第十八話 合流
「誰だ」
「俺! 俺! 衣月だって!」
「なんだよ、驚かせんなよ……」
俺は扉を開けた。
「久しぶり、水谷」
「おう。久しぶり、衣月」
扉の先には久しぶりに見る同級生、親友の姿があった。
「とりあえず中に入れ。そろそろ日が昇るだろ」
「ういー」
衣月が中に入り、俺は扉を閉めた。
「この子が冷夏ちゃんの妹?」
「は、初めまして! 冷夏春、です……」
「可愛い! 鏡衣月です。よろしくね? 春ちゃん!」
「うん。よろしくね!」
コミュニケーション能力が高い衣月は少し話すと春とは仲良しになっていた。
「初めまして、衣月くん。生見一哉です」
「待って、予想より若かった……」
「たしかに、声だけだとおじさんに思われがちだけどね。まだ二十代後半だよ」
「マジか。水谷気にならなかったのか?」
「全然」
「ははっ。変わらねぇ」
「衣月。上の、地上の様子はどうだった?」
「あー」
顔を歪ませている。俺達が最後に見た頃よりも悪いかもしれない。
「状況はよくねぇな。建物壊れてるし、死骸がそこらじゅうに転がってるし……」
「そうか」
「っていうかさ、俺お前達以外の生きてる人会ってねぇんだけど本当に生きてるのか?」
「五百人程度は生き残ってるそうだ」
「五百!? すくねぇ……」
「正直なこと言うとその五百人も今、生きてるか分からない。どこで何をしていて、どう逃げてるかさえもな」
「嘘だろ……」
最初はその反応が正しいよな。
「俺達はもう、どうにもならねぇのかな」
「衣月……」
「生きならが死ぬのを待つなんて俺嫌だよ!」
「それは僕もだよ」
「誰だってそうだろう。何もせずに、死を待っているのが一番惨めな死に方だな」
「そうだよな。だけど……」
「まだ希望はある」
「は?」
「生見さんには話したけど、今日仮面をした男に出会ったんだ」
「仮面の男? 聞くからに怪しそうだな」
「その男の名は時雨。俺達以上にアルファのことを知っているアルファの血を継ぐ人間だ」
「「は?」」
「それ、僕聞いてないよ!?」
「いや、どういうことだよ!?」
二人とも混乱していた。
そういえば生見さんにはアルファに認識されないことしか話してなかったな。
「俺も最初はそうなった。ゆっくり理解してくれ」
「いやいい。最後に全部理解する」
「分かった。生見さんは?」
「僕もそれでいいよ」
俺は時雨からもらった情報を衣月と生見さんに伝えた。
「そうか。女王を倒せば共倒れ……」
「なんか、頭がパンクしそうだね……」
「俺、すでにしてる……」
二人とも情報量が多かったのかぐったりしていた。
その隣で理解できていない春がキョトンとした顔でこちら向いていたので頭を撫でた。
「そういえば、冷夏ちゃんは?」
「皇ちゃんとは水谷くんと合流する前に別れたよ」
「そうか。それで? 作戦はどうするんだ?」
「話かあ推測するに、女王の聖生を潰せなければ俺達は全滅。逆に潰せればあちらが全滅。それなら大勢で攻めるのではなく一人ずつ情報を得られるように行った方がよくないか?」
「たしかにそうだけど、一人では何もできないんじゃ……」
「対空砲」
「え?」
生見さんの口からぽろっと零れた対空砲と言う言葉。
「僕、曽祖父が戦争に出てたから少しだけそういうのに詳しくてね。軍に協力してもらって使用するってのhどうかな? 対空砲なら一人でもなんとかなるしね」
「協力? 軍人って死んでるんじゃ……?」
「それが軍人は結構残ってるんだ。空に飛んでいた、海に沈んでいたなどな」
「なるほどな。だけど協力してくれるとは……」
「協力しないなら己が死ぬだけだ。俺みたいな脳筋が多くてもこれぐらい分かるだろ」
「……水谷変わったな」
「え?」
「勇ましくなってる。頭脳もな」
「それは嬉しいな!」
「それで? もし協力を得られたとしても対空砲はどこから持ってくるんだ?」
「基地だよ。夜なら基地から運んでくることはできそうじゃない?」
「リスクが高くねぇか?」
「リスクが高くてもやるしかねぇ。生きるか死ぬかの戦いだ。命、かかってるんだ。多少のリスクは乗り越えないと生き残れないぞ」
「そうだよな。俺、小心者だったわ」
「そんなことねぇさ! 少ない日数でここまで来れただけ十分勇ましいさ!」
「ありがとな!」
「作戦、決まったことだし水谷くん。連絡しない?」
「あー。そうだな」
「連絡って誰に?」
「富士宮かがりさん。陸軍の軍人で俺達の連絡役みたいな人だ」
「なるほどな。だがこの作戦でいくなら時雨のことは話さないといけないことになるぞ?」
「そこは上手く誤魔化すさ! 腕も見せ所だな」
「そうだな!」
俺は腕まくりをし、電話をかけた。
「春と生見さん。無事に行けたかな……」
振り返りそうになる足を引き止めることで精一杯。
「大丈夫。きっと大丈夫」
自分を安心させる言葉しか出てこない。
「私の直感でやればいい。頭で考えるのはそのあと」
前へ、前へ。
私はただひたすら、事実を求めて前へ歩いた。
「汝」
「え?」
どこからか声がした。
「汝は守るべき存在であるか否か」
「誰、誰なの!?」
鈴のような凛とした声。
だけどどこか、気持ち悪い。
「捕らえよ」
「え」
言葉が出てこなかった。
奥に何かがいる。
「いや、いやぁあああぁあああ!」
何かに捕まれたと同時に意識が途切れた。




