2-16 荒野エリアのボス
「というわけでボスエリア前に到着しました」
『乾燥した荒野』の奥地は大きな岩がゴロゴロした地形になっていて、その中に見覚えのある尖岩が2本――ゲートの色は青ですね。流石にそう何度もシークレットボスを引き当てたりはしませんか。
「HP、MP、満腹度よし。じゃあ行きますか」
ゲートを越えると、不意に私の視点が上空に、所謂見下ろし型のTPS視点へと切り替わりました。
いつものムービーですね。
――――――――――――――――――――
燦々と照り付ける太陽。
何者も存在していない広場に、突如不協和音が響き渡る。
転がっている大きな岩がカタカタからガタガタと動き出し、最終的にゴロゴロ動いて広場の中央へと集まっていく。
集まった岩が形作るのは涙型に近い2本の足と楕円形の胴体に、円柱形の腕2本を持つ岩の巨人。
『――――!』
巨人は両手を後ろに下げ、戦闘開始を告げるように空に向かって咆哮をあげた。
――――――――――――――――――――
ムービーが終わり、身体の自由が戻ってきました。
「ボスはロックゴーレムですか……攻撃通りますかね?」
エリア中央に佇むのは全長3メートルを超える岩の巨体。
岩で構成された身体は見るからに頑丈そうですし、分かりやすい弱点も見当たりません。
『創作物だったら額の【e】が弱点だったりするけど』
『何それ?』
今のはファンタジー小説なんかで時々見る話で、ゴーレムの額に刻まれた【emeth】の最初の文字である【e】を消すことで【meth】となり、ゴーレムは元の土塊に戻る、というやつですね。
まぁあのゴーレムは人工じゃなくて天然物っぽいのでそういうのは無さそうですけど。
「とりあえず近づいて攻撃してみますか」
ずしんずしんと重い足音を立てながらロックゴーレムが動き出したのを確認し、私は首切りの双剣を構えて一気に接近。
大振りな腕の一撃を身を低くして避け、すれ違いざまに胴体部分を斬りつけます。
「……一応ダメージは入るみたいですね」
返ってきた手応えはかなり硬いものでしたが、ちゃんとHPは減ってます。
背後に回ると裏拳が飛んできたのでバックステップで回避し、そのまま周囲をぐるぐる回ってゴーレムの攻撃パターンを確認しつつ、隙を見て攻撃を加えていきます。
「よっ、ほっ、《ステップ》! 《ツインスラッシュ》!」
どうやらロックゴーレムは攻撃力と防御力に特化したボスらしく、攻撃は当たれば怖いもののモーションが分かりやすく避けることはそう難しくありません。
「今のところ確認できる攻撃手段は右手で前方を薙ぎ払う横薙ぎ、左手でのストレートパンチ、後ろに回った場合の回転攻撃、合わせた両手を叩きつけるストンプの4種類……左手のパンチは受け流しで対応できそうですね」
少しでもダメージを稼ぐために《カウンターパリィ》で対処しましょうか。
おっと早速左パンチがきましたね。
「《カウンターパリ――!?」
攻撃を受け流した瞬間、響く警告音。
いったい何だと慌てて確認してみれば、両手の首切りの双剣に重なるように表示された『破損注意』の文字が。
「耐久値減少!? ウソでしょ今までそんなの一度も――」
なかった、と言いかけて、今まで使ってたのが耐久値がアホほど高い初心者の双剣だったことを思い出しました。
そりゃあ一般的な耐久力しかない首切りの双剣を丸一日使ってれば耐久値も無くなりますよね……!
『Gラビットの時と同じような失敗してる』
『何の成長もしてないなwww』
「ぐぬぬ……」
一旦距離を取った私は装備を首切りの双剣から初心者の双剣に変え……あ、よく見たらこっちもかなり耐久値減ってますね。
まぁ多分この戦闘の間くらいは保ってくれるでしょう。
問題はこの武器でロックゴーレム相手にダメージを出せるのかってことですけど……。
とりあえずまた接近して、っと。
「よっ、《スパイラルエッジ》! ……あ、ダメですねこれ」
多少は防御力が低いであろう関節部分を狙ってアーツを叩き込んでみたものの、与えたダメージは0。
さっきまでは攻撃力が高い首切りの双剣のおかげでなんとかダメージが入ってましたけど、流石に攻撃力最弱の初心者装備だと防御を抜けません。
「……これ、詰んでるのでは?」
どうしたものかと考えながら距離を取り続けていると、ロックゴーレムからバスケットボール大の石弾が飛んできました。
魔法ですかね。結構速いとは思いますが距離もあったことで余裕で回避。
お返しとばかりにインベントリから取り出した石ころを〈投擲〉してみますが……うん。やっぱりダメージは0。
いくら遠距離攻撃のダメージがDEX依存とはいえ、所詮普通のアイテムですからね。正直期待はしてませんでした。
「……やっぱり詰んでますね、これ」
ボスエリアからは撤退不可。
そして私にはゴーレムにダメージを与える手段が無い。
となるともう死に戻りするしかないわけで……。
「はぁ……どうせ死に戻りするなら、最後に試したかったことをやってみますか」
私は双剣を納刀し、無手の状態でゴーレムの前に。
『ちょっ!?』
『アリーシアちゃん何やってんの!?』
肘をやや曲げて腕を前に。両の掌を正面に向け、後ろ足はやや開き、前足は正面。重心は後ろ足へ。
ゴーレムの左ストレートが目の前に迫り――
「廻し受け!」
▶スキル〈受け流し〉のレベルが上がりました
▶アーツ《アローパリィ》を取得しました
▶アリーシアは死亡したため、所持金が半減します
▶死亡ペナルティーで一定時間ステータスが半減します
首切りの双剣 耐久値=100
初心者の双剣 耐久値=999
くらいで考えています。初心者装備は強化等ができない代わりにとにかく丈夫で壊れづらいという設定です。




