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黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
第二章 作戦
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第三十話 最後の巫女

「あ、河野!」


「冷夏。無事にこっちにこれてよかったよ」


「うん。そうだね」


 日付を回った辺りで冷夏とフードを被っている人が富士宮さんと一緒に本部へ到着した。


「春は?」


「下にいるよ。冷夏と後ろにいる連れの人は先に不時さんと会って、ここの鍵をもらってくれ」


 俺は冷夏に鍵を見せた。


「分かった。春に着いたって伝えておいてくれる?」


「分かってる。きっと喜ぶよ」


「うん」


 俺は冷夏達を見送り、部屋へ戻った。


「あ、水谷!」


「お兄ちゃん、お姉ちゃん着たの!?」


「そうだ。今は偉い人と話してるけどすぐにこっちに来るぞ」


「わーい!」


「よかったね。春ちゃん」


 喜んでいる春の頭を優しく撫でる生見さんと、その隣でこれまた嬉しそうに笑っている衣月。


 この幸せな空間が、時間がいつまで続いたらいいな……なんて思わずにはいられなかった。


「そういえば、冷夏ちゃんの連れの人どんな人だった?」


「フード被ってて、顔は見えなかった。体格的には女っぽかったけど」


「ふーん。その人、何か気になるね」


「そうか? 冷夏が連れてくるなら大丈夫だろ」


「水谷ってばー! 冷夏ちゃんへの信頼厚すぎ!」


「当たり前だろ」


「ひゅーひゅー」


 アルファ出現前、冷水コンビとからかわれている最中の冷やかしの視線を思い出す。


 からかってるような口ぶりにニヤっと吊り上げられた口元。


 あの光景に今の衣月が重なって、少し苦しくなった。





「お姉ちゃん!」


 扉が開くと手燭を持っている冷夏の姿が見えた。


 すると春は一直線に冷夏の方へ駆け寄った。


「春……」


 蝋燭を吹き消し、春を抱きしめた冷夏。


 こちらから見える表情は酷く、安心しているようだった。


「汝が河野水谷か」


「は?」


 二人を見ているとフードを被った冷夏の連れが人知れずこちらに歩み寄っていた。


「もう一度問う。汝が河野水谷か」


「そうだけど、何の用だ」


 クエスチョンマークがない所を見ると、俺のことを知っているようだ。


 恐らく、冷夏から聞いたんだろうな。


「我が名は小香(しょうこう)。春の護衛に来た」


「春の……」


 昨日あった志春のこともあり、疑いが強くなる。


 今、このタイミングで“春を殺したい者”と“春を守りたい者”がほぼ同タイミングで出てきた。


 逆に疑う要素しかないだろ。


「疑うのは分かるよ。だけどこの子は大丈夫だと思う」


 春を抱きしめたまま、こちらへ歩み寄ってくる冷夏。


「言い切れる理由は?」


「巫女だから」


「巫女だと?」


 これもつい昨日聞いた単語だ。


「何? 河野知ってるの?」


「昨日聞いた単語だ」


「え? 昨日?」


「お前、顔見せれるか?」


「……良かろう」


 目の前の巫女と名乗る奴はそっとフードを脱いだ。


 すると白い髪が姿を現した。


「! やっぱり……」


 その容姿は昨日会った、女王の器で巫女の志春と同じだった。


 白い髪に薄い翠の瞳。志春と違うのは羽がないだけで双子ような容姿をしている。


「やっぱりって何?」


「俺は昨日、そこのお前とほぼ同じ容姿の奴を見かけた。名は志春」


「え!?」


「お前と違うのは羽がないだけ。顔はフェイスベールで半分隠れてたけど分かる。同じだ」


「汝が会った志春は我らの祖先だろう。この世にいることは予想外だった」


「春を。女王の器だと言う春という少女を見つけ次第殺すそうだ。お前とは真逆の考えを俺に示している」


「たしかに。女王の器となる春を殺せば新たな女王ができず、アルファが全滅する。だが、今は殺すより守る方がリスクが低い」


「それはどういうことだ?」


「少し待て」


 すると女は手を振りかぶった。すると緑色の四角い何かが突然現れた。


「これで良い。皆、この中に入ってくれ」


「ど、どういうこと?」


 横で生見さんが動揺していた。


「話は後だ。これのことを聞きたいならばこの中に入れ」


「仕方ねぇな」


 俺は一番に四角い何かの中に入った。


「大丈夫そうだな。ほら、入って来い」


「ういー」


 衣月に引き続き、皆中に入ってきた。


「説明を続けよう。これは“結界”と言う」


「結界って?」


「我ら巫女の一族が使う特殊な術のことだ。結界の種類にもよるが中に入ると外からは中の会話が聞こえなくなる」


「なるほどな。その結界ってのは志春も言っていた。だが、結界は完全な術じゃないだろ?」


「それは祖先が生きていた時代の話だ。我らは研究を重ね、術者が死んでも結界を残せように印を結びなおした。今なら人なら通れる結界なども作られている。だから仮に春を結界で覆った後に我が死んでも結界が消えることはない、と言うことだ」


「なるほどな」


「はい! 質問いいですかー?」


「何だ」


 今まで口を閉じていた衣月が質問をしてきた。


「日本に張ってある結界ってどうして残ってるの? その結界が張られた時ってまだ印が結びなおされてない時でしょ?」


「それは分からない。あの結界が一度発動すると破壊することも通り抜けることもできなくなる。実験されている回数は前の一度のみ。今だ謎が多い」


「そっか」


「そういえなんだけど、僕達ってこの会話聞いててよかったの?」


「構わん。汝らの名は」


「そうだったね。僕は生見一哉」


「俺は鏡衣月!」


「小香だ」


「よろしくねー。ちなみになんだけど、女の子だよね?」


「そうだ。普段はフードを被り性別を告白するのは控えている。本来なら人前でフードを取るのも罰則だが今はそうこう言ってられぬ」


「あぁ。小香は不時さん……最高司令官に自分のことを打ち明けたか?」


「いや。疑われているが打ち明けるわけにはいかない。だが巫女という存在は知っているであろう」


「そうか。それなら俺が不時さんから小香への信頼を取っておこう」


「おぉ。水谷が」


「良いのか? 我のことを完全に信頼しておらぬようだが」


「構わないさ。殺すと言う奴より守ると言う奴のことを信用するしか道がねぇ。人外に勝てるのは特別な力を持つ奴に頼るほかねぇからな」


「そうか」


 俺は小香に向かって手を出した。


「改めて小香。春のことを守ってほしい」


「私からもお願い」


「あぁ。最初からそのつもりだ」


 お互いに握手を交わした。

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