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黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
最終章 討伐
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最終話 誰かの生と誰かの死

最終話となります。皆様、ここまで読んでいただきありがとうございました!

「終わった……」


 今だ呆然と立ち尽くしていると……。


「危ない!」


 こちらに向かって大声で危ない、と言ってきた。


 目の前には手を振りかぶり、俺を殺そうとしているアルファが。だけど動けなかった。


 いや、動かなかった、が正しいのかもしれない。


「水谷」


 どこか現実ではないことに目を逸らし、だけど受け入れようとした。


 けれどいつまで経っても痛みが来なかった。


 逸らした目を戻すと、そこには一人の人間がいた。


「れい、か」


 探していた、探そうとしていた人間。


 冷夏皇が、その場で血を流し立っていた。


「どうして。どうしてお前が……」


 動揺していると冷夏の体が傾いた。


 俺はすぐに冷夏の体を受け止めた。


「冷夏?」


「なぁに。河野」


 頭から血を流す目の前の女。死に際だというのに、どこか余裕を感じた。


「お前、どうして……」


 冷夏の体には一度、俺が死んだ時のようにぽっかり穴が空いていた。


 そこからは血が流れ、すでに手遅れと感じさせる量の血だった。


「そんなの分かんないよ。ただ、河野のこと……」


「冷夏? 冷夏!!!」


 冷夏は何かを俺に伝える前に死んだ。


 だけど動いた口の形で何を伝えようとしているかは分かってしまった。


「“好き”だなんて、死ぬ前に言うなよっ」


 好きの後に繋がる言葉は、「河野こと好きだから」だろう。


「俺も、お前のこと好きだよ。皇」


 開いている目を閉じ、俺は皇を抱えた。


 周辺にいたアルファも、小香が張った結界の外にいたアルファもいつの間にか消滅していた。


「水谷君……」


「不時さん、無事でよかった。終わったな、この戦い」


「あぁ。そうだな……」


 抱えている皇を見て、何か言いたそうにしていたがやめたようだ。


「皇。夕焼けが綺麗だなぁ」


 目を瞑っているから分からないだろうけど、俺はそう皇に話した。


 日は落ちかけ、ほんの少ししか顔を出していないけれど綺麗なことに変わりはなかった。


――水谷、上


「上?」


 どこからか聞こえた声に上を見上げると……。


「不時さん、あれ」


「嘘、だろ」


 上、空には真っ赤な赤い雲が浮かんでいた。


「ミサイル、このタイミングでなんて」


「不時さん。ここにいる俺達は戦いに勝ったけど他の国には負けたようだ。もう、助かる手立てはないだろう」


 生き残った隊員も空に気づいたのか、絶望していた。


 他の国は、歴代守ってきた巫女と、倒した俺達を欺くかのようにこの国を壊すようだ。


 あの赤い雲の先にあるのは恐らくミサイル。


 少しでここに、この日本に落ちるだろう。


 ミサイルの種類が何であっても、落ちれば終了。


 俺達の命は、長いようで短かった。


プルルルル


「もしもし」


「水谷。終わったんだな」


「あぁ。終わったよ」


 安堵の声をしている衣月。ごめんな。


「だけどこっちは全滅するだろう」


「え?」


「空を見てみろよ。ミサイルがこっち目掛けて飛んでる」


「嘘だろ……」


「衣月は春と一緒に結界の中にいろ。アルファがいなくなった今、日本を囲っていた結界は消え、ミサイルは確実に落ちる。最後の絶望が人によってなんて、皮肉だよな」


「今から逃げることはできない、のか」


「残念ながら。皇は俺を庇って死んじまったし、春は衣月に任せればきっと大丈夫。俺の役目は終わりだ」


「まてよ、諦めんなよ水谷!!」


「しゃぁねぇだろ。こればっかりは」


 もう時間もねぇんだ。


「最期に話ができてよかった。春には、『お姉ちゃんを守れなくてごめん』って伝えてくれ」


「待てって、水谷っ!」


「ありがとよ」


 ブチっと電話を切った。


「俺、途中で電話切るの得意かも」


 来世での得意分野は電話と途中で切ること、にしよう。


「河野君」


「っ」


 生き残ってる隊員で輪を作り、手を繋いでいた。


 不時さんと富士宮さんの間が空いており、そこに俺が入るのだろう。


「皇。ごめんな」


 俺は地面に皇を寝かせ、空いている所へ走り手を繋いだ。


「皆、お疲れ様。ご苦労だったな」


 先ほどみたいに絶望している人は一人もいなかった。


 皆、幸福感と達成感で満たされていた。


「ありがとう。そして、さらばだな」


 ウゥーン、といつかの場所で聞いた警報音が鳴った。


 黄昏時、俺は生きた。

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