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黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
第三章 感情
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第四十二話 裏切り者の可能性

「つい先日、京都へ逃げる部隊から到着したとの連絡が入った。誰もどこも負傷したいないとのことだ」


「良かった。志春は俺のために命を使ってくれたからこの世界には存在しない。これで春を狙うのはアルファだけだ」


「そうだな、河野殿が言っていた時雨のことについては今だ進展はない。もしかしたらもう過去か未来に戻った可能性の方があるし時雨は喰われれば脅威になるが混合者なら何か手があるはずだし我らに害はない。だから時雨のことは一旦忘れよう」


「分かった。そういえば、あっちはどうやって隠れてるんだ?」


「我らの本拠地は地下にある一部を改造し、そこに結界や目くらましの札を張り今まで隠れていた。あの結界は我が普段使う結界よりはるかに強く、誰でも出入りできるものだから非常に便利だ。春に関しては何があってもその結界から出さないように冷夏殿に言いつけてあるから大丈夫だろう」


「改造って……まあいい。安全そうで良かった」


「次にこちらの戦況だが河野殿が死ぬ前とさほど変わっていない。下見作戦のことだが、汝のおかげであれ以降の死人は出ていない。今は次の作戦を立てている所だ」


「なあ、俺が死んだことはさ、冷夏や衣月には伝わってるのか?」


「あぁ、一番に伝えたよ。河野殿が生前つけていたカメラが録画してあったからその録画を冷夏殿に送っている。だから河野殿が生きているとは誰も思っていない」


「当たり前だよな、仲間のアイツ等に伝わってないわけない。そういえば生見さんには?」


 すっかり生見さんのことを忘れていた。


「彼には不時殿から今伝わっているだろう。ほら、来た」


「水谷くん!」


 とてつもない音で扉が開かれ、生見さんの顔が見えた。


「お、おう……」


「生きていて良かった!」


「そうだな。生見さんにも心配かけた」


「うん、凄く心配したよ」


――はあ? 俺がお前の心配なんてするはずないだろ


「え」


「どうかしたのかい?」


 どこからか、声が聞こえた。それもはっきりと。


 俺がお前の心配するはずない、話の内容からして生見さんが言った可能性が一番高い。


 だけど、生見さんがそんなこと言うか?


「生見殿。少し席を外してくれるか? 二人で話をしたい」


「え? 分かったよ」


 生見さんは言われた通り部屋を出て行った。


「結界? どうしたんだよ、小香」


 俺達の周りには結界が張られた。何か聞かれたくないことがあるってことだ。


「河野殿の生き返り方は例外だが、汝はアルファの血を継ぐ混合者になった。違うか?」


「状況的にはそうだろうな」


「混合者になったことで汝は力を得た。これも違うか?」


「……」


「図星だな。何が違う、何が見える」


「最初に生き返った時から建物が透けて、アルファがどこにいるか見えるんだ。それとさっき、生見さんのような声が聞こえた。本人は口を開いてないから何かは分からない」


「そうか、二つの能力の開花。こちら側の状況が変わりそうだが、更に変わりそうなこともある」


「それって」


「河野殿も気づいただろう。生見殿のことだ」


「ということは、あの声は、生見さんの心の声ってことか?」


「だろうな、巫女と同じような能力だ。今の河野殿は巫女である以前に一人の人間として我よりも優秀だ。能力を隠し、できるだけ情報を渡すな、いいな?」


「分かった。俺は、お前のことを信じていいんだな」


「信じてもらえると助かる」


――我は絶対に汝の味方だ


「分かった。小香はこの部隊で俺が一番信頼してる人だ」


「あぁ、河野殿も我が一番信頼する人だ。お互い心の声が筒抜けだし隠し事はできないだろう」


「そうだな」


「何か他に話したいことはあるか?」


「俺は小香に目を隠すとアルファに認識されないことを話したか?」


「話してないが我は知っている」


「そうか、このこと皆に話すか?」


「いや、話さない方がいいだろう。河野殿の口から話して知っている者は誰だ?」


「衣月、生見さん、春の三人だ」


「また生見殿か。アルファに認識されないことを知っているなら昼間に行動していた可能性がある」


「あまり疑いたくないけど、生見さんは敵、なのか?」


「祖先はアルファを倒す時、あと少しで倒せそうだったのに裏切り者が出て形勢逆転された。今回の対アルファ戦で出る裏切り者が生見殿ではない可能性は極めて低い。あの心の声を聞くと裏表もありそうだし、今の段階では信用しきれない」


「そうか。俺も生見さんには注意する。でも春は生見さんに凄い懐いてたぞ?」


「裏切り者と言っても人であることに変わりはない。もし春を差し出すとしたら春と親しくてもおかしくはないだろう?」


「たしかに」


「これからの行動にはお互い注意しよう、いいな?」


「あぁ」


 俺はフードを被った。


「どこか行くのか?」


「少し、一人で考えたい。もう黄昏時は過ぎて日は落ちてるだろうから外で星でも見ながら整理してくるよ」


「分かった」


 俺は上へあがり、かつて衣月や春、生見さんと一緒に見た星空を見上げた。


「あーあ、どうするべきなんだろうな」


 今までの仲間を疑いたくないけれど、生見さんのあの声を聞いたら疑いしかない。


 今まで俺達に自分のことを話したのは置いていってしまった奥さんのことのみ。


 それに思い出せば、火事になった屋敷から助けようとした時と一人称や口調が違う。


 あの時からすでに、裏切っていた可能性だってある。


「人ってこえぇな」


 俺も人のこと言えないけどな。

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