第二十七話 下見作戦、開始
「作戦内容を説明する」
ボードを指すのは今作戦の隊長。
「ここにある基地から対空砲を運ぶルートに支障がないか、他のルートが良いか下見に行くのが主な作戦内容だ」
「質問です」
「何か」
「一般人を隊へ入れてもいいのですか? 訓練もしていないただの男子高校生が……」
「まあ、最高司令官からの命令だ。逆らうことはここでの立場を失うことになりかねないからな」
「……了解しました」
「俺達は特攻隊だ! どんな作戦でも必ず遂行するぞ!」
「「了解!」」
「特攻隊、か」
「特攻隊って何ですか?」
「その名の通り、決死覚悟で作戦に挑む隊のこと。一番死亡率が高い、いや。死者が出る隊のことだ」
「なるほど」
「うわぁああ!! 死にたくないー!」
「抑えろ、佐藤! ここまで生きてこれただけでも十分なんだ。死んでいった仲間のことを思い出せ!」
「っ」
「太陽が昇る前に帰ってくればいい。首都の地下水路の場所は? マンホールの位置は?」
「え」
「俺達は地下水路やマンホールを駆使し、隠れながらここまでやってきた。アルファから隠れる方法なんて考えればいくらもである。そんな簡単に諦めんな!」
「マンホールの中に隠れるなんて……」
「最初はそう思うだろうな。だが命には代えられない。最悪の手段として、覚えておいた方が良いぞ」
「分かりました……」
「それでは、作戦決行は二日後。解散!」
「河野、到着」
『了解』
作戦位置に到着し、無線機で隊長に報告する。
『鏡、到着』
『了解』
次々に作戦位置へ到着していく。
『部隊、前進』
隊長から次の指示が出たので、俺達は基地の方角へ向かっ前進する。
『結城、一体目確認』
『佐渡、一体目確認』
「河野、一体目確認」
アルファが見つかるのが早い。
やはり首都はアルファの数が多い。
少し歩いただけでどんどんアルファが見つかっていく。
だが、一体目のみ報告なので報告はしなかった。
――ザーザー。
少し不自然なノイズ。
だがそのノイズはすぐに消えた。
『こちら結城。アルファとは違う影を発見』
結城さんからの報告の声が聞こえた。
『詳細を報告せよ』
『人型? 三メートルよりも小さいと思います! 距離を詰めます』
『慎重に行け』
『了解』
無線を聞きながら走る。
結城さんのみ、その発見した影の方へ行くため方向転換したようだ。
『結城。現状を報告せよ』
少しすると現状報告を求める隊長の声が聞こえた。
だけどその声に応答する結城さんの声は聞こえない。
『結城。おい、結城!』
『ザーザー』
先ほどと同じようなノイズ音がする。
結城さんとの連絡が途切れたようだ。
『河野。結城がいる方角の様子を見れるか?』
「河野了解。建物の上から確認します」
結城さんがいる所から一番近い俺に様子確認を求められた。
俺は周囲の中で一番高いビルを登り、上から様子を見た。
「アルファは見えますが結城さんが発見した人型のアルファと結城さんの姿は確認できません」
『了解。次、鏡』
『鏡、了解!』
順々に様子を見るようだ。
俺の次に結城さんに近い衣月が呼ばれた。
『え!?』
『どうした!』
『結城さんから報告を得ていた人型のアルファが青く光ってる……』
『何!?』
青く光る?
それは時雨から聞いた交信のことか?
いや、あれは黄昏時、十八時にしか起こらないはずだ。
なら何だ?
『総員、建物の影に隠れろ!』
「了解」
俺は降りるのをやめ、窓が近くにある場所へ移動し隠れた。
「あれか」
たしかに青く光っているのがビルとビルの隙間から見えた。
人型にしては容姿がおかしい。
羽のようなものが生えているように見える。
『点呼!』
『1』
『2』
『4』
「5」
『やはり……』
結城さんからの応答がなかった。
『どうするべきか……」
『一旦引くのはどうですか?』
『いや、ここからでは引くのも時間がかかる。とりあえず本部に連絡を取る。総員、待機』
『了解!』
作戦変更か? いや、このまま実行すべきだ。
できるだけ謎を解明しておきたい。
俺はライフルについているスコープを覗き込んだ。一応つけておいたスコープがここで役に立つとはな。
「見えねぇな」
青い光も次第になくなり、あの謎のアルファは消えた。
「気分悪い……」
普段見慣れない、拡大された世界。
少し酔ったし、これ以上酔うのは流石にマズイので俺はスコープを覗くのをやめた。
「はぁ」
鞄から水を取り出し飲む。
パサパサしていた口内に染み込む水が美味しい。
――ブーブー
「ん?」
鞄に入れていた携帯が震えている。
「冷夏か。こりゃ、どうすべきか」
作戦中は無線機以外での連絡は禁止だ。
普段だと携帯を持ち歩くのさえも駄目らしいが今回は特別に認められている。
「仕方ないな」
俺は電話に出ることにした。
「もしもし」
「河野? そろそろ首都圏に入るよ」
「それは良かった。気をつけろよ」
「うん」
――バーン
少し遠くから銃声が聞こえた。
初めて聞く銃声はとても重く、長いこと聞いていたい音ではなかった。
「ねぇ、何してるの?」
運悪く、冷夏にもその銃声が聞こえてしまったようだ。
「こっちに着けば分かる。それと人型アルファらしき物体が発見されてる」
「え。人型?」
「よく分からない。だからこっちに来る際は気をつけろよ」
「分かった。春は何してるの?」
「寝てるはずだ。傍には生見さんがいるから大丈夫だ。富士宮さんと連絡を取って、生存者がいる建物の地下に移動してくれ」
「分かった。何してるか分からないけど河野も気をつけてよ」
「了解した」
俺は電話を切り、携帯を鞄の中へ戻した。
『誰が撃った』
『佐渡です』
『状況の説明を』
『こちらの方角より、動く影を発見。スコープを覗き見た所、羽が生えており人間ではありませんでした!』
羽が生えている。
俺がビルの隙間から見たアイツで間違いないだろう。
『そうか。恐らくだが結城はそれに殺されたのだろう』
『はい。相手に位置がバレているので移動します』
『あぁ。慎重に』
『佐渡、了解』
雲行きが怪しくなってきた。
この作戦はどうなるんだ?




