第五十九話 討伐の瞬間
「草壁っ」
上がった炎を見て、涙を流す不時さん。
長年仕事をサポートしてもらった秘書であり、同僚。亡くすのは辛いだろう。
だけど今は悲しんでいる場合ではない。死をかけ、草壁さんが打破してくれたこの状況を生かすため。この状況をこちら側が有利にするために立ち回らないといけない。
悠長な時間はない。急がないと。
「小香」
「あぁ」
今だ動けそうにない不時さんをその場に置きざり、俺達は燃えている女王へ向かい走る。
「どうだ?」
「良いと思う。この炎が女王の体を抉り、聖生が見えればこちらの勝利だ」
「そうか」
バンバン、と女王目掛け放たれる弾。その弾は逸れることなく女王へ命中する。
「ふんっ」
結界を出し、上級アルファの頭を破壊する小香。
その姿から男さながらの強さを見せ付けられる。俺も負けていられない。
「っ」
バンバン、と弾が発射される音。何かが崩れる音。破壊する音、される音。
様々な音が響き渡り、この状況の深刻さや残酷さを表していた。
「キャーーーーーーーーーー!!」
「っ」
動かなかった女王が叫ぶと同時に青い光が消えた。
「まずいっ」
交信がなくなった。つまり、今いる上級アルファよりも更に強い上級アルファが来る。
――ドシドシ
地響きがする。こちらに向かってきている。
「っくそ! 打開する策はねぇのかよ」
考えろ、考えろ。
―考えるな、やめておけ
「黙れ」
―どうせ死ぬのだ。全て無意味
「うるさい。無駄なんかない」
操作しようとする声と操作させない、と操作を阻止しようとする俺。
見えない攻防はすぐに起こった。
すると、赤い瞳とは別に赤い塊が見えるようになった。
「何だ、あれ」
もしかして、あれが聖生?
だとすると、小香に教え……。
―駄目だ。そうはさせない
「黙れ。黙れよっ!」
操作しようとする声が俺の思考を邪魔してくる。
退け、来るな、黙れ。
「消えろ」
すると前に操作がなくなったようにバチ、と何かが弾けた。
「小香!」
「どうした?」
「ど真ん中から少し右にずれた場所に聖生がある」
「それは本当か?」
「本当だ。見つけた際に俺の思考を操作しようとする声が強くなった。確実だろう」
「分かった」
小香が手を上げたと思ったら大きな結界ができた。
「うおぉぉぉぉぉ!」
「これで交信していた上級アルファは入ってこれないはずだ。我が死んで、女王が消滅してからも安全のはずだ」
「小香……」
何から何まで、申し訳ない。
「では達者でな。今までありがとう、河野殿」
「こちらこそ、ありがとうな。小香」
彼女はこちらに柔らかな笑みを残し、女王の方へ向かって歩いてゆく。
俺はそこに近づこうとするアルファと全力で戦った。
長い爪が頬を掠った、体を掠った。
少し大きな石が体にぶつかる。それでも俺は諦めない。
諦める理由がない。仲間が頑張ってる、それに死んだ仲間のためにも。
俺達は絶対に女王に、アルファに勝たなければいけない。
「ぐっ」
別のアルファに背後を取られ、捕まれた瞬間……。
「河野くん」
バン、と音がし、俺を捕んでいたアルファが倒れた。
「富士宮さん……」
「河野くん、大丈夫?」
「あぁ」
「よかった。さ、一緒に戦おう」
「おう」
富士宮さんと背中合わせでアルファと戦う。
爪が掠ろうと、石がぶつかろうと。決してめげなかった。
今は背中を守ってくれる富士宮さんがいるから。
地に膝をつけられない。お互いに背中を守りあうんだ。
「キャーーーーーーーーー!」
女王の叫び声が聞こえ、そちらに目を向けると小香が女王の正面に立っていた。
「小香……」
近くも遠くもない、絶妙な距離。
それでも聞こえた。
「ありがとう」
という言葉。
すると小香がぼそぼそっと何か呟くと、淡いピンクの光が出、小香は俺が教えた場所へ飛び込んだ。
「キャーーーーーーー」
再び女王が叫び、女王の体がどんどん消えていった。
「終わった、のか?」
富士宮さんが言葉を出した。それまで俺は呆然と立ち尽くしていた。
「どこか呆気ないように感じるけど、全然呆気なくないよね。これだけ仲間が死んだんだから……」
周りには今だ、消滅していないアルファがいる。
けれどそんなに気にならなかった。
むしろ、これで終わりなのか不安に思うばかりだった。
呆気ない終わり方不信感に思ってしまう方は多いと思いますが、アルファは死にました。
消滅しました。
皆さん、アルファ討伐の瞬間は想像通りでしたか?
ぜひ、感想など聞いてみたいです!




