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(・ω・U)フユ・フラベルと魔の料理  作者: 乙羽
(>ω<U)犠牲者7婚約者ツキ・サンミリオン2回目
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18/18

後編

ショコラが顔に落ちてきて、目が覚めた。

ふわふわの真っ白な毛が顔に当たっている。

ガトーも不思議なメロディを奏でていた。


ガトーは先日フユがガトーショコラ(食べ物)と言い張っていたメロディを奏でる箱のことである。

ショコラは同じくフユがガトーショコラ(食べ物)と言い張っていたふわふわした一つ目の白い何かだ。


この二つはどうやら生き物だったらしく、ぴょんぴょんと跳ねるようにして動き回ることが判明した。

見慣れればなかなか可愛いが、ジャンプ力がえげつない。

手のひらサイズのくせに1メートルくらいなら軽くジャンプする。

怖い。

愛着が湧いてしまったので、俺の部屋でペットのように飼っている。


フユは「食べないんですか?」としょぼんとした顔で言っていたが、「もったいないからゆっくり食べるよ」と言うと笑顔になった。

フユには申し訳ないが、二度と食べるつもりはない。

というか、食べたらこいつらがいなくなると思うと食べられない。


ショコラが俺の顔の周りで遊びたそうに動いていたので、起き上がる。

すぐに黒猫の使用人エリスが水を持ってきてくれた。

礼を言って受け取り、口に含む。

冷たくて気持ちいい。


「そろそろフユが来るかも」


空になったグラスをエリスに渡しながら言う。


いつ頃来るかな?

早く会いたいな。


そんなことを考えている俺に、エリスが「もう、いらっしゃってますよ」と言った。


「えっ?!」

「ヒカル様がお相手されてます」


驚く俺に、エリスは何でもないことのように言う。

俺は物凄く慌てた。


「いつ来たの?!何で起こしてくれなかったの?!」

「具合が悪いんですから大人しくしておかないといけませんよ」

「フユが来てるのにそんなこと言ってられるか!」


慌ててベッドから降りる。

ショコラが「みゅー」と不満そうに鳴いていたが緊急事態なので無視だ。


「顔洗ってくるから一番格好良い服用意してて!」


エリスに向かって叫びつつ、応接室へ繋がるドアを開けると……


「「あ……」」


そこにフユがいた。


「あ、えっと……お邪魔してます」

「え……あ、うん……どうぞ……ごゆっくり……」


俺は自室に戻ってドアを閉めた。


「!!?!?!!?」

「言ったじゃありませんか。ヒカル様がお相手されていると」


声にならない悲鳴をあげる俺に、何でもないことのように言うエリス。


言ったけど!

まさか俺の部屋にいると思わないじゃん!


寝起きでヨダレまみれの顔見られた!

寝癖も見られた!

パジャマ着て変なこと叫んでるとこも見られた!!!


「うわあああぁぁぁ……」


ベッドでうつ伏せになって呻きながら、枕をバスンバスンと叩く。


「その情けない声がフユ様に聞こえますよ」


エリスがそう言うので俺は枕で声を押さえた。

フユにこれ以上格好悪い姿は見せられない。


「ヒ、ヒカル様!今ツキ様がいらっしゃいました!」

「そりゃいるよ。俺と兄上の部屋だもん」

「会えないんじゃなかったんですか?!」

「サプライズ」

「サプライズ?!」


隣の部屋から驚くフユと淡々と言い放つヒカルの声が聞こえてくる。

俺はその会話で『こんなことになったのはヒカルのせい』だと知った。


「サプライズじゃねーよ!事前に言っといてくれ!」

「枕を口に当てて喋るのはやめてください。何を言っているのかわかりません」

「ヒカルもエリスも酷い!」

「ほら、一番格好良い服ですよ。早く着替えてフユ様に会いに行きましょう」


無言で起き上がり、エリスの用意してくれた服を着る。


「さっきのツキ様明らかに寝起きでしたね。ぷぷっ……格好悪い」


隣からベラーノの声が聞こえてきて殺意が沸いた。

俺とフユの結婚式には絶対に呼んでやらない。


「ツキ様はいつだって素敵ですよ」

「フユは優しいですね。あんなのに気を使わなくて良いんですよ」

「お兄様はツキ様に厳しいですね」


フユに素敵と言われて怒りが少し治まった。

だけど、パジャマ姿を見られたのを思い出してため息が出た。

フユの前では、いつも格好良くしていたいのに……。


「濡れタオルです」

「ありがとう」


俺が濡れタオルで顔を拭いている間に、エリスが寝癖を直してくれた。

見違えるほど良くなったが、さっきの姿が掻き消せるくらい格好良いとは言えない。

また、ため息が出た。


「フユに格好悪いと思われてたらどうしよう……?」

「大丈夫ですよ。フユ様はツキ様のこと大好きですから」

「や、やめろよ……照れるだろ」


俺はエリスの言葉に照れながら、再びドアを開ける。

応接室にいたフユ、ヒカル、ベラーノがいっせいに俺を見た。


「ツキ様!具合はもうよろしいんですか?」

「うん、大丈夫」


笑顔で駆け寄ってくるフユを抱き締める。

うん、今日も可愛い。


「ちょっと!僕の妹に気安く触らないでください!」


するとベラーノが俺に向かって叫んだ。

俺は無視した。


「フユはあなたが気安く抱き締めて良いような安い女じゃないんですよ!離れてください!」

「婚約者でもダメってどう言うことだよ?」


キャンキャン喚くベラーノにため息を吐く。

顔は良いのに性格が悪い。

そして、シスコンが過ぎる。


「お兄様、ツキ様に失礼ですよ」


フユが嗜めるとベラーノは黙ったが、不満そうな顔で俺をにらんでいた。

こいつすごく邪魔だな。

いつもそう思うけど。


「ヒカル、ベラーノと外で遊んでこい」

「今、本物のクッキー食べてるから後にして」


ベラーノを連れ出してもらおうと弟のヒカルに声をかけるが、そう返された。

なんだよ本物って……?


ガトーとショコラがヒカルに近寄って行ったが、ヒカルはクッキーが食べられないように手でガードしている。

1枚くらい食べさせてやれよ。


「俺の分も食べて良いから」


俺はため息を吐きながらそう言う。

するとヒカルは皿に乗っていたクッキーを全部口に流し込んだ。

そして、ハムスターのようにボリボリとクッキーを食べる。


こ、こいつ……フユの分まで食べやがった!

後で弁償させる。


「ベラーノ、サッカーしよう」

「妹が痴漢に襲われてるので少し待ってください!」

「誰が痴漢だ!?」

「ツキ様は痴漢ではありませんよ」

「待っててくださいフユ!僕が助けてあげますからね!」

「私の話聞いてましたか?」


俺を痴漢呼ばわりするベラーノと応戦するフユ。

ヒカル、早くしろ!


そう思っていたときだった。


「ベラーノは俺とフユのどっちが大事なの?」


ヒカルが淡々とそう言った。


しかし、ヒカルとは生まれてからずっと一緒にいるが、何を考えているのかまったく分からない。

食い意地が張っていることは分かる。

それはいいとして、今のはどういう意味なんだ?

私と仕事とどっちが大事なの?的な意味か?

おまえはベラーノの彼女か?


「ヒカル様に決まってるじゃないですかぁ♡」


ベラーノはそう言うと、ヒカルと手を繋いで部屋を出て行った。

語尾にハートついてたぞ……。


おいベラーノ、そいつ男だぞ。

彼女じゃないんだぞ。


と突っ込んでやりたかったが、ベラーノが嬉々としてヒカルと出ていったので良しとする。


「今のはどういう意味なんでしょう……お兄様は私よりヒカル様の方が大事……?」


腕の中でショックを受けているフユの頭を撫でる。


「俺はフユが一番大事だよ」


耳元で言うと、フユが照れながら「私もツキ様が一番です」と言った。

可愛いというのは凶器だ。

幸せで胸が痛い。


「あ、そうです。今日はお招きいただきありがとうございます。お体は大丈夫ですか?」

「あ、うん」


フユの質問に俺は言葉がつまる。

格好悪いところを見られたことを思い出したのだ。

あと、フユの作ったクッキーのことも……。


「今日はシフォンケーキを作ってきたんです。よければ一緒に……」


で、出たーーー!!!


照れながら言うフユは可愛い。

取り出した紙袋もとても可愛い。

だが、その中身は……。


想像すると俺の体が震えた。

ショコラは果敢にも袋を覗き込み、そして怯えるようにして俺の元に戻ってくる。


な、なんて勇敢なんだショコラ。

中身なんだったか教えてくれ!

いや、知りたくないからやっぱりいい!

フユはそれをそのまま持って帰ってくれ!


「申し訳ありませんフユ様。ツキ様は食事の制限がされており、胃に優しいものしか食べられないのです」


あれを食べねばならない恐怖に震える俺の背後で、エリスがそう言った。

完全に忘れていたがいたんだな。

助かった。

ありがとうエリス!


「まあ、そうだったんですね」

「ごめんなフユ」

「いいえ。私も知らずに胃に悪いものを持ってきてしまって」


少し残念そうに言うフユ。

俺だって残念だ。

できることならフユと二人で食べたいし心から美味しいって言ってあげたい。

でも……無理なんだ。

ごめんなフユ……。


「これは家に帰ってから食べますね」


フユはそう言いながら紙袋を仕舞った。


あ、食べるんだ。

大丈夫かな?

フユが体調崩したら不味いな。

俺が後で食べるって言って貰っておいた方が良いかも。


そう思った時だった。


「わん!」


紙袋の中から、何かの鳴き声がした。


………………犬が入ってる?


いや、そんな筈はない。

あんな小さくて薄い紙袋に犬なんか入れたら破けるに決まってる。

それに、フユが片手で軽く犬を持てる訳がない。

と、いうことはだ……。


「それ……」

「シフォンケーキですか?」

「うん……今『わん』って……」

「鳴きましたね。後で注意しときます」


意味が分からない!!!?


「わんわん」

「あら、また。ダメですよ。普通のシフォンケーキは鳴かないんですから、あなたもちゃんとシフォンケーキらしくしてください」

「くーん」


シフォンケーキらしくとは?!


「ごめん!それ、後で食べるから置いて帰ってもらって良いかな?!」


絶対に食べさせてはならない!


使命感に駆られて俺は叫んだ。

フユは「食べてくださるんですか?嬉しいです!」と呑気に喜んでいた。

これさえなければ完璧なのに……。


「わん」

「鳴いてはいけないと言ってるでしょう?」

「きゅーん」

「仕方ありませんね。ツキ様に食べられるときは静かにするんですよ?」

「わん!」


いや、もう本当に何が入ってるの?!




.*+;゜*・+;゜*・+.゜*.


フユが帰った後。

俺は恐る恐る紙袋を開けた。


「わん!」


中にチューリップみたいな何かが入っていた。


「どうやって鳴いてるんだ?!」


俺の叫びを聞いたヒカルが「水やり当番決める?」と聞いてきたが、そういう問題じゃないと思った。

というか、これチューリップなのか?!




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