第461話 ~ ソレーヌの王都探訪記 ② ~
第461話 ~ ソレーヌの王都探訪記 ② ~
「なるほど……そう言う事情ですか……」
必死の説明して何とかルシィに納得してもらうマノンであった。
「ソレーヌさんでしたよね?」
「マノン導師の説明だと……」
「王都は初めてだとか……」
ルシィが話しかけるとソレーヌは小さく頷く。
「でしたら私がソレーヌさんの世話をしてもいいですよ」
ルシィはそう言うとマノンの様子を伺っている。
「……」
マノンはどうするか悩む。
"ルシィなら任せておいて大丈夫だよな……"
ルシィなら何とかしてくれると思ったマノンはソレーヌの世話役を頼む事にするのであった。
「マノン……ちょっと……」
ソレーヌがマノンの耳元で囁く。
「私、この女の事、何も知んないんだけど……」
ソレーヌは不安そうに尋ねてくる。
「大丈夫だよ、凄く頼りになる人だから……」
「私なんかよりずっとずっと頼りになるから……」
マノンは思いっきり力を込めてソレーヌを説得する。
「まぁ……確かに……そうね……」
ソレーヌはドッシリとしたルシィの貫禄ある姿を見て納得する。
「それじゃ、ルシィ……さん」
「私、ソレーヌ•シャトリエと言います」
「よろしくお願いします」
ソレーヌは自己紹介するとペコリと頭を下げる。
「あ……はい……」
「私は、ルシィ•ランベールと言います」
「この王立アカデミーで導師をしております」
ルシィも自己紹介をするとペコリと頭を下げた。
「ところで、ソレーヌさん……」
「住む所はありますか?」
ルシィが尋ねるとソレーヌは首を横に振る。
「今日初めてここに来たところなので……」
ソレーヌはそういうと少し困ったような表情になる。
「以前は何をなさっていたのですか?」
ソレーヌにルシィが尋ねる。
「村にいた時にはお湯番をしてましたが……」
ソレーヌの返事を聞いたルシィかアッと言う表情になる。
「それは好都合ですね……」
「もうすぐに王立アカデミーにも浴場ができるので……」
「それをお任せしてもいいでしょうか?」
ルシィの提案にソレーヌは今日ニッコリと笑う。
「はいっ!よろしくお願いします」
ルシィもニッコリと笑う。
「そうですか……」
「……でしたら……そうでね……」
ルシィは暫く何かを考える。
「私の権限で……王立アカデミーの臨時職員として雇用させていただきます」
「そうすれば、王立アカデミーの近くの宿を無償で借りれます」
「これで仕事と住む所は何とかなりますね……」
ルシィの手際の良さにソレーヌは感心しているのが伺える。
そんな2人の様子を見て安心したマノンは再び王立アカデミーに戻るのであった。
マノンは直接の上司であるバロー導師に無断欠してしまった事を報告して謝罪しなければならないのである。
導師達が集まる教員室に入るとマノンが持ってきたお土産の植物の前に人だかりができている。
その中にはバロー導師の姿も見える。
「あの……バロー導師……」
マノンがバロー導師に背後から話しかけると……
「お……おうっ!マノン導師っ!」
「これらの植物は何処で採取したものかねっ!」
「どれもこれも見た事の無い新種ばかりじゃないか!」
バロー導師はかなり興奮した様子である。
「あ……その……それは……」
「途中で道に迷って……」
「詳しくは……それよりも……」
「あ……その……無断欠勤……」
「大変ご迷惑を……」
マノンは無断欠勤した事を謝罪しようとするのだが……
「そんなものはどうでもいいっ!」
「それより、分かる限りでいい……」
「この新種の植物の報告書を早急に作成したまえっ!」
「よいかっ!早急にだぞっ!」
「報告書が仕上がるまで講義には出なくて良い」
「報告書はでき次第に私に直接、提出するよう」
バロー導師はそう言うと肉桂を手にして他の導師達と何か会話をしている。
元からガチの薬学導師で薬用植物一筋の研究者なので新種の薬用植物を目の前にしてマノンの無断欠勤の事などもはやどうでもいいのである。
何だか調子を削がれたマノンは深いため息を吐くと導師達を尻目に教員室を出て行くのであった。
"報告書か……ある程度は……"
"魔法工房図書室の旧ゲルマ帝国大陸植物資料本で調べてあるから……"
"そんなに時間はかからないか……"
マノンはヘベレス宮殿の裏庭で採取した植物を予め毒性などの危険性がないかを調べてあるからである。
マノンがヘベレス宮殿の裏庭で採取した植物には麻薬のアヘンの原料のケシや大麻草などがあったのである。
ヘベレス宮殿の裏庭で栽培されていた理由は強力な痛み止め等等の有用な薬の原料になるからである。
因みに、以前にマノンが行った平原の村で栽培さていた亜麻草であり大麻草とは種類が異なります。
何によせ、マノンの無断欠勤は有耶無耶になったので結果として良かった事になる。
"……さてと……魔法工房へ戻って……"
"報告書ても書く事にしようかなぁ……"
マノンは魔法工房へ戻るために大広場の塔に向かって歩いていると……
「あれっ!マノン導師じゃないですか?」
マノンの背後から不意に呼びかける若い女性の声がする。
「えっ?」
"しまった、認識阻害の魔術を発動し忘れた……"
マノンは不意に自分の名前を呼ばれて振り返ると同時に認識阻害の魔術を発動し忘れいた事に気付く。
「あ……やっぱり、マノン導師だ……」
「確か、出張してとかお聞きましたが……」
「お戻りになっていたんですね」
マノンに呼びかけたのは王立アカデミー図書館書士のジネットであった。
ルシィの計らいで出張扱いになっている。
「どうしたんですか?」
「そんなに荷物を抱えて?」
ジネットは沢山の荷物を抱えてよろけそうである。
"……そう言えば……"
"ルイーズさんとトランで買い物したの思い出すな……"
大荷物を抱えたジネットの姿を見て港町トランでルイーズの買い物に付き合わされた事を思い出す。
「大丈夫?」
「半分、持とうか?」
あまりの悲惨なジネットの姿にマノンは思わず口に出してします。
「だ、大丈夫です」
ジネットはフラつきながらもマノンの助けを断るのだが……
「あっ!ああっ!落ちるっ!」
両手一杯に抱えた荷物から何かがこぼれ落ちると石畳みの上をコロコロと転がる。
「えっ!林檎が3個?!」
マノンは石畳みの上を転がる林檎を追いかける。
「あ……ありがとうございます……」
ジネットは少し恥ずかしそうに御礼を言うと……
「やっぱり、半分お願いします……」
ジネットは片方の腕に抱えていた荷物をマノンに渡す。
マノンはジネットから荷物を受け取るとジネットの横に並んで歩き始める。
「家は遠いの?」
マノンはジネットの横を歩きながら尋ねる。
「そんなに遠くはないですよ」
「大広場の塔のすぐ隣りの建物です」
偶然にもマノンの向かう方向と同じである。
ジネットの家はいつもマノンが塔に登る階段のすぐ隣りの石造りの少し古い三階建ての建物の3階の角部屋だった。
建物の玄関の鉄格子の扉を開けて階段を登る。
王立ガリアンでも割と良い立地条件の物件である。
ジネットは自分の部屋の木の扉の前に来るとポケットから鍵を取り出そうとするのだ上手く取り出せない。
「その荷物も持つよ」
マノンはそう言うとジネットが抱えているもう一つの荷物も受け取る。
「すみません……」
ジネットは申し訳なさそうに言うとポケットから鍵を取り出して扉を開ける。
「げっ!」
一瞬でジネットの顔から血の気が引く。
"干したの忘れてたぁ!"
扉を開けると目の前に部屋干ししている5日分の下着が洗濯紐にぶら下がっている。
「ちっ!ちょっと待ってくださいっ!」
両手に荷物を持って前のよく見えていないマノンを締め出すように扉を閉めジネットは焦って瞬時に下着を取り込み丸めて引き出しの中に放り込み他にヤバい物がないかを確認する。
「どっどうぞ……」
ジネットの不可思議な行動に違和感を感じながらもマノンは両腕に荷物を抱えたままゆっくりと部屋の中に入る。
「そこのテーブルの上に置いてくだされば……」
マノンはジネットの言う通りにテーブルのに荷物を降ろす。
ジネットの部屋は広さは六畳くらいである。
3階なので窓から外の景色がよく見える。
室内は綺麗に清掃され整理整頓されジネットの几帳面な性格がよくわかる。
「それじゃ、失礼するね」
マノンはひと息吐くとそう言って部屋を出ようとする。
「あっ!ちょっと!」
帰ろうとするマノンをジネットは慌てて引き止める。
「せめてお茶でも飲んでいきませんか?」
ジネットはそう言うとテーブルの上に置いてある荷物から何かを取り出す。
「いいお茶の葉が手に入ったんですよ」
ジネットはそう言うと小さな袋をマノンの前に差し出す。
ジネットが差し出した袋からはハーブの香りが漂ってくる。
「この香……カモミールですね」
食通のマノンはすぐにお茶の正体がハーブティーのカモミールである事を見抜く。
「流石ですね」
ジネットは少し感心したように言う
「一緒に一杯どうです?」
マノンはニッコリと笑い小さく頷くのであった。
第461話 ~ ソレーヌの王都探訪記 ② ~
終わり




