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第9話:リーチムの超軽量化レッスン 前編:『重力という名の固定概念』

挿絵(By みてみん)


ゼノが奏でる「プラチナの重圧」と、フォスファが曝け出した「燐光の狂気」。二つの緊張感あふれる旋律に晒され、生徒たちの精神は限界まで張り詰めていた。


そんな彼らの前に現れたのは、学園のムードメーカーであり、No.3『Li(リチウム)』のシンフォニア、リーチム・ノヴァリスだった。


小柄で少年のような愛らしいルックス。だが、金属元素の中で最も軽いリチウムの特性を宿した彼は、物理法則を軽々とスキップするように捻じ曲げる、変幻自在のパフォーマーである。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆

リーチム・ノヴァリス ♂

No.3『Li(リチウム)』のシンフォニア


この世界において、「最軽量の刃」あるいは「ネクサスの蓄電池」と呼ばれている。

金属元素の中で最も軽い特性を持ち、同時に極めて高い反応性とエネルギー貯蔵能力を持つ、動と静が同居するエレメンタ。ネクサス工学における「バッテリー」の核であり、「核融合」の材料としても知られる。

リーチムの能力は、「質量とエネルギーの制御」に特化しており、物理法則を軽々と捻じ曲げることで、戦場を無重力と高エネルギーのフィールドに変える。


【シンフォニア能力】

 「超軽量化(アンチ・グラビティ)」

 「光速蓄電(ライト・エナジー)」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「やあ、みんな! ゼノ先生とフォスファ先生の授業で、みんなの法則がギチギチの不協和音になっちゃってるね! 大丈夫、今日から僕の『光速蓄電(ライト・エナジー)』で、みんなの法則をフルチャージしてあげるよ!」

リーチムは教壇の上でぴょんぴょんと跳ねながら、おふざけポーズで宣言した。


彼の声は、まるで弾むようなスタッカートを刻む木琴の音色に似ていた。


「さあ、今日のテーマは『重力からの解放』! リチウムはね、金属界の最軽量。一番軽い音符なんだ! だから、みんなも僕と一緒に、この重くて退屈な世界という譜面からバイバイしよう!」

リーチムが指をパチンと鳴らした瞬間、彼の姿がブレ、掻き消えた。


シュッシュン!!


「わっ、消えた!?」

リーフィアが驚きに目を見開く。


「――『法則奏生(シンフォニア・ライブ)』――『超軽量化(アンチ・グラビティ)』!!」


「馬鹿げたテンポだな……!」

レオンが法則を解析しようと目を細めるが、残像すら捉えきれない。


シュン!!


次の瞬間、リーチムは逆さまの状態で、空中に浮いたままハーベルの頭上に出現した。

「やあ、ハーベル君! 君の『第零のアモルファス』は、存在が重すぎて、見てるこっちまで肩が凝っちゃうよ! もっとフワフワな浮遊感を楽しもうよ!」

「は、はい!」

ハーベルは驚きつつも、リーチムの屈託のない笑顔に、自然と口角が上がった。


(俺の理論では、リチウムは還元性が極めて高く、電子を放出しやすい最軽量のアルカリ金属……。なるほど、その性質を『ネクサスの活性化』に転換しているのか。この軽快な動きは、質量そのものをエネルギーに変換し続けている結果か……)

心の中で八雲が素早く考察を巡らせる。


「リーチム先生! どうやったらそんなに速く動けるんですか?」

「簡単だよ! 法則の質量を、リチウムの原子みたいに極限まで削ぎ落とすんだ。さあ、みんな! 今日は『法則を体で覚える鬼ごっこ』だ! 僕を捕まえられた子には、先生特製『法則活性化キャンディ』をあげちゃうぞ!」


広大な訓練場が、一瞬にして高速移動の実験場と化した。


生徒たちは自分のエレメンタをフル活用し、光の粒となって飛び回るリーチムを追いかける。

レオンは『He(ヘリウム)』の力を使い、自身の周囲の空気抵抗をゼロにする。


「これなら……俺のテンポの方が上だ!」

レオンが鋭い加速でリーチムに肉薄する。

だが、リーチムは捕まる直前、ふわりと軌道を反転させた。リチウムと空気中のわずかな水分を反応させ、足元で小規模な爆発を発生させたのだ。


「あはは! 追いつけるかな? リチウムは水分に触れると熱くなるんだよ!」

「クソ! 爆発のノイズで軌道が乱される……っ!」

レオンは屈辱に顔を歪める。


彼の完璧なソロ・ソナタは、リーチムの気まぐれな爆発音によって、たやすくかき乱された。


一方、リーフィアは「生命伝導(ライフ・コンダクター)」を足元に集中。リーチムが放つネクサスの残響を「聴き」取り、最短ルートを予測して追いかける。


「そこよ!」

「おっと、いい線行ってるね、リーフィア君!」


ハーベルはといえば、他の生徒に比べて明らかに遅れていた。


(走る、跳ぶ……。物理的な運動エネルギーに俺のアモルファスをどう組み込めばいい? 単に反作用を起こすだけじゃ、推進力にはならないし……)


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