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『行く先々で問題を起こす“煙の魔女”とパーティーを組んだんだけど、私の胃は限界かもしれない』  作者: 夏カボチャ 悠元
危険な魔女と亜人の少女

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27、ネルとアシミーの本気対決。ベスパの森の支配者!

 ベスパの森に入ってから十数分、アシミーと別れて蜂蜜採取を開始したネルは早々にキラービーナの巣を発見していた。


 巣を守る数匹のキラービーナの姿があり、ネルは迷うことなく一気に駆け出していく。

 ネルは両手に煙を纏わせるとニヤリと笑う。


 先頭から急降下してきたキラービーナに向けて軽く手を伸ばす。

 瞬時に振り抜かれたネルの手から煙が広がり、攻撃態勢に入っていた数匹のキラービーナを巻き込み燃え上がる。

 灼熱の煙がキラービーナを一斉に灰へと変えるとネルはつまらなそうに目を細めた。


 あっさりと始末されるキラービーナを見て、ネルは悩まずにキラービーナの巣を確認する。


「大量じゃないかぁ〜。ボクちゃんってば、アシミーちゃんに圧勝しちゃうんだろうなぁ〜あはぁ」


 本来、ベスパの森に入って数分で巣に出くわした場合、一介いっかいの冒険者なら、不幸と幸運の両方をその身に感じるだろう。

 しかし、ネルにそんな感覚は存在しない。


 だが、本来はギルドで作られたマニュアルがあり、キラービーナの蜂蜜採取をする際、冒険者達はそれに従う。

 巣に住む個体の行動を監視してから、時間を掛けて最適解さいてきかいを狙うのがセオリーとなっている。


 その為、ネルのように出会って即戦闘に入るという選択はギルドとしては推奨していないやり方だった。


 ネル:ボクちゃんには、この森が危ないなんてやっぱり思えないんだよねぇ……むしろ、こんな森で慌てる冒険者ギルドって、やっぱり無能なんだろうなぁ……ボクちゃんがギルドマスターなら、全員を首にしちゃうかもしれないなぁ……


 ネルは笑いながら、蜂蜜を回収すると小さく呟いた。


「あはぁ……アシミーちゃんとの真剣勝負だなんて……ボクちゃんはドキドキしちゃうなぁ……」


 キラービーナ── 速度重視の集団戦を好むキラービーナは2メートルを超える巨体を持ち、羽を広げれば横幅は3メートルになる。一般人から見れば恐ろしい魔物だ。


 母体であるクイーンから、生まれる蜂型の魔物、10匹程度の群れを作る。

 小規模な群れが巣立つと森に各群れが巣を作りだして、縄張りを広げていく。

 そうして、クイーンを護る為の強固で巨大なコロニーが出来上がる。


 クイーンが生まれた森はそうして、ゆっくりと魔物の巣へと姿を変える。

 ただ、このキラービーナが作る蜂蜜は芳醇で濃厚、どんな蜜バチが作る蜂蜜よりも、魔物であるキラービーナの作る蜂蜜の方が価値がある為、危険はあるが、完全な討伐を冒険者ギルドとグラードの商業ギルドは禁止している。


 ネル:なんだっけ……全滅させるなって、話だったよねぇ……まぁ、食べたいだけ食べるボクちゃんからしたら、関係ない話なんだけどさぁ……森ごと潰しちゃえば、確実に勝てるのに残念だなぁ。


 次にネルが見つけた巣は、8匹のキラービーナが守りを固めていた。

 ネルから漂うキラービーナの返り血に気づいたキラービーナは目を真っ赤にして周囲を警戒していく。


 ネル:ボクちゃんをご飯だと思ったのかなぁ、カチカチうるさいあごは、バラバラにしちゃおうかなぁ?


「かくれんぼから、鬼ごっこだねぇ……ハチさんはみ〜んな、逃げられるのかなぁ〜」


 ネル:不快な雑音だなぁ……人間が放つノイズよりはマシだし、ボクちゃんに巣の位置を教えてくれるから、許してあげちゃうよぅ。


 8匹のキラービーナから、5匹が羽を素早く羽ばたかせ、勢いのままネルに襲いかかっていく。


 ネル:ボクちゃんと比べて、大きくて怖くなっちゃうよぅ〜なんてねぇ……あはぁ!


 ニヤリと口角を吊り上げたネルは、キラービーナに向けて片手を前に伸ばす。


 先頭のキラービーナが毒針でネルを貫こうと襲いかかるが軽々と回避していく。

 僅かな動作でキラービーナの横へと移動したネルは、指先に煙を纏わせるとキラービーナの硬い複眼を伸ばした指で軽々と貫いて見せる。


 眼球を突然貫かれたキラービーナが頭部を必死に動かし、眼球を貫いた指は腕までめり込んでおり、ネルの腕を振り払おうと暴れていく。


 ネル:カチカチうるさいなぁ……ボクちゃんの傍でノイズを放つなんて……違うかぁ……ボクちゃんが傍に来たんだったねぇ。


 早々にネルは、キラービーナの頭部へ【煙撃えんげき】を発動させる。

 頭部内で開かれた手から、鋭い煙の刃を炸裂させたネルは静かに笑い片手を口元に立てる。


「静かにしておくれよぅ……ボクちゃんはノイズが嫌いなんだからさぁ〜」


 頭部に直接発動した【煙撃えんげき】が頭から吹き出し、キラービーナの動きを停止させる。

 ネルは周囲を確認してから、次のキラービーナに視線を向けていく。


 先頭の1匹を数秒で始末すると、2匹のキラービーナが同時に迫り、左右から急降下すると毒針をネルに向けて襲いかかる。


「はぁ、慌てん坊さんだねぇ……静かにしてれば、蜂蜜だけで命までは採取しないのにさぁ……」


 誰よりも無邪気な笑みが、キラービーナ達に向けられ、その首が軽くネジ斬られていく。

 最後には巣を守る3匹のキラービーナから羽根をむしり取ったネルが、蜂蜜をすべて奪っていく。


 ネル:ボクちゃんは優しいから、羽根だけで勘弁してあげるよぅ……慈悲も淑女しゅくじょの勤めだからねぇ。


 【煙縄もくなわ】を巨大な布のように広げると蜂蜜を積み込む。


「ボクちゃんってば、仕事が早すぎて偉いよねぇ……このまま、ボクちゃんが勝ったら、アシミーちゃんがどんな顔するか楽しみだなぁ……」


 独り言を口にしながら、未だに“カチカチ”と耳障りな音を鳴らす。


 ネル:静かにできないなら、慈悲は必要ないよねぇ……残念だなぁ……


 羽根のないキラービーナ達を見つめたネルは、無言で3匹の頭を踏み砕いた。


 ネルは大きく伸びをすると清々しい表情で次の巣を探す為に移動を開始する。


 悩まずに次々とキラービーナの巣を襲撃し、蜂蜜をすべて採取していくネル。

 太陽が真上に差しかかったあたりで、ベスパの森の中心から東側の位置で巨大な土煙が上がる。


 ベスパの森にいれば、どの位置からでも確認できる程の粉塵を見たネルは慌てて移動を開始する。


「アシミーちゃんが暴れてるのかなぁ? 派手に暴れてるなら、ボクちゃんも参加しないとだよねぇ」


 巨大な粉塵をアシミーが上げたものと疑わないネルは、必死に笑みを抑えながら駆け出していた。


 木々の枝を足場に飛び上がり、空から粉塵の位置を再確認していく。


 中心から東に少し向かった先、キラービーナを何十倍にも巨大化させたようなピンク色に黒のラインが体に刻まれたクイーンが姿を現している。


 キラービーナが黄色に黒いラインをしているため、見間違うはずがない。

 何よりもその巨体がクイーンである証明であり、特徴として、羽根は最初からなく、地中に巣を作り巨大なコロニーを作り上げる。


 キラービーナのクイーンが姿を現した広く開けた平地。

 冒険者ギルドでは、クイーンのコロニーを見つけても手を出さないのが暗黙のルールになっている。


 そんなクイーンのコロニー周辺から、全力で森へ向けて駆けていく冒険者達の姿があった。

 アシミー……ではなく、若い冒険者達だ。彼らは血相を変えて、全力で駆け出していた。むしろ、逃げ出しているというべきだろう。


 特徴のない良くも悪くもない装備、新品であろう胸当てと肩当てを防具としている為、誰が見ても新人冒険者であることは一目瞭然いちもくりょうぜんだった。

 手に持たれたロングソードと安物であろう盾を装備しているが、既に盾は大きく歪み、ロングソードは刃が欠けてしまっている。


 ネルは走る冒険者達を確認すると、疾風のように木々を飛んで移動していた動きを止め、軽くため息を吐いた。


 ネルが興味を失い、ため息を吐いた理由は、その冒険者達のパーティーな先頭を走りながら、逃げている人物がギルドのノイズ男、ブルーガだったことも少なからず影響していた。


「な〜んだ、ボクちゃんのかんがハズレたみたいだねぇ……アシミーちゃんかと思ったのにさぁ、違うじゃないかぁ〜! 相変わらずノイズを撒き散らすとか人騒がせだなぁ、まったくもう」


 踵を返し、煙草を取り出すと高い木のてっぺんで、煙草に火を灯す。


 ネル:クイーンは卵を産むけど、蜂蜜は作らないからなぁ……倒しても意味ないよねぇ……あれ? 倒したらダメなんだったっけ?


 軽く首を傾げながら、クイーンについてを思い出すように一服をしていくネルは小さく肺から煙を吐き出していく。


 煙草を吸い終わるとネルは、吸い殻を【入煙にゅうえん】に放り込む。

 ネルは蜂蜜採取に戻ろうとしていた。

 だが、ネルの視線に突然、森の西側から天高く飛び上がると、木々を飛び越えてクイーンに向かっていくアシミーの姿がそこにあった。


 ネル:あはぁ! なんだぁ〜やっぱりボクちゃんのかんは間違ってなかったんだねぇ〜!


「はぁ、まったく……アシミーちゃんたら、本当に困ったちゃんなんだからぁ……しょうがないなぁ……それに、あれを独り占めは欲張りさんすぎるじゃないかぁ!」


 ネルは、アシミーの存在を確認して、高揚感に満ち溢れた表情を浮かべると、クイーンへ向けて足場の樹木を強く蹴る。


 巨大な樹木が中心から折れるのではないかと心配に なるほど左右に揺れると同時に、ネルの姿は大きくクイーンへと迫っていた。


「アシミーちゃんが遊び相手に選んだなら! ボクちゃんも参加しないとだよねぇ! さぁ、今行くよ〜アシミーちゃ〜ん!」


 クイーンへと一目散に向かうネルは、気分を不快にするような声に軽く視線を向けていた。

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