第三十一話 第二回討伐作戦会議
「今回は少人数で行うことにした」
第二回、討伐作戦会議のメンバーはこうだ。
俺水谷、不時さん、衣月、冷夏、生見さん、小香の五人構成だ。
この作戦のメンバーは全員、“小香の正体と隠している力のことを知っている者”のみになっている。
「改めて、我と受け入れてくれて感謝する。不時殿」
「巫女の存在は影ながら知っていた。だが本当に存在していて、君が最後だとは信じられないがアルファを討伐できるならどんな力でも欲したいからな」
「それについて一つ不時殿に尋ねる。何故アルファを討伐しようとする」
「理由か。ただ逃げるだけでも良いと思ったがそれは今、そしてアルファ出現時に死んでしまった、守れなかった者を侮辱することになると私は思った」
「侮辱だと?」
「知らない間ん殺され、喰らわれた。なのに知っている私達は逃げるんだ。軍人としても、生き残った生存者としても、死んでいった者達の気持ちや意思を背負って今を生きている。侮辱するようなことは絶対に避けたい」
俺がこの時初めて、不時さんの心の内を知った。
復讐のため、仇のために戦おうとしている俺とは真逆の思いだった。
誰かのために、何かのために自分さえ捧げようとしている彼の気持ちを知って俺は自分の思いが恥ずかしくなった。
人は誰だって思うことが違うのは知っている。
だけど俺は誰かの意思を背負って今を生きている、死んでいった誰かを侮辱しないために戦おうなんて思いもしなかった。
俺はこの場にいていいのか。本当に俺が生き残って正解だったのか。
気持ちが揺れる。
「河野、どうかしたの?」
「……いや、なんでもない」
冷夏はどう思っているのだろうか。
冷夏はただ、春を守りたいから戦うのか。はたまた、それ以外に理由があるのか。
表情だけじゃ分からない。何を考えていて、どう思っているかなんて他人の俺達は理解しようがない。
だけどどうしても知りたい。
お前の、今の気持ちが……。
「そうか。理由は分かったが討伐にはあまり賛成できない」
「何故だ」
「少しでも女王を刺激すると首都にいるアルファがおろか、地方にいるアルファまでこちらに寄ってくる。生存率を上げたいのであれば侮辱になってしまうが、逃げることを優先した方が良い」
「……」
沈黙した。誰一人、何も発しなかった。
予想できたことだけど、認めたくなかった。だけど事実として目の前に突きつけられた以上、認めないといけない。
ここにいる誰もがそう思っているだろう。
「なら、部隊を分けよう」
この沈黙を破って口を開いたのは不時さんだった。
「分ける? それこそリスクを生むぞ」
「たしかにそうだ。だが討伐できる確率も捨てたくはない。ここで捨てれば生きているはずの四人の仲間の命を無駄にする」
「そうか。それなら我はここに残ろう」
「いい、のか?」
「祖先が春を狙っているのであればここにいるべきではないが、討伐できる可能性もあげてやりたい。だから我は汝の作戦に協力し、できるだけの力を注ごう」
「ありがとう。とても助かる」
「……俺もここに残る」
「え。河野?」
「僕も」
俺の次に発言したのは意外にも生見さんだった。
「なら、首都から退くのは冷夏、春、衣月、それと不時さんが決めた隊員だ」
「は。俺もここに残るぞ!?」
予想通り、衣月は反対してきた。
「駄目だ。衣月は俺以上に身体能力が高い。だからもし、志春が追ってきたとしても時間を稼いでくれるはずだ。衣月はここに残るより春達に着いていく方が良い。ここにお前の役割はない」
「それは……」
「それに春はまだ小学生だ。人並みに人見知りだってするだろう。顔を知っていて仲が良い衣月が一緒の方が絶対にいいに決まってる」
「それなら、水谷や生見さんの方が!」
「そうよ。河野だって、春にとってはかけがえのない人に代わりはないんだよ?」
「それでも俺はここに残る。アルファを倒したいんだ」
「……分かった」
「そんな、河野……!」
「だが生きて再会するのが条件な。生見さんもだぞ!!」
「ふふ。分かった」
「約束しきれない条件だな!」
「お前ならそういうと思ってたわ!」
二人して、ゲラゲラと笑ってしまった。
「さて。隊員分けは不時さんに任せる」
「勿論そのつもりだ。攻守で分けよう」
「頼む」
「汝よ。我と一緒にいたあの場所は分かるか?」
「なんとなく。あの神秘的な場所でしょ?」
「あそこは我ら巫女の本拠地だ。強力な結界が張ってある。安全な場所となるだろう」
「小香も、残るつもりなんだね……」
「あぁ。春のことは汝に任せる」
「分かった……」
こうして、第二回討伐作戦会議が終了した。
「あ、お兄ちゃん!」
「起きてたんだな。おはよう」
「おはよう!」
春の顔を見られるのはあと少し。
一ヶ月もないぐらいの関わりだったけど、別れるのが名残惜しい。
「お兄ちゃん?」
「なんでもない」
俺は寝癖がついている春の髪を梳き、そっと撫でた。
「えへへ! 私、お兄ちゃんに撫でられるの好き!」
「そうか」
心の奥底が暖かくなる。癒しって、やっぱり必要だよな。
「ほら、お姉ちゃんと話して来い」
「うん!」
俺は冷夏と入れ替わりになるように、部屋を出た。




