2-19 vsロックゴーレム
『乾燥した荒野』の最奥、2本の尖岩の前。
伊佐美さんが用意してくれたサンドイッチで満腹度を満たし、いよいよゴーレム戦に挑みます。
地雷也さんを先頭に青いゲートを潜ると、システムに制御を奪われ――同じパーティに初めてのプレイヤーがいるとムービーが再生されるみたいですね。
前回のムービーと同じくゴーレムが咆哮を上げた後、身体の制御が戻ってきます。
「それじゃあ作戦通りに!」
私と伊佐美さん・Mugkoさんが左右に分かれて飛び出し、ネコさんは弓を構えて、みみみさんは呪文の詠唱を開始。
対するゴーレムは後衛の2人を危険と判断したのか、石弾を飛ばしてきましたが、2人の前に立つ地雷也さんが大盾で防ぎます。
「《チャージアロー》にゃ!」
「《ファイアボール》です!」
ネコさんのアーツとみみみさんの魔法がゴーレムに直撃し、一気にHPを1割程度削りました。
大ダメージを受けたゴーレムがそちらに向かおうとしますが、
「させませんよ。《タウント》! 《ツインスラッシュ》!」
「《スピアバッシュ》!」
私と伊佐美さんが左右から攻撃を加え、その動きを妨害します。
その間に攻撃を終えたネコさんは跳びはねるようにしてさらに後退、地雷也さんは《タウント》でヘイトを稼ぎながら大盾を構えて前へ。
「《ヘビーシールド》!」
右腕の横薙ぎを地雷也さんが盾で受け止め、パーティが反撃体勢に移行。
事前に決めておいた作戦としては基本的には地雷也さんがヘイトを維持し、HPが減ってきたら私がポーションを投げて交代。伊佐美さんがフォローをしつつ、Mugkoさんはヒットアンドアウェイで攻撃し、クールタイムが終わったネコさんとみみみさんがアーツと魔法でダメージを稼ぐといった感じ。
ロックゴーレムはちょろちょろ動くMugkoさんを標的に据えますが、そのたびに私と地雷也さんが《タウント》を使ってターゲットを奪い、ネコさんのアーツとみみみさんの魔法が順調にHPを削っていきます。
そして体力が残り6割になると、ゴーレムの両腕が赤い光を発しました。
「ラッシュがくるにゃ!」
「よしこい! 《ガードスタンス》!」
地雷也さんが大盾の後ろに右手も添え、腰を落として完全防御態勢に。
ゴーレムが咆哮を上げ、まずは左ストレート。と思ったら即座に右腕での打ち下ろし。さらに左のフック、右アッパーと続く怒濤の6連続攻撃。
1発1発が盾に当たるたび、物凄い音を立てて地雷也さんのHPがじわじわと削れます。
『うお、めっちゃ凄い音してるw』
『頑張れおっさん!』
「いよっし! 耐えたぞ!」
「ポーション投げます!」
ラッシュが終わったと同時にポーションを投げてHPを回復させます。ゲームのポーションは頭から被ってもHPが回復するからいいですね。
「残り6割、この調子でいくぞ!」
その後も特に問題らしい問題は起きないまま安定してダメージを重ね――体力が4割を切ったタイミングでゴーレムが全身に赤いオーラを纏いました。
最早見慣れた感のある発狂状態ですね。
「またラッシュ来るにゃ!」
再び始まった連続攻撃をひたすらに大盾で防ぐ地雷也さん。
発狂による攻撃力上昇の効果もあって、防御の上からガンガンHPが削られていきます。
「ちょ、ヤバイヤバイやめろください!?」
「ガリガリ減ってるにゃー!」
「攻撃厳しすぎでは!? アリーシアさんとMugkoさんはフォロー入って!」
「分かりました!」
「了解っと。《クリティカルエッジ》!」
「《タウント》! そいっ!」
〈挑発〉しつつ、ゴーレムの膝裏に向かって全力で蹴りを入れます。
発狂状態になってるおかげでちゃんとダメージが入り、タゲがこちらに移りました。
「おおっと《ウエポンパリィ》!」
振り向きざまに裏拳が来て、咄嗟にしゃがみつつ受け流し頭上通過。
地雷也さんであれです。《パリィ》をミスった時点でミンチ確定なので、集中力を総動員して必死に迫る攻撃を捌き続けます。
っていうかマーダーラビットの時といいこんなんばっかですねホント!
『やばいまた両腕が赤く光った!』
『発狂ラッシュ2回目!?』
「――っ! 《カウンターパリィ》! 《ステップ》! 《ウエポンパリィ》!」
左ストレートを受け流し、打ち下ろしは横に、左のフックはしゃがんで避け、右アッパーをまた受け流す。次は――
『攻撃パターン変わった!?』
『ここでストンプ!?』
振り上げられる両腕。
タイミング的に回避は無理。アーツはクールタイムが終わっていない。
こうなったら一か八か〈蹴り〉スキルでジャストパリィを狙って……!
「大きいのいきます! 《オーバースペル》《ファイヤーボール》!」
背後から響く声。直後に頭上で炸裂する爆音と閃光。
爆煙が消えると、ゴーレムの左肩の辺りが大きくえぐれているのが目に入りました。
「替わるぞアリーシア! 《タウント》!」
地雷也さんが戦線に復帰し、私は後ろへ。
今の内に減ったHPをポーションで回復させておきます。
「ふぅ。危ないところでしたね」
『マジでギリギリだった』
『あの魔法が飛んでこなかったら死んでたかも』
いやホント。後でみみみさんにはお礼を言わなきゃいけませんね。
そんなことを考えつつ、そろそろ私も戦線に――と思ったところで突然〈直感〉が反応。
その感覚に従って向けた視線の先、皆と戦っているゴーレムの視線がみみみさんの方を向いていることに気づいた瞬間、ロックゴーレムが予想もしなかった行動に出ました。
『自分の腕を千切った!?』
『しかもそれを投げた!?』
やばい、と思った時には身体が動き始めていました。
なんでとかどうしてとかいった無駄な思考全てを省略し、〈蹴り〉〈足捌き〉〈忍び足〉〈軽業〉〈跳躍〉といったあらゆるスキルを動員して身体を前へ!
――まーにーあーえぇええええええええ!!!!
時間が間延びするかのような感覚の中、私はゴーレムの腕とみみみさんを繋ぐ射線上へと躍り出て――
「《アローパリィ》!」
ガキィィィンッという音と共に両腕から全身に衝撃が走り、吹っ飛ばされた私は地面をゴロゴロと転がります。
ようやく回転が止まって確認すると、HPは見事にレットゾーンに突入していました。
……あっぶなー。今の攻撃が飛び道具扱いだったからなんとかなりましたけど、普通の攻撃扱いだったら死んでましたね。
ほっと胸を撫で下ろしていると、どうやらあっちも決着が付いたみたいです。
▶レベルが上がりました
▶SPを2p入手しました
▶スキル〈疾駆〉がアンロックされました
レベルアップのインフォメーションが流れ、ゴーレムがボロボロと崩れていくのが見えました。
『終わったー』
『アリーシアちゃんお疲れさまー』
『ヽ(*´∀`)ノ オメデト─ッ♪』
『8888888』
『88888888』
『88888888』
次々と流れるリスナーさんたちの労いのコメントを見つつ、力が抜けた私は地面に大の字に寝転がったのでした。




