第四十三話 これからの俺の行動
「はぁ」
溜息ばかり漏れる。正直言うと俺も状況の飲み込みは上手くいってるけど完全に理解できたわけじゃない。
今でも透けて見える動かないアルファ。凄く遠くに大きくて王冠を被っているアルファも見える。
「気持ち休まらねぇな」
いつ見ても、どこを見てもアルファ、アルファ。
それに色々な所から話し声だって聞こえる。
折角星空を見に来たのにゆっくりすることもできない。
「うわ、空が曇りだした」
少しずつ雲が綺麗な星を覆い始めていた。これじゃ、雨が降りそうだ。
プルルルル
静寂の空間に異様な音が鳴り響いた。不時さんからだ。
「もしもし」
「河野君か? 今から作戦会議をするのだが来れそうか?」
「あー」
「強制ではない。寝ている奴もいるからこの作戦会議は任意だ」
「ならすいません。外で色々整理中だから欠席で」
「分かったよ」
俺は電話を切った。すると静寂な空間に戻る。
「せめて、せめて俺が見たくない時は見えなかったらいいのにな」
俺の視界にいつまでも鎮座し続けているアルファ。
しつこく俺の思考にまですがり付いてくる。
「俺、これからどうすればいいんだろ」
何を信じて、何を疑って。
「仕組まれてるだろ、絶対にこれ」
俺がこう考えることも、こうなることも全部全部。仕組まれてると思うしか解決法がない気がしてきた。
永遠にこのことについて考えてしまう。
「衣月や冷夏、春に会いたいな」
俺の死についての悲しみを与え、今生き返ったことを隠しているくせに何を言う。
会ったら相談も何もしなくて、死んでいった俺を怒って、また悲しませるだけだ。それだけはごめんだ。
何かを犠牲にして、何かを得ないといけない。
「いずれ、話したいな」
そのいずれがいつ来るか分からない。
いずれが来る前に俺がまた死ぬかもしれねぇし、考えたくはないけどアイツ等が死ぬ可能性だってないわけじゃない。
「そうだ、時雨。時雨を探せば」
いや、小香に時雨のことは一旦忘れろって言われたばかりだった。
「俺は時雨と同じ混合者。アルファに喰らわれれば終わり」
何になったとしても最後に辿り着く場所は同じ。
「この命、絶対に無駄にしない」
これだけは守らないと。約束したわけじゃない、だけどこれだけは絶対。
戻してくれた命、一人の命を犠牲にして生き返った命。
これを無駄にするのは何よりも駄目なこと。
「この世は、命より大切なものってねぇんだな」
生きてさえいればなんとかなる。
どこかで聞いたことのある言葉は本当だった。事実だった。
「天才かぁ。俺って何なんだろ、今この世で一番不安定な人かも」
日本を抜けたどこかの国では笑いあってる人がいて、幸せな人がいて。
俺達はその人を羨ましく思ったり、戻りたいと思ったりする。
それは幸福を求める人間の当たり前な心理であって、それが普通だと思う。
誰だって不幸せよりは幸せな道へ進みたい。まあ、俺は違うかったけどな。
「幸せって、なんだろ」
ここにきて、幸せとは何かという哲学にまで思考がたどり着いた。
もしかしたらこの思考さえアルファに操作されているかもしれない、と思うと恐怖心が芽生える。
怖い、怖い、怖い。苦しい、おかしくなる、頭が痛い。
様々な感情が入り混じって、心すら狂いそうになる。
「落ち着け、落ち着け。俺は香月、何にもならなくて冷静な小香の兄だ」
自分が今、何をすべきで何者であるか、再確認する。
「ふぅ、大丈夫、大丈夫」
そうやって自分に暗示をかける。
「水谷くん?」
「はぇ?」
目を開けると生見さんが視界いっぱいに広がった。
「おぉ……」
「ここで寝てると風邪引くよ? 悩み事?」
「まあ、色々」
「そっか」
「生見さんはどうしてここに?」
「僕も星空を見ようと思ってね。だけど寝てしまってもうこんな時間」
「今、何時?」
「三時だよ」
「あー」
結構ここで寝てしまっていた。
「水谷くん」
「何だ?」
「水谷くんはさ、どうしてその生き返れたの?」
「……さぁな、俺にもよく分からない。最期は予想通りに死んだし、そこそこ楽しい思いはしてたから後悔はなかった。それだけ言っとく」
これは紛れもない事実。多少の後悔っていうか、心残りがあったけどな。
「そっかぁ」
――運良く、俺も生き返られるといいなぁ~
「……」
「どうかした?」
「生見さんは、奥さんの生死が気になるか」
「勿論だよ。誓い合った大切な奥さんだったし、愛してるからね」
「ふーん」
「急にどうしたの?」
「いや、俺がどうやって生き返ったかって聞いたってことは奥さんのことかその他のことで心残り、引っかかってることがあるのかもしれないなって思って。案の定、奥さんのことだったけど」
「妻には本当に申し訳ないと思ってるからね」
――アイツのことなんてどうでもいい。ただの使い駒だ。
「はぁ」
生見さんの心の中が鮮明に聞こえる。
これから先どう接すればいいのか、どういった話の話題をすればいいのか分からない。
優しい、奥さん想いだと思っていた人が心の内ではどうでもいいって思ってたなんて誰も想像しない。
生見さん、どうしてそうなったんだ。最初からそうだったのか?
「水谷くんは、これからどうするの?」
「それをここで考えてたけど今決まった」
「何?」
「さあ、なんだろうな? 生見さんにはいずれ教えるよ。冷夏達に俺が生き返ったことを伝える時に」
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