表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
第二章 作戦
38/65

第三十七話 さようなら、愛しき人

「俺、首都に戻る」


 動画を見終えた鏡くんは泣きながら立ち上がった。


 私は黙って首都に行こうとする鏡くんの腕を掴んだ。


「何だよ、冷夏ちゃんだって分かるだろ!? 頼む、行かせてくれ」


「駄目よ。お願い」


「嫌だよ」


 強い力で私の手を離そうとしてくるけれど私は離さなかった。


 自分の腕を掴まれようと、頬を抓られようと。


 絶対に、離さなかった。


「思い出して鏡くん。どうして鏡くんがこっちの部隊にいるのか。どうして、あっちに残らなかったのか」


「!」


「これは河野の最後の意思よ。その意思を親友である貴方が裏切ってどうするの?」


「っ」


「ここには鏡くんの役目がある。勿論私にも。あっちには私達の役目がない。だから、行かないで」


 何も言わず、ぼろぼろと涙を流す鏡くん。


 鏡くんの姿は“あの時”の河野に凄く似ていた。


 動かなくなった体。私はそっと腕を離した。


「私もまだ、頭と体、それと心の行動が一致してないの。でもね、これだけはハッキリ分かる」


 きっと、鏡くんも同じ気持ちのはず。


「“いつか必ず、河野の仇を取る”。同じ気持ちでしょ?」


「あぁ。勿論っ」


 涙を拭い、キリっとした顔でこちらを向いた。


 その瞳の奥には炎が上がっていた。


「俺は俺にしかできない役目を果たし、アルファも倒す。水谷の仇を取るまで絶対に死なない。いや、死ねない」


「うん」


「春ちゃんを守って、この国を復活させる。水谷はきっとどこからか見ててくれるだろうよ」


「そうね」


「行こう冷夏ちゃん」


「うん。仲間の死を乗り越えてこそ、私達は強くなる」


 でも、まだ受け入れられていない。


 けれど乗り越えないといけないの。


 ねぇ、神様。


 アイツを連れて行くのちょっと早かったんじゃないの?


「ばいばい、河野。またいつか会おうね」


 この世での「またね」はもう叶わない。


 河野は私達と分かれる時に「またね」って言わなかった。それはこういうことを想定してたからなんだ。


「いつか」


 いつか、どこかで会えることを私は信じてる。


 だから前へ進むの。


 今はまだ厳しくても、必ず乗り越えるよ。


 貴方が私の背中を押してくれることを願って。


 いつかまた会えた時、貴方の死を乗り越えたはずの私を褒めてね。


「愛してたよ」


 私と出会ってくれてありがとう。妹のことを誰よりも想っていてくれてありがとう。


 一年弱、私の友人として助けてくれて、支えてくれてありがとう。


 さようなら、愛しき人よ。


 私はいつまでも、貴方のことを想っています。



「冷夏ちゃん、行こう」


「うん」


 再度言われた言葉に私は強く頷き、差し出された手をしっかり握った。


 その手は河野を思い出させる、優しく暖かい手だった。















「あー! 死んじゃった。“最初から始めないと”」


 小さく笑う子供の声。


 手にはゲーム機が握られていた。


「お、“水谷”死んじまったのか?」


「そうなんだって! 選択間違えてさー」


「お、なら俺の所に来て俺の“セーブポイント”から始めるか?」


「え、いいの!?」


「いいぜ。あそこまで行くの、結構退屈だからなー」


「やった! ありがと! “衣月”」


 “水谷”と呼ばれた少年はゲーム機を起動させ、“衣月”と呼ばれた少年と一緒にゲームを始めた。

評価や感想、ぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ