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『行く先々で問題を起こす“煙の魔女”とパーティーを組んだんだけど、私の胃は限界かもしれない』  作者: 夏カボチャ 悠元
家族の形、いるべき場所といたい場所

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58、ネルとアシミーの指輪探し1

 何処までも広がる草原、その中に只管に伸びる一本道をアシミーとネルは進んでいた。


「ねぇ、アシミーちゃん? 空から探そうよう……絶対に歩いて探すより早く見つかるはずだよぅ」


「仕方ないでしょう、落とした場所が分からないっていうんだから! ぼやかないで、下を見て歩くわよ」


 2人は今、冒険者ギルドに張り出された一件の依頼を遂行するために歩いていた。


 依頼はある貴婦人からのもので、グラードの街へと移動している際に指輪を紛失してしまい、見つけてほしいというものだった。


 当然、冒険者ギルドでは、物探し等の依頼も貼り出されるが、誰も受けないままの塩漬けになることの方が一般的である。


 しかし、今回は違った。

 依頼主の貴婦人はペルグの知り合いであり、当然、無下にはできない。


 更にいえば、指輪には家紋が記されており、悪用されれば、貴族社会において、大きな爪痕を残すことになるのだ。


 想像以上に事態を重く見たペルグは、複数のパーティーと実力者に指輪探索のクエストを命じた。


 そうして、ネルとアシミーの2人にもアイシャから個人的に話が回される。


「悪いんだけどさ、アシミーとネルにしか頼めないんだ……ペルグさんも、半分諦めてるみたいだけどさ、指輪を探してあげてよ」


「なんでボクちゃん達が?」


「だって、アタシとネルもアシミーも、ダチなんだろ? ダチが困ってたら助けるなんて、友情じゃんか、頼むよ」


 ネルはアイシャからの“友情”という言葉に軽くニヤける。


「まあ、仕方ないなぁ……確かにボクちゃんは、淑女しゅくじょで、アイシャちゃんとも、友達だからねぇ」


 アイシャ:凄い罪悪感だなぁ……嘘はいってないし、本当に友達だと思ってるけど、心痛いわ……


 アシミー:アイシャったら、ネルの扱いが上手くなったわね……少しモヤッとするけど、今回は助けてあげないとかしら?


 ネル:わーい! ボクちゃん達に友情が芽生えてるぅ。アシミーちゃんからは親友って言われたし! もう最高じゃないかぁ!


 3人の話し合いが素早く行われ、指輪の特徴や移動していたルートなどがアイシャから説明されていく。


 ペルグの指示で動いたパーティーは、最初に貴婦人が訪れたと話した街へ向かう事になっており、その街から順に探すことになる。


 アイシャは逆にグラードからの道中に2人を集中させて探すことで、早く指輪が見つかるようにしたい旨を語った。


 その結果、2人は今……只管に続く草原の一本道を移動しているのだ。


 周囲に伸びた草は、大地に目隠しをするように風に靡き、指輪という小さな探し物をする2人を困らせていく。


「はぁ、やっぱり見つからないよねぇ? こんなに草がダンスしてたら、ボクちゃんの目でも無理だよ……あぁぁ!」


 突然の大声に、アシミーがネルへと振り向くとニヤけた表情がそこにあった。


 アシミー:あの顔は絶対に良くないことを思いついた顔だわ……


「アシミーちゃん! あの時みたいに、沢山の目を出してたら見つかるんじゃないかなぁ!」


 アシミーはネルの言葉に首を全力で、左右に振る。


「嫌よ! あの姿になったら、自分じゃ戻せないのよ! 私は反対よ」


「えぇ〜! 絶対にいい案だと思ったのになぁ……」


 チラチラとネルの視線がアシミーへと向けられると、アシミーは目を瞑り、考えながら再度、首を左右に振る。


 そんなことを数回繰り返した後に、アシミーが大きな溜め息を吐くとネルに視線を向ける。


「あの姿って、すごく不気味に見えるから、本当に嫌なんだからね! 今回だけよ! いいわね」


「約束するよぅ! あはぁ!」


 アシミーは、複眼を発動させると、複数の瞳が額から現れていく。


 アシミー:早く探してやるんだから! もう、誰かに見られたら恥ずかしいんだから。


 アシミーが複眼を頑なに隠したかった理由は、自分の意思を、自身の動きに関係なく視界に入ってしまうからだった。


 見たい物は鮮明に、見たくない物も鮮明に視界に入ってしまうため、笑う表情や驚き、そんな周囲のすべてを望まないままに視界へと吸い込んでしまうからだ。


 ネル:アシミーちゃんのお目目が沢山あるなんて、全部で、ボクちゃんを見つめておくれよぅ〜!


 ムッとしたアシミーを背中側から、ネルは無言でハグをする。


「ちょ、何よ?」


「今……前から抱きしめたら、可愛くて離せなくなっちゃうから……あとで沢山見つめておくれよぅ」


「え、嫌よ? 恥ずかしいじゃない」


 そうして、ネルの手から解放されたアシミーは指輪探しを再開する。


 視界には光り輝く物や、酒のコルクなど、有りと有らゆる物が飛び込んでくる。


 アシミーの複眼により、速度が上がると次にネルが指を鳴らす。


 鳴らした指先から、【煙馬モクバ】が作られると、ネルは素早く跨り、アシミーを前側に乗せる。


「この方が移動も楽だからねぇ、なるべく速度は落とすから安心してねぇ」


 【煙馬モクバ】が大地を駆け抜け、アシミーが次々に何かを見つける。

 その度に、ネルが指定された位置に【煙縄】を放ち、回収していく。


 流れ作業のように続いた探索だったが、やはり簡単に見つからない。


 日が傾き、夕暮れが近づいていくと、アシミーからも焦りが見え始めていた。


 同時に複眼を長時間酷使した結果、アシミーの疲労はピークに達していく。


「大丈夫かぁ、アシミーちゃん?」


「まだ行けるわ……日暮れまでは探すわよ」


 既に草原は終わりを迎え、2人は魔物の生息地に近い川辺の道を進んでいた。


 川と畦道を挟むように広がる木々の先には魔物もおり、ネルもまた警戒を強めていく。


 そうして、太陽が完全に沈んだタイミングで、大空に巨大な鳥の魔物が姿を現す。


「アシミーちゃん! なんか来るみたいだよ」


 ネルの言葉にアシミーが頭上の先に飛行する魔物を捉えた。


「ジャイアントクローだわ!」


「何匹だい!」


「多分、三匹!」


 ジャイアントクローは、別名を“大黒鳥(だいこくちょう)”と呼ばれ、群れで狩りをする賢い魔物である。


「ボクちゃん達が、夜ご飯に見えたのかなぁ?」


「笑えない冗談はやめてよ! あいつら雑食で骨も残らないって話なんだからね」


 2人の会話を聞く気はないと言わんばかりの急降下を始めるジャイアントクロー。


 鋭いくちばしは、大剣を思わせるほどに巨大であり、鉤爪もまた、一本一本が剣と変わらないサイズをしている。


 そんな巨大な刃と化したジャイアントクローは、真っ先に【煙馬モクバ】の胴体を狙い襲い掛かる。


 ネルとアシミーは言葉を交わすことなく、左右に飛び、【煙馬モクバ】に掴みかかったジャイアントクローに対して、ネルは【煙馬モクバ】を解除すると同時に【煙縄もくなわ】へと変化させていく。


 ジャイアントクローが慌てて、離れようと翼を羽ばたかせた瞬間、ネルは悩まずに飛びかかっていく。


「逃がさないよぅ! 君がボクちゃん達の夜ご飯になるんだからさぁ!」


 煙の刃がジャイアントクローの翼を切断する。


 その様子を見ていた残りのジャイアントクローが逃亡しようと動き出すが、既にアシミーの【鋼糸】が木々から大空に放たれ、二匹の内の一匹を拘束する。


 最後の一匹が慌てて、飛び去るとネルは悩まずに駆け出していた。


「アシミーちゃん! 少し休んでてね。アレも捕まえてくるからさぁ!」


 ネル:アシミーちゃんをご飯にしようなんて、絶対に赦さないよぅ、毛を毟って、ハゲ鳥にしてやるんだから!

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