第十七話 特別審査終了
演習場は静まり返っていた。
誰一人として言葉を発しない。
王国最強の魔導士、フェルナンド・アルディスが展開した五重の『炎王障壁』
そのうち四枚が、一瞬で砕かれた。
しかも、誰も攻撃を見ていない。
「……今、何が起きた?」
受験者の一人が震えた声で呟く。
「見えなかった……。」
「魔法を撃ったのか?」
「いや、何も見えなかったぞ。」
会場は大きくざわつき始めた。
受付員も資料を落とし、呆然と立ち尽くしている。]
「こんなこと……あり得ない。」
兵士たちも顔を見合わせる。
王国最強の防御魔法を破りかけた少年。
しかも、まだ十歳。
信じられる者など誰もいなかった。
一方、その中心にいる誠だけは首をかしげていた。
「あれ?」
「ちゃんと魔法出てました?」
「弱すぎませんでした?」
その一言に、ルミナは思わず頭を抱えた。
(いやいやいや!)
(全然弱くないから!)
(むしろ強すぎるから!)
ゼノも思わずため息をつく。
(……最後まで自覚がないか。)
フェルナンドは砕けた障壁へ静かに近づいた。
炎の残滓がまだ揺らめいている。
手をかざし、残った魔力を確かめる。
「なるほど……。」
誰にも聞こえないほど小さな声だった。
「見えないのではない。」
「認識そのものができない。」
「存在を隠した魔法……。」
普通の透明化ではない。
しばらく沈黙が続いたあと、フェルナンドが振り返る。
「特別審査は終了だ。」
その一言で会場がざわつく。
「終わり?」
「もう?」
「勝負は?」
フェルナンドは穏やかに微笑んだ。
「十分確認できた。」
「これ以上続ける必要はない。」
誠はほっと息をついた。
「よかった……。」
「真逆誠。」
「特別審査、合格だ。」
受験者たちは騒然となる。
受付員も慌てて書類を確認する。
「ですが……。」
「属性が未登録です。」
「測定結果も『測定不能』となっています。」
フェルナンドは落ち着いた様子で答えた。
「問題ない。」
「この件は私が預かる。」
王国最強自らの判断。
異論を挟める者はいない。
「承知しました。」
誠は笑顔になる。
「やった!」
「ちゃんと受けられるんだ!」
「登録は保留。」
「魔術儀は予定通り受けてもらう。」
フェルナンドはゼノへ近づき、小声で囁いた。
「ゼノ」
「透明属性について調査を進めろ」
「王国の禁書庫も確認しろ」
ゼノは真剣な表情で頷いた。
「承知しました」
その様子を、誰かが見つめていた。
王都の高い塔の上。
赤紫色の仮面をつけた男。
『七原色の道化師』――ジョーカーノーズ。
「やっぱりいたか。」
「世界を変える存在が。」
仮面の奥で、不気味な笑みが浮かぶ。
「さあ、物語を始めよう。」
誠はまだ知らない。
この特別審査が、ただの試験ではなかったことを。
そして、自分の運命が大きく動き始めていることを。
(つづく)
ここまでお読みいただきありがとうございます!
一体これから待ち受ける物語は....
ぜひ次回をお楽しみに!
天才なのに勘違いすぎて凡人疑いされる絶賛連載中です。




