第21話「裁定」
翌日、ついに初優勝のチャンスが一気に近づいた決勝レース。
飛花の乗る76号車がグリッドの最前列に止まっている。
昨日の雨とは打って変わり、快晴となった。
ファンたちはこの瞬間をどれほど待ち望んだか。
ついに始まる決勝レース。
全24台が1コーナーをめがけて加速していく。
飛花が1コーナーを先頭で抜けていく。
そして、先頭で集団をリードしたまま、1周回を終える。
19周目、2位とのリードは4秒。
エイデンも飛花に追いつこうと3位を走行していた。
2位から飛花を捕まえようと松下は異次元のペースで追い上げていた。
飛花は逃げ続ける。
そして松下が異常なペースで追い上げていく。
しかし、それを寄せ付けない飛花。
チェッカーフラッグが振られる。
その下を一番に通過したのは飛花。
トヨタにとって悲願の初優勝を掴み取った。
ピットも、日本のEFTCも大歓喜。
しかし、守谷だけは不安を感じていた。
ピットのモニターに映し出されていたのは「No.76 Under deliberation」。
そしてトップ3のメンバーたちがメディアから取材を受けていた。
その時、国際映像ではテロップが出される。
「No.76 Disqualification」
守谷は真っ先にショックを受ける。
そして表彰式を待っていた飛花にもFIAのスタッフが失格を伝えに来た。
飛花も驚きを隠せない。
「え?私が失格?」
「えぇ、ペナルティの消化義務を無視したためです。」
そしてすぐにマシンが1位の場所から移動させられていく。
守谷はすぐにFIAのスチュワードに抗議しに行く。
「なんで!なんで表彰式の直前に判決を出すんですか!?」
「本当に微細な動きだったため、それを加味して審議していた結果、遅くなった。」
「じゃあなんで飛花は失格なんですか!」
「それに、私達は3周目に通告したはずだが?」
「なんだと?俺達はそんな無線を聞いていない。それにFIAからの無線を受け取っていない」
「…もう何を抗議しても結果は覆らない。」
「じ、じゃあ、前のマシンのリアカメラとかを使って審議してくれよ!」
「ダメだ。もう終わったことなので結果は覆らない。」
そう言ってFIAのスタッフは戻っていく。
「せっかく掴んだ優勝が…」
守谷は膝から崩れ落ちる。
優勝から一転、失格となってしまったトヨタ。
ピットは一気に通夜ムードになっていた。
その時、電話が鳴った。
そこには会長の名前があった。
「も、もしもし…」
絶対怒られる…
『大変だったな』
「え?」
まさかの心配の言葉だった。
『災難だったな。』
「はい。でも、私達は動いてないし、そんなペナルティの通告は受けていないんです!」
『わかっているよ。多分、向こうの運営サイドの差別的思想だろうね。』
『話は変わるが、残りのラスベガス、カタール、アブダビ、期待しているよ。残りの3つの大会は私も現地に行くよ。』
「か、会長、大丈夫ですよ。そ、その日本からでも…」
『現地の空気は味わっておきたいからね。じゃあ、ラスベガスで』




