に付ければ、向こうでも少しは使えるはずだ。


この時代の鬼は今までの時系列の中で、一番弱っていると(うち)にある書物に記されていた。


だからオレはこの時代を選び、彩葉を連れてきた。


二年前に来たのは、こちらの時代での鬼の情報を集めるためであり、実践向けの剣術を身につけるため。


そして、信頼できる仲間を集めるためだ。


彩葉のことは誤算だった。

勝手に付いて来ちまったんだからよ。


「…なるほどな」


「オレだってあいつを危ない目に遭わせたかねえけど、この方法が最善だと思ったんだよ」


現世で武器を振り回して、オレが警察に捕まったら元も子もねえしな。


それにオレの目が届かないところでも、あいつを守ってくれる奴らがいるなら、それに越したことはねえ。


「事情とやらは分かったが、お前の言った通りに隊士にした以上、あいつが傷ついたり血に濡れる可能性もあるぞ。それはいいのか」


「あいつは傷つくことを恐れるほど、肝の小せえ奴じゃねえし、もうガキじゃねえんだ。清廉潔白な巫女様である前に一人の人間だからな。人を斬るか斬らないかはあいつが自分で決めるさ」


つーか清廉潔白って言葉、まず彩葉に似合わねえよな。私欲しかねえし。


「…お前も考えてるんだな」


「当たり前だろ。オレの使命は巫女を、彩葉を守ることだからな」


そのために時渡りまでする奴は、過去に誰もいなかったが。


「そうか。そこまで分かればいい。そろそろ俺らも行くとするか」


「おう」



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