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271  作者: Nora_
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03

「あのさあ、流石にさっきの態度は駄目じゃない?」

「有紗さんのせいだよ。なんでああいうときにこっちに参加してしまうの? せっかく花ちゃんが付き合ってくれていたんだから最後まで二人でいればよかったんだよ」

「う、うぉ……ゆ、ゆらも結構言うタイプ?」


 そうだ、私もほとんど我慢できないタイプだ。


「有紗さんの本当のところを教えてもらえて嬉しかった。でも、いまの中途半端のままならそれを見る度にため息をつきたくなるよ」

「私だってっ――いやいいや、だってこれをゆらに言っても仕方がないし」

「もう暗くなるから帰りなよ」

「そうする、ゆらの馬鹿」


 な、なんで馬鹿とか言われなければならないのか。

 だったら私になんて教えなければよかった、そうすれば少なくとも全く関係ない女からため息をつかれることもなかったのに。


「あーもう!」


 なんで他の人が好きな人のことで内側をこんなに……。

 むかついたからもう奇麗で必要なさそうな廊下でも必死に擦っていることにした。

 奇麗をより奇麗にして反射するぐらいにしておかないと明日、普通に対応することができない。


「いやでも」


 いまのでもう来ないか。

 そう考えると馬鹿らしくなってきたので、いつものようにご飯を作って食べてしまうことにした。

 それこそあっちもむかついて「こんのくそ!」とむかつきパワーで上手くできればいいけどね。

 あとはもう本当に花ちゃんのそれがただの勘違いであることを願うしかない。


「ごちそうさまでした」


 私ぐらいの能力でも食材の能力の高さで美味しいご飯を作れる。

 多分、素直になれない人にも効く、勇気が出ない人でも「頑張ろうっ」となるところ――……改めて出てきた有紗さんに対するごちゃごちゃをなんとかするために使用させてもらうことになった。

 出た後は流石にこのままだと明日に響くので寝てしまうことにした。


「寝られない……」


 それはそうだ、だっていつも寝ている時間は二十二時で現在はやっと十九時になったぐらい。

 私をこんな状態にさせておきながら本命と仲良くする有紗さんは――とは考えないけど、これなら上手くいってくれないと困る。

 仮に寝られても真夜中に目が覚めてしまうだろうから歩いてくることにした。


「ゆら」

「うひゃ!? って、花ちゃんか……びっくりしたあ……」


 鉄柵を開けて敷地外に出ようとしたところでこれは怖い。

「うひょわあ!?」とか微塵も可愛くない悲鳴を上げなくてよかった、単純に近所迷惑でしかないのもある。


「は、花ちゃんがここまで来るなんて珍しいね。……ふぅ、どうしたの?」

「どうせゆらのことだからこの時間に外に出ても歩くぐらいでしょ? 私も歩きたい」

「それはいいけど」


 まさか変に有紗さんだけが残ったから……?

 ただ、それならすぐに出た有紗さんと一緒に帰ればいいわけで。


「ゆらには気づかれたかなって」

「もしかして――そっか」


 あんなに楽しそうだったのに……。

 参加したこと以外は本当に積極的だった、時間を重ねることができればもう少しぐらいは変わっていたはずだった。


「あと、勘違いじゃなければ有紗って私のことを――」

「知らないし、仮に有紗さんの本当のところを知っていても言わないよ」

「そうだね、ゆらはそういう子だ」


 自分が振られたわけでもないのに、少し前に考えたように自由なのに、まるで自分にとって可能性がなくなったときみたいに悲しくなった。


「それ、有紗さんには言ってあるの?」

「まだ、かな。でも、ちゃんと言うよ」

「うん」


 これもまた複雑な気持ちにさせる。

 このタイミングで動き出していなかったらその前に教えてもらえていたのだろうなと。


「それだけ。これが言いたかっただけだからこのまま帰るよ」

「分かった、気を付けてね」

「一緒にいられる時間は減るかもしれないけど、ゼロにするつもりはないから勝手に不安にならないように」

「うん」

「じゃ、またね」


 元々、いつかこうなると考えていたから心臓はいつも通りだった。


「……よく電話なんかかけてこられたね」

「いまから会いたいんだ」

「やだよ、なんでゆらとなんて会わなければならないの」

「それなら有紗さんのお家にいくから外に出ていてほしい」

「だからっ、ゆらとなんて――なにかあったの?」


 そうだね、彼女的にはなにかがあったね。

 黙ったままでいたら「はぁ……来てくれるならいいよ」と答えてくれたのでいくことにした。


「ここだよ」

「有紗さんが教えてくれたから知っているよ」

「もー可愛くないっ」


 アレを勝手に言うわけにはいかないから腕を掴んだ。

 そのままの状態で泊まりに来てくれないかと誘う。


「直前のあれがなかったら考えてあげてもよかったけど、そうでもないんだから泊まるのなんて嫌だよ」


 あ、でも、ご飯とかないしなあ。

 ここで「もー仕方がないなあ」とならなくてよかった。

 しっかりと謝罪をして、来る途中に買っておいた飲み物を渡してから帰ることに。


「はぁ……なんかおかしくない? それとも、私がまだゆらのことを知らないだけ?」


 彼女の方が大きくて足も長いから追いつくのなんて簡単だろう。

 今度は私が腕を掴まれる番になったので振り向く、するといつもならひぇっとなっているような顔だったけど、今回は全く影響を受けなかった。


「ゆら――ちょっと待って花からだ」


 電話を選んだか。

 まあ、花ちゃんだって周りの人と変わらないところがあるということだ。


「うん、うん、そうなんだ」


 今回は自分からいっているわけだから逃げられない。


「それならもっと早く言ってくれればよかったのにー――え? あ、私? そんなの応援するに決まっているじゃん! いやでもまさかね花にも気になる子ができるなんてねー」


 もっとも、笑いながらも腕に力が入ってしまっているとかもない。


「あっ、ごめんお母さんに呼ばれたから切るね、花なら私のお母さんに厳しいところもあるって知っているでしょ? うん、また明日もう少し詳しく聞かせてよ、じゃあね!」


 なんか気持ちが悪いな。

 花ちゃんだって少しは言いづらそうにしていたり、直接言うことを避けて電話で~みたいにしたのに彼女はあくまで普通か。


「ゆらがここに来たのはこれを知っていたから、前々から一緒にいる私よりも先に大事なことを教えてもらったと、そういうことだね?」

「うん」

「はは、これはやってくれたものだね」


 彼女はそれでも叫んだりすることはなく、こちらの腕を掴むのをやめるだけだった。


「帰る」

「うん」


 いまのままなら一緒にいない方がいい。

 いま気になるのはあの人とはどう過ごしていくのか、ということだ。

 そのときばかりは偽物の笑みを張り付けてやっていくのだろうか?

 とにかく、出て話す機会を貰えてよかった。

 あのまま無理やり寝ようとしたときよりかはマシだった。




「諏佐ぁぁあああ!」

「どうしました?」


 ではない、心臓が大暴れだ。

 なにもこっちに来なくても、だって私が悪いことをしたわけではないし……。


「なんでこんな一番最悪な展開になってんのよ!」

「誰が誰を好きになるのかなんて分からないんです、仕方がないですよ」

「でもっ……なにも私じゃなくたっていいじゃない……」

「それ、有紗さんの前では出さないであげてくださいね」


 こっちはそのせいで微妙な状態だ。

 何故なら私といるときも不自然な笑みを張り付けて相手をするからだ。

 頼んでもいないのに、自分のためにもやめた方がいいのに有紗さんは無理をする。


「その割には花が相手のときだけ自然な態度よね」


 そう、それも嫌な点だった。


「諏佐、有紗のこと頼んだわよ」

「えっ、どうして私に……?」

「だって有紗、なんかいまは諏佐に対して必死に見えるからさ」


 ああ、歩いていってしまった。

 そんなことを頼まれてもなあ、これならまだ花ちゃんに対して露骨な態度だった方がよかったな。


「おいおいおーいっ、なに教室から逃げているのさ! 花がはっきりしてからこういうことが増えるのってアレじゃない?」

「いまあの人と話したよ」

「あの人? ――あ、佳奈《かな》のこと?」

「うん」


 本人が自己紹介をしてくれたわけではないから知らないけどね。


「そういえばあのときも一緒にいたよね」


 あのときが昨日だからなあ。

 せめて一週間ぐらい経過してくれていたら――は、彼女が可哀想だからこれでよかったと片付けるしかない。


「ね、もう変わったんだから昨日、佳奈となにを話したのか教えてくれてもよくない?」

「私もあの人も応援する側という話をしたよ」


 これぐらいはいいか。


「んはーっ、そんな話をしたその日にアレっ? 佳奈もタイミングが悪いなー!」

「もうやめて」


 私も悪いけど……やっぱり気になるものは気になる。

 見たくなかったから背を向けると「な、なに急に」と分かっていないみたいだった。


「無理して笑おうとするのやめてよ、花ちゃんが相手のときにはできているのになんで私のときにはできないの?」

「無理して笑ってなんかいないけど……それはゆらが私のことを知らないだけだよ。私なんて『なにヘラヘラしてんの?』って佳奈からちくりと言葉で刺されてしまうぐらいには笑っているんだよ? あと、花が悪いことをしたわけじゃないんだからいままで通り相手をするのが普通じゃない?」

「……なにも影響がないとかありえないでしょ」

「いやそりゃ、なにも影響を受けていないなんて言えないよ。でも、本格的に動く前で助かったんだよ」


 振り返ると確かにあの人が言葉で刺したくなるような顔をしていてため息をつく。


「ふへへ、心配してくれていたってことでしょ? ゆらは優しいなー」

「心配していたわけじゃなくて呆れていただけ」

「うんうん、そういうところ花にそっくりでいいね!」


 駄目だこりゃ……。

 壊れてしまった人といてもこちらまで壊れてしまうから離れることにした。

 彼女はそれでも付いてきて「ありがとね!」といい笑みを浮かべて言うだけだった。




「諏佐っ、ちょっと隠れさせて!」

「は、はい」


 有紗さんから逃げるために出てきているのにそれが思い切り逆効果となっていた。

 ちなみに、なにから逃げているのかはすぐに分かった。


「ちょっと佳奈、逃げなくてもいいでしょ」

「だ、だってあんたなんか変だし……そういうのは諏佐とか有紗がすることでしょ」


 普通と言えば花ちゃんも普通だ。

 とはいえ、こちらは普通にしているだけで他の人からすれば積極的に見えてしまうぐらいなので私達とはまた違うかもしれない。


「そういえばいつの間にかここも一緒にいるようになっているよね、ゆらはちゃんと約束を守って偉い」

「花ちゃんと同じで優しいからだよ」

「や、話し始めたばかりなのにそれはどうなの?」

「実際にそうですからね」


 有紗さんだって優しいところはいいのになあ。

 でも、それ以外がいまの私にとって駄目だからこうして出てきている。


「さ、佳奈は付き合って」

「はいはい……」


 私以上に気にしていると思っていたのに溝上《みぞかみ》さんは溝上さんらしく有紗さんといただけだった。

 なので、輪の中に全く入れていない途中から現れた変な私《おんな》だけがごちゃごちゃ考えてしまっているということだ。

 それが恥ずかしくて逃げたかったのもあった。


「いちいち逃げなくてもいいのにね、やりづらさがあったとしても大袈裟すぎない?」

 

 これは私に言っているのかな、溝上さんに言っているのかな。


「それよりゆらさんさあ、いつになったら佳奈は変わると思う?」

「少なくとも一ヵ月ぐらいはあのままなんじゃないかな」


 できるだけマイナス要素は少ない方がいいけど、小さなことに傷ついたり、小さなことで喜んでしまうような人間らしいところを見せてほしかった。

 その点、彼女は駄目だ。


「まー花の頑張り次第か。でも、あまりにぐいぐいくるから『ひぇぇえええ!?』とかいつもなら聞けない佳奈の叫び声が聞けそう」

「有紗さんがもう少しぐらいショックを受けてくれていたらまた違ったかもね」

「んー私としてはそういうのを表に出して邪魔をしたくないからねー」


 やっぱり隠しているということじゃないか。

 同じクラスだからか意識しなくても見えてきてしまうのも問題だった。

 あと、この人のことでいつも内側がダークに染まっている私も嫌だった。


「ゆらゆら、今日の放課後は暇? 暇ならどこかに遊びにいこうよ」

「特に予定はないよ、でも――」

「はい決定っ、どこにいくかは私の方で考えておくからゆらゆらは遊びにいくつもりでいてね」


 本を買いにいきたいからそこも含めてもらおう。

 あとはよくあるお醤油がなくなりかけているのでそれも買えるような――うん、商業施設なんかがいいかな。

 午後の授業は花ちゃんを見たり、板書をすることに集中する時間となった。

 で、集中していたらすぐに六時間目なんかが終わってしまうわけで、約束の時間となってしまった。


「ゆらゆらいくよ!」

「き、奇遇ね、私達もそこにいくつもりだったのよ」


 有紗さんがやらなければいけなかったことを全部溝上さんがしてくれている。


「ちょい待ち佳奈、私達は一緒に帰って勉強をする約束だったでしょ?」

「べ、勉強もこういうご褒美的なものがあればやる気が出るというものよ」

「ふむ……ま、いいか。ゆら、有紗、私達も参加していい?」

「いいよー!」

「私も大丈夫だよ」


 私と有紗さん、花ちゃんと溝上さんという組み合わせに自然と――ならなかった。

 有紗さんを花ちゃんの隣まで押してから溝上さんは横に並んできた。

 なんかもうなにもされていなくても疲れてしまっているみたいで大変そうだ。


「邪魔をしてしまって悪いわね……」

「いえ」


 寧ろありがたいぐらい。


「敬語じゃなくていいから」

「うん」

「花って上手いんだか下手なんだからよく分かりづらいわね」


 んーどうだろう。

 この場合は彼女が有紗さんの気持ちを知ってしまっていたからこそだし、それがなければこうはなっていなかったと思う。


「あんたがいてくれてよかったわ」

「はは、話し始めたばかりなのにそれはどうなのかなって」

「うわあんた……ま、これぐらいでいてくれた方がいいか」


 す、すっごく嫌そうな顔だ。

 ただ、切り替えられたのか自分の方から花ちゃんに話しかけていて安心できた。

 こういうところでは空気を読もうとしてあげないよく分からない有紗さんにはため息が出たけどね。

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