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黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
第一章 出現
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第十七話 無事でいろよ

「はっはっ」


 隣の地下水路の入口の確認に行くことを忘れていたのに気づいたのはこちらに向かって歩いてきている生見さんと生見さんと手を繋いでいる春を見つけてからだった。


「あれ?」


「お兄ちゃん!」


「水谷くん。無事でよかった」


「あぁ。奥に大きな穴を見つけた。早くここで出よう」


「そっか……」


「そういえば、冷夏は?」


「っ」


「ど、どうした?」


 冷夏のことを聞くと生見さんは渋い顔をし、春は泣き出した。


「おね、お姉ちゃん、どっか行っちゃったのっ!」


「ちょ、待て。冷夏、お姉ちゃんはどこに行ったって?」


「あっち……」


 春が指差したのは春達が来た方向。


 つまり、俺達がこれから歩く方向と反対方向。


 元に戻っている。


「お姉ちゃんは何しに行くって言ってた?」


 生見さんが泣いている春の背中を摩り、俺はできるだけ優しい声で話しを聞いた。


「わかんないよっ!」


「僕が説明するよ。皇ちゃんは皇ちゃんにしかできないことをしにいくって言ったんだ。何をしにいくかは本人しか分からないよ」


「冷夏にしか、できないこと……」


 何だ、寒気がする。


「アイツに電話してみるよ」


「それは無駄だよ。別れてから三十分ぐらいで一回電話してみたけれど出なかった」


「繋がらないってことか。俺が行くしか……」


「やだ! お兄ちゃんまで行っちゃわないで!」


 生見さんの手を離し、俺の手をがっちり掴んだ春。


 その目からはぼろぼろ涙が零れ、少し腫れていた。


「……分かった。冷夏が帰ってくるまで一緒にいような」


「うん!」


 俺は冷夏のことを探しに行くのを断念した。


 ここで泣いている春を置いて探しに行くのは違うし、駄目な気がした。


 春もそうだけど、冷夏のことも信用していないことになる。


 無事に帰ってくる。それだけを願って。


 そうか、あの時の冷夏はこんな気持ちだったのか。


「生見さん、行こう」


「分かった」


 生見さんと俺とで春を挟むように手を繋いだ。横並びはできるだけしたくないけれど今は仕方ない。


 それに日が昇るまでにここから離れないとな。



「水谷くん。僕達はさっきまで衣月くんと電話していたんだ」


「衣月と?」


「水谷くんとも会わなかったら困ると思ったのか水谷くんがくれた衣月くんの連絡先を僕にくれてね。戻ってでもいいから合流するつもりだったんだ」


「なるほどな。たしかに、戻るのもいいかもしれねぇ」


「うん。衣月くんは走ってこっちに来てるそうだから少し戻ったら今日でギリギリ合流できるかもしれないね」


「だけど、ここからどう戻る? 入口は先にしかないし」


「んー……」


 歩きながら策を練る。


 まず衣月が今、どの辺なのかも知りたい。


「衣月くんに電話かけてみよう」


「そうだな」


 俺はスマホを取り出し、衣月に電話をかけた。



プルルルルル


「もしもし?」


「衣月、水谷だけど」


「おぉ! 生きてた!」


「どういうことだよ」


「冷夏ちゃんから危険だって聞いてたからねー。その様子だと生見さんや春ちゃんと合流した感じ?」


 はぁはぁとした息遣いと風がダイレクトに聞こえる。


「走ってるのか。なら、そのままでいいから必要な受け答えだけしてくれ」


「うし」


「俺達の近くには大きな穴が空いてて、そこからはアルファが安易に入れると思う。だから地下水路からの移動は困難だろう。早めに合流したい。今夜、いけるか?」


「……ギリギリ」


「だろうな。俺達は戻ることができないから衣月がこっちに来てもらうことしかできない。次の入口で合流だ。いいか?」


「おーけー」


「っというか、食料やら服装などの準備はできてるか?」


「大丈夫」


「ならいい。こっちも急ぐからな。頼むぞ」


「おう」


 俺は電話を切った。


「次の入口で衣月と合流する。生見さんは懐中電灯二本で照らして。俺は春を担ぐ」


「走るの?」


「そうだ。春はまだ俺達の速度にはついてこれないだろうから俺が担ぐんだ。いいか?」


「うん!」


 俺は春を抱っこした。


「ちなみになんですけど、生見さん走れるか?」


「走るのは得意だよ。倉庫勤務してたから体力には自信があるんだ」


「なら、良い!」


 俺達はどこにあるか分からない次の入口に向かって走った。


 走って、走って。


 途中でほんの少しだけ休憩して。


 すると一時間ほどで隣の地下水路の入口が見えた。


「生見さん、時間は?」


「はぁはぁ、二時……だよ」


「おし」


 俺は衣月に位置情報の連絡をした。



『いけそう』



「いけそうだって」


「良かった……」


「階段上って、扉が開くか見よう」


 俺達はゆっくり階段を上った。


 俺はそこまで息切れしてないけど生見さんは結構しんどそうだ。


「開いてる……な。外もそこそこ歩けば町があるっぽし大丈夫そうだ」


「そうだね」


 扉を閉め、扉に背を預けた。


「生見さん」


「なんだい?」


「俺、途中で仮面をした男に会ったんだ」


「それは、その男とは?」


「別れたよ。そこで良い情報を聞いたんだ。この辺にいるのは下級アルファって言って俺達の目を見ないと認識できないらしくて目さえ隠せば乗り切れるってよ」


「たしかに良い情報だね。でも信憑性がない」


「だな」


「このこと、富士宮さんから政府に伝えないの?」


「伝えるべきじゃないな。政府はアルファのことを隠していた。あっちの信頼度は今、皆無に等しいよ」


「そうか」


「今はまだ、って奴だな。いずれ伝えなきゃいけない時が来るさ」


「そうだね」


 雑談を交わしていると扉がゴンゴン叩かれた。

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