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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第460話 ~ ソレーヌの王都探訪記 ① ~

第460話 ~ ソレーヌの王都探訪記 ① ~



 

 ソレーヌが魔法工房に来てから2日が経った……


 「ねぇ、マノンっ!外出たいっ!」

 始めは魔法工房の中を探検気分で楽しんでいたソレーヌなのであったのだが……

 2日も経てば飽きてくる。


 「わかったよ……明日には片付くから……」

 マノンは旧ゲルマ帝国の宮殿の裏庭から持ち帰った数々の新種植物の整理や新しい転移ゲートの設置な等等……に2日ほどの時間がかかったのである。


 「明日には王都アカデミーに行くから……」

 「その時、一緒に王都を案内するよ」

 駄々を捏ねるソレーヌを諭すようにマノンが言う。


 「本当よね……嘘だったら……」

 「わかってるわよねっ!」

 ソレーヌはマノンに恐怖のプロレス技をかけるフリをする。


 「ひっ!嘘じゃないっ!」

 「嘘じゃないってっ!」

 関節技を決められた時の恐怖と激痛の記憶にマノンの顔が青ざめる。



 かくして、次の日の朝……

 いつものようにマノンとソレーヌが図書館の横で朝食を食べている。


 「何なのコレ……」

 図書館の机の上に置いてある大きな荷物を見ながらソレーヌがマノンに尋ねる。


 「あ、ああアレはね……」

 「宮殿の裏庭で採取した植物だよ」

 「今まで存在が知られていなかった新種がたくさんあるんだよ」

 マノンはそう言って机の上に置いてある木の根を一つ手にする。

 「この木の枝の匂い嗅いでみて」

 マノンはソレーヌに10センチほどの薄茶色の細い木の根を手渡す。


 ソレーヌはマノンから木の根を受け取ると少し警戒しながら言われた通りに木の根の匂いを嗅ぐ。

 「何なのこの木の根……」

 「凄く爽快な匂いがするっ!」

 ソレーヌが匂いを嗅いだ木の根は肉桂ニッキである。


 シナモンとよく似ているが別物である。

 和漢薬の原料となり非常に多くの薬効があるだけでなくスパイスとしても使える。

 日本では生八橋などの和菓子にも使われる。

 後にガリア王国など南側の国

で栽培されて広まる事になる。

 マノンは山椒や南天なども持ち帰っている。


 この他にも多くの未知の植物がマノンによってその存在が知られる事になる。

 中には薬用人参のような有用な薬草もあればケシのような麻薬の原材料となる物まであったのである。

 当然だが、ケシは薬用として栽培されていたものである。


 マノンは持ち帰った植物の中から危険性の高いケシや大麻草、トリカブトなどは王立アカデミーに提出する候補から除外してある。



 食事を終えるとソレーヌを連れて王都の塔へと転移する。

 爺い(パック)はお留守番である。


 「ここがマノンの住んでる村なのね……」

 「凄く大きな村ね……」

 塔の上から見える王都ガリアンの眺望に驚いている。 

 因みに、ソレーヌ達ロージナ村の人達には都市と言う単語は存在しない。


 階段を降りて大広間に出るとマノンは認識阻害の魔術を発動する。

 

 「凄い……人ね……」

 あまりの人の多さにソレーヌはただただ感心している。

 「アレなに?」

 大通りに立ち並ぶ商店がソレーヌには何なのかよくわからない。

 

 衣料品を売っている商店に飾られている藍色の服をボンヤリと見ている。

 「凄く綺麗な服ね……」

 ソレーヌはポツリと呟く。

 ロージナ村には質素な服しかないからである。


 「これは"絞り染"っていう手法で染めたものだよ」

 「草木を使って染めてるんだよ……」

 マノンがソレーヌに服の説明をする。


 「へぇ〜そうなんだ……」

 「青い星みたいね……」

 ソレーヌは藍色の服をジッと見ている。


 マノンは認識阻害の魔術を一時的に解除すると商店のおじさんと話し始める。


 ソレーヌはボンヤリとその様子を見ている。

 商店のおじさんは飾られている服をハンガーから取り外しソレーヌの方にやってくるとソレーヌの肩に服を軽く当てる。


 「お嬢さんによく似合うよ……」

 おじさんはそう言うとニッコリと笑う。


 「それじゃ、これお願いするね」

 その様子を見ていたマノンがおじさんに話しかける。


 「まいどあり」

 「120ガリアフランになります」

 おじさんは笑ってそう言うとマノンは懐から茶色の皮財布を取り出す。


 マノンは100ガリアフラン大銀貨を1枚と10ガリアフラン小銀貨を2枚数えておじさんに手渡す。

 おじさんは銀貨を確認すると服と領収書を書いてマノンに手渡す。


 「……」

 ソレーヌはマノンとおじさんさんのやり取りの様子を呆然として見ている。

 ソレーヌにとって初めて見る商取引である。


 「はい、ソレーヌ」

 マノンは買ったばかりの服をソレーヌに手渡す。


 「……ありがとう……マノン……」

 初めての体験にソレーヌはボンヤリしながらも服を手にすると抱きしめ嬉しそうに微笑んだ。


 マノンは再び認識阻害の魔術を発動すると大通りを抜けて王立アカデミーに向かう。


 「ここが王立アカデミーって所なの?」

 「凄く立派な建物ね……」

 「マノン……アンタやっぱり凄い裕福なんでしょう」

 どうやらソレーヌは王立アカデミーをマノンの家だと勘違いしているようである。

 事情を説明して何とかソレーヌを納得させるマノンであった。


 門を潜り王立アカデミーに入る。

 「……どうしたの?ソレーヌ……」

 ソレーヌは急にマノンに擦り寄ってくる。

 

 「……なんか……その……」

 ソレーヌは不安そうに呟く。

 王立アカデミー特有の雰囲気にのまれているようである。


 とりあえず、マノンの自室にソレーヌを案内する。


 「ここが私の部屋だよ……」

 マノンはドアを閉めるとソレーヌの前に椅子を持っていく。

 「ここで暫くゆっくりしててよ」

 「私は用事を済ませたら直ぐに戻ってくるから」

 マノンがそう言うとソレーヌは不安そうな表情で小さく頷く。



 マノンは急いで王立アカデミーの導師室に向かう。

 マノンがドアを開けると他の導師が"おや?"っと言う表情になる。

 "まぁ、4日間も無断欠勤したんだから……"

 "仕方ないよな……"

 マノンは心の中で諦めたように呟くと大きく深呼吸する。


 「長く無断欠勤して申し訳ございません」

 「これは今回の旅で入手したものです」

 マノンは謝罪すると大きな荷物をテーブルの上に乗せる。


 マノンに冷たい視線を向けていた導師達の目付きが変わりゾロゾロとマノンの荷物の前に集まり始める。


 初めて目にする物珍しさと導師と言う性が探究心を刺激する。


 1人の導師が肉桂を手に取り暫く観察した後で恐る恐る匂いを嗅いで吃驚すると他の導師達も同じように匂いを嗅いで驚いている。


 いつの間にか論議が始まる、マノンはその様子を見て導師達が肉桂に気を取られている間にそっ気づかれないように導師室をでてソレーヌの待っている自室へと急ぐのだが……


 その頃、マノンの部屋ではソレーヌがぼんやりと窓の外を眺めている。

 "本当に凄く大きな村ね……"

 "何人くらい住んでいるんだろう……"

 ソレーヌは心の中で呟きながら窓の外から王立アカデミーの中庭を歩く生徒たちを見ている。

 ふと、マノンに買ってもらった服が目に留まる。


 ソレーヌは服を手に取ると暫く服を見ていると着替え始める下着姿になった時に突然ドアが開く。


 「マノン?マノンなの?」

 ソレーヌが振り向くとそこにはルシィが呆然とした表情で立っていた。


 ルシィはマノンがいない間、部屋の掃除をしてくれていたので得る。


 「アンタ、誰?」

 吃驚したソレーヌがルシィに尋ねる。


 「……」

 マノンの部屋に下着姿の見知らぬ若い女がいる事にルシィは呆然としている。

 

 "なんか……驚いてるみたいだけど……"

 "……にしても……デッカい女だなぁ……"

 ルシィの巨体にソレーヌは心の中で驚いている。


 ちょうど、そこへマノンが帰ってくるのであった……


 「えっ、ルシィ?」

 ルシィが部屋の前に棒立ちしている姿に少し驚く、その後ろで下着姿のソレーヌがいるのが見える。

 "これは……まずい……のではは……"

 マノンの顔から血の気がひいていくのであった……

 


第460話 ~ ソレーヌの王都探訪記 ① ~


 終わり


 


 



 


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