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揺れる魔王と赤字国家をパチパチ立て直す  作者: 夏菜しの


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02:北緯二十八度

 何も知らずに対策も改革は無いし知恵なんて出ない。まずはこの国や文化、そして住人を知ることから始める。

 教えてくれるのは魔王ジークリンデの教育係だった『爺』だ。名はクラーマー。

 爺と言いつつ彼の見てくれは若い。俺の上司の係長三二歳より絶対に若い。これで年齢は三百歳越えというから驚きだ。

 種族はジークリンデと同じで『天魔』。『天魔』の特徴は背中の翼と頭の角の二つ。翼は色が濃い方が魔力が高いそうで、黒翼のジークリンデは最上級。なお爺の翼は原色の赤でめちゃくちゃド派手。


 俺が召喚されたのは『魔族』が支配する国で、人の国からは魔王国と呼ばれている。文字の区切りは『魔・王国』であり、『魔王・国』ではない。まあその王国の王であるシークリンデは魔王だけど。

 人間の国と魔王国で諍いは無い。かといって積極的な交流もないそうだが……

 せいぜい行商人が立ち寄り、特産品を買っていく程度だそうだ。調査は必要だが関税をかけるのは良い案かもしれない。


 ジークリンデや爺の『天魔』を始めに、魔王国には多種多様な『種族』が存在している。幾多の『種族』を束ねるのは『部族』で、それらの縛りを無視し人間たちは一括りに『魔族』と呼んでいる。

 現在ある『部族』は七つで『魔人族』『妖精族』『妖魔族』『獣人族』『巨人族』『竜人族』『妖鬼族』だ。『天魔』が所属しているのは『魔人族』だそうだ。


 あまり詰め込んでも駄目だろうと、本日の授業は終わりとなった。

 なお自習しとけとばかりに、爺から渡された資料─という名の乱雑なメモ一式─を、ワープロ検定二級の知識を総動員して表形式に整理していた。



◇◇────────────────────────────


魔人族(まじんぞく)

・主な種族

 天魔、魔人、魚人、バンパイア、メデューサ、エキドナ


・特徴

 貴族制度を持つ選民意識が高い部族

 個々の能力はとても高いが人口はもっとも少ない



幻魔族(げんまぞく)

・主な種族

 妖精、精霊、ケットシー、ウリシュク、アラクネ、コボルト


・特徴

 小型種が多く力仕事は苦手

 手先が器用、魔力操作に長け『魔道具』を造る技術を持つ



妖魔族(ようまぞく)

・主な種族

 夜魔(やま)、アルラウネ、インプ、ハーピィ、ケンタウロス


・特徴

 個人主義と種族主義に分かれる

 個人主義は人間の国へ行き働いている。種族主義は排他的で非協力



獣人族(じゅうじんぞく)

・主な種族

 獣人、オーク


・特徴

 人口が二番目に多い部族

 身体能力に優れている

 見た目が穏やかな者は人間の国へ行き、三代も経てば『亜人』を名乗り国を忘れる



巨人族(きょじんぞく)

・主な種族

 巨人、牛人、キュクロープス、ギガス、ビックフット


・特徴

 圧倒的なパワー

 魔力操作は苦手としているがそれを上回る労働力を持つ



竜人族(りゅうじんぞく)

・主な種族

 竜人、リザードマン、ラミア、サラマンダー


・特徴

 竜を祖とする高いプライドと戦闘力を持つ

 魔人族に匹敵するスペック。貴族制度は無いが力による縦社会



妖鬼族(ようきぞく)

・主な種族

 鬼人、ゴブリン、オーガ、グレムリン


・特徴

 人口がもっとも多い部族だが短命種でもある

 人間の国に現れるゴブリンやオーガとは別種だが見た目での区別は困難


◇◇────────────────────────────



 乱雑に書かれたメモから必要な内容を抜粋した。ここから自分なりの考察を書き加えていくのだが……

 まずはコボルトが『幻魔族』に属しているのが気になった。ゲームでお馴染みな犬面の方ではなく、赤帽の原典だろうか。

 『獣人族』と『竜人族』の確執は注意しよう。『獣人族』の種類が少ない気がするが、人口二位だというから、動物の種類が多いのだろうと想像する。ところでオークが獣人なら魚人やハーピィ、そしてケンタウロスはなんで獣人じゃあないんだ?

 それに牛人ってどうせミノタウロスだろう。デカいと獣人じゃあないのか? とか言いながら獣人(熊)なんてのもいそうだし。

 誰がどうやって分けたんだよ、これ。



◇◇────────────────────────────


【魔人族】 諸悪の根源?

 魔王がいる部族だから選民意識が高いのだと思っていたが多分逆だ。選民意識が高い部族がこの部族しかいないから、『魔王』を生み出したのだろう。

 正直、他の部族は地位(まおう)などに執着していないように感じる。となると、何か指示を出す場合、反感や反発が起きるかもしれない。



【幻魔族】 期待大の部族

 『魔道具』を造る技術は有難いが、人間の国へ売られた『魔道具』は調べられて技術が盗まれ廉価版となって出回るようだ。知的財産の保護は絶対、何か対策が必要。

 器用で小型な種族が多いのも良い。機器の小型化は永遠の課題、元の体が小さいのなら小型化もきっと捗ることだろう。



【妖魔族】 要注意の部族

 夜魔(やま)が判らず聞いたら淫魔だった。出稼ぎって夜の街かよ。

 俺も……いや。『俺は金貨四五〇〇枚の負債』だ、控えよう。

 外貨の取得方法としては悪くないが、現法では外貨取得に対して納税制度がないため『タンス預金』になっているようだ。いずれ阻止するとして、営業許可証の発行から始めようか。



【獣人族】 労働力の要

 若者ほど人間の世界(とかい)を目指す傾向があるのは日本と同じか。早急に人の流出を止める必要がある。

 満足な食糧が無いこと、娯楽の少なさ、あとは仕事不足だな。仕事はこれからバンバン生まれるからいいとして、娯楽な……、『夜魔族』って獣人でも行けるんだろうか。



【巨人族】 ぱわーいずぱわー

 持っている魔力のほとんどが身体強化に使われていることから魔法は苦手。その代わり圧倒的なパワーを誇っている。さながら人間重機、大規模開墾・水路建設を任せたい。

 ただなぁエンゲル係数は推定八〇%、彼らの運用には膨大な変動費(しょくひ)が必要なんだよな。



【竜人族】 将来有望格

 縦割り社会のお陰で統制はよく取れている。軍隊や警備向きか?

 獣人に対しては何か思うことがあるようで見下している。俺もトカゲの獣人だと思ったし、しゃーないね。混ぜるな危険、別々に配置しよう。



【妖鬼族】 一次産業要員

 鬼人とオーガを除き短命のようだが人口が多いのは有利。短命ゆえに教育が行き届いていない。詐欺にも合いやすいはず。

 もう一つの問題は人間世界にいる別種の存在だろう。獣人所属のオークにも言えることだが、彼らは人間の国では見敵必殺レベルの討伐対象らしい。活動圏は慎重に選ぶ必要がある。

 どうにか一次産業と物流を担って欲しいが。いまは難しいな。



◇◇────────────────────────────



 う~ん悩ましい。『部族』と謡っておきながら、『種族』ごとにできる内容が違い過ぎる。役割を振るのは『部族』じゃあなく『種族』にすべきだろうか……



「どうだ捗っているか」

 ノックに返事をするとジークリンデが入ってきた。彼女は俺の机の向かいのソファに座ると、わざとだろうか彼女は腕を胸の下で組んだ。

 座って揺れて、組んでも揺れた。大揺れだ。

 震度四、この地震の震源地はお胸列島の下。津波の心配はありません、津波の心配はありません……

 下から持ち上げたお陰で北緯は三〇度。

 やあ屋久島よ、また会ったね。一時間ぶりかな?


「ジ、ジロー……? わたしの顔になにか付いているか……?」

 視線は顔に固定、意地でも見ない。だってセクハラだもの。しかし意識は別だ。固定した視線の下部へ集中していた。

「いえ、何でもありません。ただの『資産価値の再評価』を行っていただけです」

「資産……?」

 腕が解かれて北緯三十五度へ。

「こちらの話です。……ああっ、動かないで!」

「えっ?」

 小首を傾げて上目遣い、律儀にも腕の位置が戻される。その拍子にマーメイドドレスに包まれた『北緯三十五度』が再び凶悪な引力を伴って揺れた。


 観測データ緊急更新:北緯二十八度!


 俺の理性が、父島あたりで沈没しかけている。

 クソッ、これが魔王のハニトラか!

 ダメだ。見るな。鎮静化の呪文を唱えろ!


 『俺は金貨四五〇〇枚の負債』

 『俺は金貨四五〇〇枚の負債』

 『俺は金貨四五〇〇枚の負債』

 『俺は金貨四五〇〇枚の負債』


 ……ふぅ落ち着いたぜ。


「本当に大丈夫か?」

「ジークリンデ様は大変すばらしい『国土』を持ちですね」

「ははは遠慮するな。国土は広くても食糧不足が一向に解決できないていないわたしなど、笑い飛ばしてくれていいぞ」

 おっと危ない。本音が漏れたが勝手に曲解してくれて助かったぜ。

「分かりました。そのような輩を黙らせるためにも、まずは食糧事情をクリアしましょう」

 幸いなことに、淫魔やバンパイアも食事は同じだと聞いた。食事に内封する魔力量がどうとか言っていたが詳しいことはどうでもいい。食い物が同じ、この情報だけで充分だ。田舎育ちの実力見せてやろう。伊達にじいさんの畑の手伝いはしてないぜ。

「本当か、それは助かる!」

 ソファを立ち上がり、興奮してこちらへ詰め寄るジークリンデ。ふわりと良い香りが鼻先に届く。彼女が立ち上がったので北緯は六十度へ。しかし震度は脅威の六を記録した。


 震度六……

 この震度、普通なら倒壊の危険があるってのに、俺のモノは倒れる気配もない。

 座ってて、いや机があってよかった。


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