第16話「代役探し」
この日の夜。
拠点に戻るのは明日のため、今日もホテルに泊まっていた。
キャロルは足早に荷物をまとめ、ホテルを後にしたそうだ。
守谷は自分の部屋でビールを飲みながら考えていた。
「キャロルを解雇してしまったが…次の代役は誰にしようか…」
彼の中で様々なドライバーが浮かんだが、どのドライバーもF1参戦に必要なスーパーライセンスの取得が難しいレーサーばかり。
「前は断られちゃったけど…アンドレッサは起用できるかな…電話してみるか」
守谷は携帯を取り出し、アンドリューに電話をかけてみる。
数回のコールの後、アンドリューの声が聞こえてきた。
『あい、アンドリューだ。』
「あ、アンドリュー、久しぶり。守谷だ」
『おぉ、守谷か。今週のF1もお疲れ』
「あぁ、ありがとう。」
『それで、どうしたんだ?俺に電話かけるなんて』
「うちのドライバーが1人クビになったのは知ってるだろ?」
『あぁ、イタリアGPのあと即決でクビが決まったやつが1人いたな。それでもしかして?』
「そのもしかしてだ。代役として君のところのアンドレッサ・サリーがほしい。難しいか?」
『あいつもあれからあいつなりに進化してF1でも大丈夫だと思うレベルだ。』
『だからアンドレッサを乗せてもいいぞ』
「本当か!」
『もう次のスペインから起用か?』
「そうなるな」
『わかった。じゃあ明後日オックスフォードのファクトリーに2人で向かうよ。』
「ありがとう。本当にありがとう。」
『礼はいいよ。俺の自慢の弟子をF1デビューさせてもらえるんだ。逆にこっちが礼を言いたいくらいだ。』
「じゃあ、明後日な。」
『あぁ。またな』
電話が切れる。
「っしゃあ、めっちゃ気になってたやつの採用が決まったぞー。楽しみだ。」
横にあったビールを手に取り、流し込む。
「っかぁ〜、うめぇわ」
3日後、オックスフォードのトヨタF1チームファクトリー。
ここの作業エリアに新しいモノコックが納入され、整備されていた。
そのモノコックに貼られているゼッケンはキャロルがつけていた9ではなく、次に乗るアンドレッサが希望した70がつけられていた。
アンドレッサはマシンに乗り込み、シートを作っていた。
「どうだ?次のスペインから君のマシンになる。」
「夢みたいだよ。ずっと憧れてきた舞台にまさか世界的メーカーのトヨタから参戦できるなんて」
アンドレッサの目はおもちゃをもらった子どものように輝いていた。
そしてシート作成が終わり、ファクトリーの事務所に戻る。
すると、部下から報告を受ける。
「守谷代表、前回のイタリアで搭載した新スペックのパワーユニットが4台すべてに搭載可能になります。」
「わかった」




