第46話
その日、王宮はおろか王都は混乱に陥った。
今日はめでたい建国祭の始まりの日。
しかし、そこにようやく戻って来た王妃が、とある地方での領主の不正の資料の数々を手に王に奏上したのだ。
多くの官吏達が集い、その最奥の玉座には久方ぶりに姿を現した王が居た。
全ての者達の視線が一人の人物に集注する。
煌びやかな衣装を纏っているのでもない、金銀装飾を身に付けているのでもない。
容姿も十人並みで才だってそれほど優れているわけでもない。
嘲笑と侮蔑すらも入り交じる多くの視線を受けながら、その人物は静々と数段高くなっている玉座へと向かう。
玉座に近づける限界の場所まで来ると、その場で深く一礼した。
そこは玉座からまだかなり離れた場所だった。
背の高い大人の男性を寝かせて、十人も縦に並べたほどの距離がある。
本来ならば、その存在がいるべき場所ではない。
更に高まる嘲笑と侮蔑。揶揄と陰口。
しかし、その少女はたじろぐことなくゆっくりと顔を上げた。
その視線の強さに、その瞳を見てしまった者達は瞬時に魅入られた。
凛とした声が高らかに響く。
「申し上げます――」
その日――
凪国王妃の言によって、とある地方領主に纏わる全ての悪事が明らかとなったのだった――